上 下
36 / 61
2

さんじゅうご

しおりを挟む





ここきた経緯を話そうとしたが、その前にルシファーが「まってまって!大丈夫、今見てるから。」と笑った。

そうか、魔王は相手の隅々まで見れるから、私を通して色々なことを本当に文字通り見ている。

数秒ルシファーと目を合わせていたが、だんだんとルシファーの瞳が怒りだし、最終的には紅茶のカップを割っていた。


「…ルゥおじ様?」

「ねえ、とりあえず、聖女を名乗った愚かな人間を始末するべきだよね?」

「え、あの、はい、その人を私たちは探してまして、」

「大丈夫大丈夫!僕がパッと見つけてパッと殺すから!ルゥは心配しなくていいよ?」

にこやかに物騒なことを言うルシファーに、私はなんと言ったら良いか分からずアークを見る。

アークも魔王には何もいえないのか肩を竦めるだけで何も言わない。

ルシファーはルンルンしながら手をかざし「さあ、彼の者を映し出せ」と唱えた。

すると、手をかざしたところから何やら街が見え始める。

「わあっ」

昔散々見せてもらったものだったので、つい懐かしくて声を上げてしまう。

慌てて口を閉ざすも、アークもヘレスもルシファーも優しい目で私を見ていた。

…なんだかいたたまれないわ。


「ルゥおじ様!これは、どの街ですか?」

「うん?これはここは南の街かな?ほら、南の地域でしか取れない果物がある」

「!!初めて見ました!凄いですね…!」

先ほどの気まずさなど忘れ、私は映るものに目を奪われた。

ルシファーはそんな私の頭を撫でて、ルゥ、ほらここ見て?と言いある一点を指差した。

私はそこをじっくり見ると、何やら可愛らしいお店が。

「これは、下町で有名なカフェというやつですね!私もこっそりいったことがあります!」

「うんうん、そうなんだけどね、ここ、この人なんだよね、見て欲しいの。」

この人?私はルシファーが指差すところをもう一度じっくり見る。

すると、カフェの前に可愛らしい少女?女性がいた。
その人はにこやかに笑いながら街の人たちに、紙を配っていた。

その姿はよく見かけるので、特に何も違和感はないように思うのだけど。

私は訳がわからずルシファーを見る。
しかし、ルシファーは私ではなくアークを見ており、彼に「君はわかるか?」と問うた。

アークは数秒その人を見たあと、ちらりと私を見てから口を開いた。

「恐らく、あく…聖女マリアかと思われます。」

「うん、正解だ。」


え?これが?聖女マリア?
私はまじまじとその人を見るも、違う人物に見えて仕方がない。
聖女は黒髪黒目の長身だった。
だけど、ここに映ってる人は、茶色の髪に小柄な身長だったからだ。

「ルゥ、いいかい?昔言ったと思うけど、人は見かけで判断してはならない。
外見を変えることのできる魔法の使い手もいるんだよ。」

「ルゥおじ様…」

外見を変えることのできる魔法。
それは、かなりの魔力がなければできない技だと、ルゥおじ様は昔教えてくれた。

だから、魔物と思っていたら人間の場合もあるし、女の子だと思ったら屈強な男だったりすることもあると。

しかし、私の記憶では聖女はそれほど魔力が高くはなかったような気がしてならない。

それも何か要因があるのだろうか。

「うーん、それにしてもなぜ君にはわかったんだい?」

「ヘレスだよ!ヘレスは破壊の魔物だけど、真実を見抜くこともできるからね!」

ヘレスの契約者は加護以外にもそういうのも付いてくるんだよ!とにこにこ笑いながら教えてくれるヘレス。

なんと、癒しだ。
そして、アーク。君はかなり強くなったのでは?


「じゃあ、分かったところで、南の街へ行こうじゃないか!」








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寵愛のテベル

春咲 司
恋愛
世界に寿命があることを、そこで生きる人々は知らない。たった一人を除いては。 舞台は六年前の大戦を境に、様々な天災に見舞われるようになったクライネ王国。 第二王女ハーミヤは、世にも珍しい容姿をした美しい騎士ルドルフと出会う。 徐々にルドルフに惹かれるハーミヤ。しかしルドルフは自らを罪人だと言って、彼女に近づきすぎることを厭う。 彼の犯した罪。それは世界さえも壊してしまうたった一つの愛だった。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

処理中です...