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さんじゅうご
しおりを挟むここきた経緯を話そうとしたが、その前にルシファーが「まってまって!大丈夫、今見てるから。」と笑った。
そうか、魔王は相手の隅々まで見れるから、私を通して色々なことを本当に文字通り見ている。
数秒ルシファーと目を合わせていたが、だんだんとルシファーの瞳が怒りだし、最終的には紅茶のカップを割っていた。
「…ルゥおじ様?」
「ねえ、とりあえず、聖女を名乗った愚かな人間を始末するべきだよね?」
「え、あの、はい、その人を私たちは探してまして、」
「大丈夫大丈夫!僕がパッと見つけてパッと殺すから!ルゥは心配しなくていいよ?」
にこやかに物騒なことを言うルシファーに、私はなんと言ったら良いか分からずアークを見る。
アークも魔王には何もいえないのか肩を竦めるだけで何も言わない。
ルシファーはルンルンしながら手をかざし「さあ、彼の者を映し出せ」と唱えた。
すると、手をかざしたところから何やら街が見え始める。
「わあっ」
昔散々見せてもらったものだったので、つい懐かしくて声を上げてしまう。
慌てて口を閉ざすも、アークもヘレスもルシファーも優しい目で私を見ていた。
…なんだかいたたまれないわ。
「ルゥおじ様!これは、どの街ですか?」
「うん?これはここは南の街かな?ほら、南の地域でしか取れない果物がある」
「!!初めて見ました!凄いですね…!」
先ほどの気まずさなど忘れ、私は映るものに目を奪われた。
ルシファーはそんな私の頭を撫でて、ルゥ、ほらここ見て?と言いある一点を指差した。
私はそこをじっくり見ると、何やら可愛らしいお店が。
「これは、下町で有名なカフェというやつですね!私もこっそりいったことがあります!」
「うんうん、そうなんだけどね、ここ、この人なんだよね、見て欲しいの。」
この人?私はルシファーが指差すところをもう一度じっくり見る。
すると、カフェの前に可愛らしい少女?女性がいた。
その人はにこやかに笑いながら街の人たちに、紙を配っていた。
その姿はよく見かけるので、特に何も違和感はないように思うのだけど。
私は訳がわからずルシファーを見る。
しかし、ルシファーは私ではなくアークを見ており、彼に「君はわかるか?」と問うた。
アークは数秒その人を見たあと、ちらりと私を見てから口を開いた。
「恐らく、あく…聖女マリアかと思われます。」
「うん、正解だ。」
え?これが?聖女マリア?
私はまじまじとその人を見るも、違う人物に見えて仕方がない。
聖女は黒髪黒目の長身だった。
だけど、ここに映ってる人は、茶色の髪に小柄な身長だったからだ。
「ルゥ、いいかい?昔言ったと思うけど、人は見かけで判断してはならない。
外見を変えることのできる魔法の使い手もいるんだよ。」
「ルゥおじ様…」
外見を変えることのできる魔法。
それは、かなりの魔力がなければできない技だと、ルゥおじ様は昔教えてくれた。
だから、魔物と思っていたら人間の場合もあるし、女の子だと思ったら屈強な男だったりすることもあると。
しかし、私の記憶では聖女はそれほど魔力が高くはなかったような気がしてならない。
それも何か要因があるのだろうか。
「うーん、それにしてもなぜ君にはわかったんだい?」
「ヘレスだよ!ヘレスは破壊の魔物だけど、真実を見抜くこともできるからね!」
ヘレスの契約者は加護以外にもそういうのも付いてくるんだよ!とにこにこ笑いながら教えてくれるヘレス。
なんと、癒しだ。
そして、アーク。君はかなり強くなったのでは?
「じゃあ、分かったところで、南の街へ行こうじゃないか!」
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