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さんじゅういち

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やられるーー!!そう思って死を覚悟したが、ゆっくり伸ばされた手は


「だから、へレスがおねーちゃんの敵みーんなぶっ飛ばすねっっ!」

私の体強く抱きしめ、ヘレスはにこにこと笑いながらそう言った。

私が死ななかったと脱力していると、ヘレスが覗き込んできて「大丈夫?おねーちゃん」と心配してくれた。

私は引きつる口元をなんとか引き上げ、大丈夫だと言った。


ヘレスはそんな私に良かったなぁと言って優しい花の香りをプンプンさせているが…。

待て、どういう状況だ。

破壊の魔物、ヘレスと言ったら
契約者以外には靡かず、凄まじく悪臭がしその香りを嗅いだものは死ぬと言われているのだが。

私は生きてるし、契約者じゃないし、花の香りだし、どういうことなんだ?

グルグルと頭をフル回転させるが全く分からない。


私は大きく息を吸い「アーク!!!!!」と叫んだ。

すると、アークが瓦礫の山から飛び出し、私達の前にやってきた。



「アーク、説明を」

「あ~だから、その、遡ると、」

「簡潔に。」

「…私が契約者、あいつは魔物。お前はお気に入り!」

以上だ!と言わんばかりに胸を張るアーク。
そして、その通り!というようにアーク横で胸を張るヘレス。

そして、そんな2人を死んだ魚のように濁って目で見つめる私。


そんな視線を受けアークがコホンと咳払いをして、「まあ、冗談はさておき、」前置きを置いて説明してくれた。


「ルナが風魔法で全てを吹き飛ばした時に、コイツ…ヘレスの封印をも吹き飛ばしたらしい。そして、まあ、私と契約することになり契約最初に眠ってるルナを助けてもらったということだ。」

分かったか?と聞いてきたアーク。

…驚くほど分かりやすくて、最初からその説明して欲しかったよ。


「…だいたいわかった…とりあえず、私はとんでもないものをこの世に蘇らせてしまったということか…」

「まあ、そうだな。でも、まあ仕方ないし、悪女マリアを滅ぼすのに協力してくれる!!!!百人力だ!!」

「…待て待て待て待て!!!契約したのはそれが理由か?!?」


私がそういえばアークがそれ以外に何かあるのか?と言いたげに私を見る。
コイツはだいぶアホだ。

そんな理由で魔物、しかも恐れられている魔物のヘレスを契約するとは。


「…まあいいけど、とりあえず、なぜ私が気に入られた上に花の香りがするんだ?」

「花?ああ、気に入られたのは先ほど言った通り封印を解いてくれたからだ。花の香りは契約したもののみが嗅ぐことができる癒しの香りらしい。」

「…契約者のみ?!私は契約者ではないが?」

私が慌ててそういえばアークが、ああ、それはと口を開く。

がしかし、その前にヘレスがふわりと私の前にやってきて教えてくれた。


「あのね、それはね、人間の嘘なんだよ!契約者のみじゃないよ!ヘレスの気に入ったもの人間でも魔物でも!ぜーんぶ、ヘレスの加護が貰えるんだよ!ふふっ人間の命は短いから、終わりまでヘレスが守ってあげる!」

「えと、」

「アークとおねーちゃんは、ヘレスのことヘレスって呼んでいいよ!特別ねっ!ふふっ嬉しいなぁ!」

ヘレスはそう言ってぎゅーっと私を思い切り抱きしめた。
ふわりと柔らかい感触と花の香りがした。

だ、だめだ、かわいい。
私は歳の離れた弟と妹を思い出した。

るみなすねぇたま!
るみなすおねえさまっ

にこにこと笑いながら駆け寄ってくるウィリアムとエリザベス。そして、ルミナス姉様と無表情で私呼ぶリチャード。

懐かしいなぁ。


「ルナ、とりあえず、先に進もう。」

「…アーク、しかし、道はわかるのか?」

「ふふん!大丈夫!ヘレスが分かるよ!」



アークと私は、ヘレスの言葉を信じ、じゃあ案内してくれと頼んでしまった。




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