32 / 61
2
さんじゅういち
しおりを挟むやられるーー!!そう思って死を覚悟したが、ゆっくり伸ばされた手は
「だから、へレスがおねーちゃんの敵みーんなぶっ飛ばすねっっ!」
私の体強く抱きしめ、ヘレスはにこにこと笑いながらそう言った。
私が死ななかったと脱力していると、ヘレスが覗き込んできて「大丈夫?おねーちゃん」と心配してくれた。
私は引きつる口元をなんとか引き上げ、大丈夫だと言った。
ヘレスはそんな私に良かったなぁと言って優しい花の香りをプンプンさせているが…。
待て、どういう状況だ。
破壊の魔物、ヘレスと言ったら
契約者以外には靡かず、凄まじく悪臭がしその香りを嗅いだものは死ぬと言われているのだが。
私は生きてるし、契約者じゃないし、花の香りだし、どういうことなんだ?
グルグルと頭をフル回転させるが全く分からない。
私は大きく息を吸い「アーク!!!!!」と叫んだ。
すると、アークが瓦礫の山から飛び出し、私達の前にやってきた。
「アーク、説明を」
「あ~だから、その、遡ると、」
「簡潔に。」
「…私が契約者、あいつは魔物。お前はお気に入り!」
以上だ!と言わんばかりに胸を張るアーク。
そして、その通り!というようにアーク横で胸を張るヘレス。
そして、そんな2人を死んだ魚のように濁って目で見つめる私。
そんな視線を受けアークがコホンと咳払いをして、「まあ、冗談はさておき、」前置きを置いて説明してくれた。
「ルナが風魔法で全てを吹き飛ばした時に、コイツ…ヘレスの封印をも吹き飛ばしたらしい。そして、まあ、私と契約することになり契約最初に眠ってるルナを助けてもらったということだ。」
分かったか?と聞いてきたアーク。
…驚くほど分かりやすくて、最初からその説明して欲しかったよ。
「…だいたいわかった…とりあえず、私はとんでもないものをこの世に蘇らせてしまったということか…」
「まあ、そうだな。でも、まあ仕方ないし、悪女マリアを滅ぼすのに協力してくれる!!!!百人力だ!!」
「…待て待て待て待て!!!契約したのはそれが理由か?!?」
私がそういえばアークがそれ以外に何かあるのか?と言いたげに私を見る。
コイツはだいぶアホだ。
そんな理由で魔物、しかも恐れられている魔物のヘレスを契約するとは。
「…まあいいけど、とりあえず、なぜ私が気に入られた上に花の香りがするんだ?」
「花?ああ、気に入られたのは先ほど言った通り封印を解いてくれたからだ。花の香りは契約したもののみが嗅ぐことができる癒しの香りらしい。」
「…契約者のみ?!私は契約者ではないが?」
私が慌ててそういえばアークが、ああ、それはと口を開く。
がしかし、その前にヘレスがふわりと私の前にやってきて教えてくれた。
「あのね、それはね、人間の嘘なんだよ!契約者のみじゃないよ!ヘレスの気に入ったもの人間でも魔物でも!ぜーんぶ、ヘレスの加護が貰えるんだよ!ふふっ人間の命は短いから、終わりまでヘレスが守ってあげる!」
「えと、」
「アークとおねーちゃんは、ヘレスのことヘレスって呼んでいいよ!特別ねっ!ふふっ嬉しいなぁ!」
ヘレスはそう言ってぎゅーっと私を思い切り抱きしめた。
ふわりと柔らかい感触と花の香りがした。
だ、だめだ、かわいい。
私は歳の離れた弟と妹を思い出した。
るみなすねぇたま!
るみなすおねえさまっ
にこにこと笑いながら駆け寄ってくるウィリアムとエリザベス。そして、ルミナス姉様と無表情で私呼ぶリチャード。
懐かしいなぁ。
「ルナ、とりあえず、先に進もう。」
「…アーク、しかし、道はわかるのか?」
「ふふん!大丈夫!ヘレスが分かるよ!」
アークと私は、ヘレスの言葉を信じ、じゃあ案内してくれと頼んでしまった。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
【完結】魅了が解けたあと。
乙
恋愛
国を魔物から救った英雄。
元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。
その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。
あれから何十年___。
仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、
とうとう聖女が病で倒れてしまう。
そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。
彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。
それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・
※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。
______________________
少し回りくどいかも。
でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
政略結婚で結ばれた夫がメイドばかり優先するので、全部捨てさせてもらいます。
hana
恋愛
政略結婚で結ばれた夫は、いつも私ではなくメイドの彼女を優先する。
明らかに関係を持っているのに「彼女とは何もない」と言い張る夫。
メイドの方は私に「彼と別れて」と言いにくる始末。
もうこんな日々にはうんざりです、全部捨てさせてもらいます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる