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外伝11 ブラックジャックのルールと シーン説明

解説 ブラックジャックのルールと シーンの説明

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グンマー世界でなぜか人気の賭博、ブラックジャックになじみのない読者も多いと思います。
下記に、ルールと、シーンの説明(なぜ千木良大尉が称賛されたか)をまとめました。

ブラックジャックの基本ルール(簡易説明):

ブラックジャックは、プレイヤーとディーラーが対戦するカードゲームである。目標は、自分の手札の合計点数を21に近づけ、かつ21を超えないこと。手札には2~10がそのままの数字、J(ジャック)、Q(クイーン)、K(キング)はいずれも10点として数え、A(エース)は1点または11点として都合のよい方を選ぶ。

最初にプレイヤーとディーラーは2枚ずつカードを受け取る。プレイヤーは合計点数を見て「ヒット(カードをもう1枚引く)」、「ステイ(カードを引かずに手を止める)」などを選択する。ディーラーは、通常17点以上になるまで必ず引き続けなければならない、などのルールが定められている。最終的に、21を超えず、ディーラーより点が高ければプレイヤーの勝ち、21を超えれば「バースト(破裂)」して負けとなる。

また、ブラックジャックでは座る位置の中で、ディーラーの最後に行動するプレイヤーを「サードベース」と呼ぶ。サードベースは、ほかのプレイヤーの行動を見た上で自分の判断ができるため、ディーラーが引くカードの順番にも影響を与えられる可能性がある。これが「サードベースがテーブル全体の運命を左右する」と言われる所以である。

物語で起こったことの概要:
物語では、千木良大尉という人物が「サードベース」の席についている。彼は11というとても有利な点数(通常、11であれば絶対にもう1枚引くべきで、そこから21を目指せる理想的な状態)でステイを選んだ。ブラックジャックの基本戦略から見ると、11でステイするのは「数学的に誤り」である。なぜなら、11でヒットすれば、絶対に21を超えることはなく、ほぼ確実に強い手札を得られるからだ。

しかし、この物語の背景には「カウンティング」(場に出たカードから残りカード構成を予測する方法)がある。大尉は、残りのカードには10点相当のハイカードが多く残っていることを読み取っていた。「もし自分がヒットして有利なカードを取ってしまうと、次にディーラーが引くカードが微妙なものに変わり、ディーラーがバーストしにくくなる。逆に自分があえてヒットせずにステイすることで、ディーラーはバーストしやすい高いカードを引く羽目になる」という理屈である。

結果的に、ディーラーは高いカードを引いてバーストし、テーブルについていた他のプレイヤーたちも全員勝利した。つまり、大尉はあえて自分が最大の恩恵(自力で21近い点を得て勝利すること)を放棄し、ディーラーを沈めることで「テーブル全員が勝つ」という状況を作り出した。

なぜ称賛されたのか?:
数学的には、11でステイするのは期待値(長期的な勝率や利益)を下げる行為であり、通常のブラックジャックでは「悪手」である。一人のプレイヤーにとって、自分が勝つ可能性を最大化するなら、迷わずヒットすべき状況だ。

しかし、この物語では以下のような文化的・心理的要素が働いている。

集団的な勝利への貢献:
大尉は、単純な金銭的勝利ではなく、「テーブル全体の勝利」という上位価値を選んだ。この行為は、戦場の指揮官が自分だけが生き残るのではなく、部下や仲間全員を救うことを重視する精神に通じる。彼はギャンブルの場でそのリーダーシップと自己犠牲を示した。

サードベースのカリスマ性:
最後の行動を取るサードベースは、ディーラーが引くカードの順序に間接的に影響を与える可能性がある。大尉があえて定石を破り、意図的にステイすることで、残っている「爆弾」(ディーラーをバーストさせる高カード)をディーラーに引かせた。この「狙いすました戦略」は、周囲からすれば奇跡的な直感または計算であり、サードベースが卓全体を導いた英雄的行為として映った。

リーダーとしての理想像:
大尉は軍人であり、戦場で部下の命を預かる指揮官であるという設定がある。たとえ数学的に間違った選択であっても、「仲間を勝たせるための自己犠牲」や「勝利の共有」という美学は、この物語世界で高く評価される。単なるゲームの損得を超え、名誉と信念を重視する社会では、その決断が称賛されるに十分だった。

まとめ:
この物語では、ブラックジャックの基本ルールと定石を知らない読者にとっては理解しづらいが、本来「絶対にヒットすべき」11という点数でステイする行為は、数学的には誤りである。しかし、大尉はカウンティングによってディーラーを確実に追い詰め、テーブル全体を勝利へと導いた。その結果、「サードベースとしての役割を見事に果たし、集団全員を勝利に導いたリーダー」として、人々から称賛されたのである。この称賛は、ゲーム自体の合理性を超え、文化的・心理的な価値観――仲間のために身を投じる勇気、美学、名誉感――によって支えられている。






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