俺は神様なのに!

ちょこ

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なんでだよ!

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「いやあ、すまんすまん。死神が間違えてお前さんの命を狩ってきちまった」
 待ち合わせの時間に3分遅れたような気さくさで軽く謝る自称神様に、翔太はブチギレた。
「すまんじゃねーよ! じゃあ何?! 俺はお前らの手違いで死んだのか? ふざけんな!」
「すまんすまん。すまんのう」
「すまんで済んだら警察は要らねーよ! 神様なんだろ? さっさと俺を生き返らせろよ!」
「むり」
「なんでやねん!」
 いかにも神様ですというような風貌だが手には徳利、わきには一升瓶というただの呑兵衛を、翔太はゆさゆさと前後に揺する。それに合わせてカコンカコンと頭を揺らす自称神様はケラケラと笑った。
「お前は死んだ。もう生き返らん。それは自然の摂理じゃあ」
「摂理じゃあ、じゃねーんだよ! どうにかしろよ!」
「まあ待て。代わりに好きな転生先を用意してやる。どうじゃ?
 お前の年頃なら、今度はイケメンに生まれて女子にモテたいとかか? 大富豪の家に生まれて女子にモテたいとかか? それとも賢く生まれて女子にモテたいとかか?」
「全部一緒だろそれ」
「なんじゃ、女子が怖いとか言うタイプか? アニメのキャラと結婚したいのか? 漫画のキャラと結婚したいのか? 小説のキャラと結婚したいのか?」
「ターゲットが二次元に変わっただけじゃねーか!」
「ああ、おれつえーってやつやりたいのか」
「なんだよその偏った知識は!」
「この前死神が間違えて狩ってきた奴らの転生先じゃ」
「どんだけ間違えてんだ馬鹿!」
 翔太はツッコミで上がった呼吸を落ち着け、考えた。俺が、なりたいもの___。
「よし、決めた! 俺を神様にしろよ!」
「神様? 儂みたいなやつか?」
「おう! あんたみたいな飲んだくれにも務まるんだろう? なら俺もできる」
「お前、怠けもんだのう」
「よりにもよってテメーが言うな!」
「神様、のう。できんことはないが……」
「ならやらせろ!」
「今の空きはバッククロージャ―の神様しかないぞ」
「……なにそれ」
「食パンの袋を留めるアレじゃ」
「いや意味わかんねーよ! なんだよバッククロージャーの神様って! 要らねーだろ! つか空きって何!」
「お前はものを知らんのう。全てのものに神は宿る。故に、バッククロージャーにも神様は必要じゃ」
「他はねーのかよ?!」
「ゴキブリの神様が嫌われて辛い、殺虫剤怖いとか言っていたが、代わるか?」
「ぜってーやだ」
「なら諦めろ。で、バッククロージャーの神様になるか?」
「……それしか選択肢ねーのかよ」
「ゴキ」
「分かった! やるよ、バッククロージャーの神様」
「よし。ではお前に宮を授ける」
「ミヤ?」
 聞きなれない単語に翔太は首を傾げる。
「ま、お前の家だ。名前は出雲神社。出雲大社の裏手にある」
「は? ややこしくねー?」
「当たり前じゃ。わざと間違えられるようにした」
「なんでだよ」
「お前、考えてみろ。バッククロージャーの神様に参拝する物好きがどこにおる。だからせめて勘違いしてやってきた観光客から賽銭をせしめるのじゃ」
「ただの詐欺じゃねーか!
 ていうか、神社はだいたい何の神様が祀ってあるか書いてあるだろ!」
「あんなもん適当に書いてるにすぎん。全国にいったいどれだけ恋愛成就を謳う神社があるか知ってるか?」
「あれ全部詐欺かよ!?」
「お前のところも表向きは恋愛成就にしとくぞ。これでより、出雲大社に間違われよう」
 最低な発言を続ける神様に呆れ果てた翔太はため息を吐く。
「で、神様になったら何ができるの」
「お前はバッククロージャーの神様なのだから、バッククロージャーについてなら自由自在じゃ!」
「くそしょーもねー能力授けてんじゃねーよ!」
「では達者でな」
 その言葉と同時に辺りが白く光り、気付けば翔太は小さな平屋の前に突っ立っていた。小さな賽銭箱としめ縄のおかげでかろうじてそれが神社だと分かる。
「ふ、ふ、ふざけんなー!」
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