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街の解放と魔王の目覚め
街の解放と魔王の目覚め④
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ガーゴイルがもう追いかけて来ない事を確認し、マリは公爵の邸宅へと急ぐ。途中で公爵の使い魔を見つけたので、呼び寄せ、行き先を告げる。
「ガーゴイルは殲滅完了! 私は公爵の家に行くから!」
文鳥はマリの言葉を聞き、首を傾げた後、フッと消えた。たぶん主人に伝えてくれるはずだ。たぶん……。
使い魔の相手をしているうちに、試験体066が追いついていた。
「公爵の邸宅の方から、嫌な気配を感じる……」
「魔人の気配じゃなく?」
「……もっと邪悪で、強力な存在かも……」
「状況が変わってる……? ナスドさん達はSランクだし、大丈夫だと思いたいな」
不安を吹き飛ばすために頭を振り、再びバイクを発進させる。
邸宅の門まで辿り着き、そこでバイクを停める。何が起こるかわからないため、リュックの中からテーザー銃を出す。
「中の獣人達は、ユネさんが眠らせる予定みたいだけど……。計画通りいってんのかな?」
マリが囮になったお陰で危険が無くなった庭を慎重に通り抜ける。
入り口まであと少しの所で、上の階から激しい爆発音が聞こえた。ガラスが破れ、人間が落ちてくる。
突然の事に驚き、固まってしまう。何が起こったのだろうか?
ドキドキしながらソチラに近寄ると、見覚えのある男だ。亀の甲羅団の中で回復魔法を受け持つ魔法使いだと記憶している。
彼の痩せた身体は血まみれだ。
「マリ……、行くな。中に、魔王が……」
彼が指差す方を見ると、破れた窓に、漆黒の布が翻るのが見えた。ドレスを着た女だ。その姿が知っている少女の姿に見え、心が騒めく。
マリは入り口のドアを開け、階段を駆け上がる。
落ちてきた男が口にした、魔王とは何なのか? 亀の甲羅団は魔人に負けてしまったのか?
色んな事を考える。だけど、それよりももっと、胸の中を占めるのは……。
「コルル!」
危険を顧みず、扉を開く。少女が立っている。ガタイの良いナスドの胸ぐらを軽々と掴み上げ、今にもその手に握る禍々しい剣でトドメを刺しそうだ。
マリをキョトンとして表情で見る少女は、記憶通りに愛らしい。艶やかな黒髪に、ピンと立った猫耳。吊り上がった目も、まるで猫の様。だけど、彼女はどこか違う。本質部分が大きく異なってしまったんじゃないだろうか? 取り巻く空気が威圧的なのだ。
コルルの姿をした何かは、マリに微笑む。
「今日は運が良い。オレ好みの女を二人も拝めたんだからな。一人は器になっちまったが、お前はお持ち帰りにちょうど良さそうだ」
「何言ってんの? コルル。オレ、とか……」
可愛らしい声はそのままなのに、口調が明らかに違う。話す内容も彼女らしくない。
「逃げろ……、魔人が住人のエーテルを使って魔王を目覚めさせたんだ……」
声の方を向くと、ユネが床に倒れていた。腕から血を流し、酷い顔色をしている。
「ユネさん!?」
「人の心配より、自分の心配すれば? 逃げられてもつまんないから、自由を奪わせてもらう」
コルルの姿をした者は、ナスドをゴミの様に放り投げ、コチラに手の平を向けた。マリは慌ててテーザー銃を撃つ。しかし、ワイヤーは刺さるどころか、少女の身体の直前で掴み取られる。
「はぁ!? 動体視力良すぎ! ヒャア!?」
とてつもない馬鹿力で引っ張られ、床に倒れ、引き摺られる。このまま良い様にされてたまるかと、テーザー銃を放す。
強かに打ち付けた胸が痛い。
「胸の……肉が割れる! 何すんの! このボケ!」
「ほほぅ。胸の肉は丁寧に扱わないと? さんこーになった!」
何が面白いのか、少女はゲラゲラと笑い、マリの側にチョコンと腰を下ろす。
「お前と居ると楽しめそうだ。美少女だし」
みっともなく床に這い蹲るマリの背に、少女の手が添えられる。そうされると、全身に血が通わなくなったかの様に動かなくなる。唇も全く動かず、文句一つ言えない。
(コルル。私に何したの? っていうか魔王って……、何がなんだか分かんないよ)
「……その手を離せ」
遠ざかる意識の中、試験体066の声を聞いた。
間近で紫色の光が弾ける。唐突に軽くなった身体で、少女の側を転がる様に離れると、二人の様子が良く見えた。
白髪の少年は、雷属性の弓を構え、少女は素手でプラズマを放つ矢を掴んでいる。
「お前……、オレの良く知る男にソックリだ。見てると反吐が出る」
一度は結婚寸前までいった二人だったが、今はそんな雰囲気は微塵も無い。コルルの姿をしたナニカに至っては、憎悪の表情を浮かべている。
「あぁ……、君は魔王か。君が知ってるのも無理はないかも。僕は前代勇者の複製品だから……」
「ふくせーひん? あーナルホド。どーりで、勇者にしては弱くなった感じなんだな。でもな、見た目が同じってだけで、オレには滅ぼす意味があるんだよ。魔剣アシュヴィルス!」
少女の手には、赤黒い剣身を持つ大剣が握られている。それは不気味なオーラを放ち、試験体066に向けられた。
「ガーゴイルは殲滅完了! 私は公爵の家に行くから!」
文鳥はマリの言葉を聞き、首を傾げた後、フッと消えた。たぶん主人に伝えてくれるはずだ。たぶん……。
使い魔の相手をしているうちに、試験体066が追いついていた。
「公爵の邸宅の方から、嫌な気配を感じる……」
「魔人の気配じゃなく?」
「……もっと邪悪で、強力な存在かも……」
「状況が変わってる……? ナスドさん達はSランクだし、大丈夫だと思いたいな」
不安を吹き飛ばすために頭を振り、再びバイクを発進させる。
邸宅の門まで辿り着き、そこでバイクを停める。何が起こるかわからないため、リュックの中からテーザー銃を出す。
「中の獣人達は、ユネさんが眠らせる予定みたいだけど……。計画通りいってんのかな?」
マリが囮になったお陰で危険が無くなった庭を慎重に通り抜ける。
入り口まであと少しの所で、上の階から激しい爆発音が聞こえた。ガラスが破れ、人間が落ちてくる。
突然の事に驚き、固まってしまう。何が起こったのだろうか?
ドキドキしながらソチラに近寄ると、見覚えのある男だ。亀の甲羅団の中で回復魔法を受け持つ魔法使いだと記憶している。
彼の痩せた身体は血まみれだ。
「マリ……、行くな。中に、魔王が……」
彼が指差す方を見ると、破れた窓に、漆黒の布が翻るのが見えた。ドレスを着た女だ。その姿が知っている少女の姿に見え、心が騒めく。
マリは入り口のドアを開け、階段を駆け上がる。
落ちてきた男が口にした、魔王とは何なのか? 亀の甲羅団は魔人に負けてしまったのか?
色んな事を考える。だけど、それよりももっと、胸の中を占めるのは……。
「コルル!」
危険を顧みず、扉を開く。少女が立っている。ガタイの良いナスドの胸ぐらを軽々と掴み上げ、今にもその手に握る禍々しい剣でトドメを刺しそうだ。
マリをキョトンとして表情で見る少女は、記憶通りに愛らしい。艶やかな黒髪に、ピンと立った猫耳。吊り上がった目も、まるで猫の様。だけど、彼女はどこか違う。本質部分が大きく異なってしまったんじゃないだろうか? 取り巻く空気が威圧的なのだ。
コルルの姿をした何かは、マリに微笑む。
「今日は運が良い。オレ好みの女を二人も拝めたんだからな。一人は器になっちまったが、お前はお持ち帰りにちょうど良さそうだ」
「何言ってんの? コルル。オレ、とか……」
可愛らしい声はそのままなのに、口調が明らかに違う。話す内容も彼女らしくない。
「逃げろ……、魔人が住人のエーテルを使って魔王を目覚めさせたんだ……」
声の方を向くと、ユネが床に倒れていた。腕から血を流し、酷い顔色をしている。
「ユネさん!?」
「人の心配より、自分の心配すれば? 逃げられてもつまんないから、自由を奪わせてもらう」
コルルの姿をした者は、ナスドをゴミの様に放り投げ、コチラに手の平を向けた。マリは慌ててテーザー銃を撃つ。しかし、ワイヤーは刺さるどころか、少女の身体の直前で掴み取られる。
「はぁ!? 動体視力良すぎ! ヒャア!?」
とてつもない馬鹿力で引っ張られ、床に倒れ、引き摺られる。このまま良い様にされてたまるかと、テーザー銃を放す。
強かに打ち付けた胸が痛い。
「胸の……肉が割れる! 何すんの! このボケ!」
「ほほぅ。胸の肉は丁寧に扱わないと? さんこーになった!」
何が面白いのか、少女はゲラゲラと笑い、マリの側にチョコンと腰を下ろす。
「お前と居ると楽しめそうだ。美少女だし」
みっともなく床に這い蹲るマリの背に、少女の手が添えられる。そうされると、全身に血が通わなくなったかの様に動かなくなる。唇も全く動かず、文句一つ言えない。
(コルル。私に何したの? っていうか魔王って……、何がなんだか分かんないよ)
「……その手を離せ」
遠ざかる意識の中、試験体066の声を聞いた。
間近で紫色の光が弾ける。唐突に軽くなった身体で、少女の側を転がる様に離れると、二人の様子が良く見えた。
白髪の少年は、雷属性の弓を構え、少女は素手でプラズマを放つ矢を掴んでいる。
「お前……、オレの良く知る男にソックリだ。見てると反吐が出る」
一度は結婚寸前までいった二人だったが、今はそんな雰囲気は微塵も無い。コルルの姿をしたナニカに至っては、憎悪の表情を浮かべている。
「あぁ……、君は魔王か。君が知ってるのも無理はないかも。僕は前代勇者の複製品だから……」
「ふくせーひん? あーナルホド。どーりで、勇者にしては弱くなった感じなんだな。でもな、見た目が同じってだけで、オレには滅ぼす意味があるんだよ。魔剣アシュヴィルス!」
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