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第4話
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事実上、聖女パーティーの仕事がなくなった彼女たちは国王にその存在の必要性を疑われるようになり、ついに解散の話まで持ち上がった。
「ちょっと冗談じゃないわよ! あのルルとかいう女が辞めたせいでなんでパーティーそのものまで解散になるの!」
「許せないわ! 国王陛下に直談判しないと!」
そのように荒れた聖女たちの一部が、血気盛んに王城へと乗り込んでいく。
だが彼女たちは衛兵にあっさり突き飛ばされてしまうと、そのまま鼻で笑われてしまった。
「だいたい、たかが一人メンバーが抜けただけでガタガタになるとかお前らどんだけその聖女になんでもかんでも押し付けっぱなしだったんだよ。そのくせそのルルとかいう聖女はさんざん馬鹿にして、いびり倒して追い出すなんて馬鹿じゃねーの。本当、若い女に嫉妬するだけのクソババアばっかりの連中だな」
それなりに顔の整った衛兵にそう言い放たれ、聖女たちは愕然としその場に座り込んだ。
違う、私たちはみんなつもりなかった。ただほんのちょっと彼女が気に入らなかったから、小さなミスでも厳しめに注意しただけで。彼女と顔を合わせるとどうしてもイライラしてくるから、強い口調を使ってしまっただけで。
「いや、そういうのを『パワハラ』って言うんだからさ。今度また新しい聖女を雇うことがあったら、今回のことをきちんと活かして自分の行動を鑑みた方がいいよ。まぁ、この件を知った国王がどんな沙汰をするかによって聖女パーティーの在り方も変わるかもしれないからどうしようもないけどね」
容赦ない衛兵の一言に聖女たちは心を抉られ、ただ茫然と立ち尽くすことしかできなかった。
「――ということがあったから、君が元いた聖女パーティーはもう解散間近で、リストラされた聖女たちは今後フリーでやっていくかお針子や娼婦のような仕事にジョブチェンジするしかないみたい。だからさ、君も少しはこれで溜飲が下がったんじゃないかな」
シズ様の話を聞き終えた私は、心の中で様々な感情が湧き上がる。
私の心をさんざん傷つけた先輩聖女たちが今の立場を追われるのは、はっきり言って自業自得だ。
それに――正直「ざまあみろ」という気持ちが沸いて出てし合う。そりゃ赤の他人がそんな目に遭ったら気の毒だとは思うが、相手がさんざん自分を追い詰めて心まで壊そうとしてきたとなると微塵も同情心が湧かない。何ならもっと酷い罰を受けさせてもいいはずだ。そんな私の言葉を飲み込んでいればシズ様は一転、優しい口調で私に話しかける。
「過去を忘れるのは簡単なことじゃないし、きっとこれからも辛い記憶が思い出しては涙が出てしまうことがあると思う。でもさ、今の君は僕とこの寂れているけど人々に愛される教会があるんだ。それを誇りに思っていい、というか思っていてほしい。少なくとも僕は君に出会えたことが何より幸せだと思うし、神様がくれた最高のプレゼントだとさえ思っているんだ。だから……これからもずっと、僕と共にいてくれ」
シズ様の熱っぽく、ストレートな口説き文句に私の頬がぽっと赤くなる。
……正直、「聖女」という道を選択してから恋愛のことなんてちっとも考えたことがない。けれど、こうやって私のトラウマを受け止めさらにその傷を植え付けた相手の不幸を喜ぶような醜い自分を許してくれるなら。
……シズ様は素敵かもしれない……
私の心の奥底で、小さく芽生えたそれの正体はまだ突き止めないでおく。代わりにシズ様にお礼を言うと、私は深呼吸をして「私はまだまだやれる、ここでならできることがたくさんある」と自分自身を鼓舞してまた聖女としての仕事に戻ることを決心するのだった。
「ちょっと冗談じゃないわよ! あのルルとかいう女が辞めたせいでなんでパーティーそのものまで解散になるの!」
「許せないわ! 国王陛下に直談判しないと!」
そのように荒れた聖女たちの一部が、血気盛んに王城へと乗り込んでいく。
だが彼女たちは衛兵にあっさり突き飛ばされてしまうと、そのまま鼻で笑われてしまった。
「だいたい、たかが一人メンバーが抜けただけでガタガタになるとかお前らどんだけその聖女になんでもかんでも押し付けっぱなしだったんだよ。そのくせそのルルとかいう聖女はさんざん馬鹿にして、いびり倒して追い出すなんて馬鹿じゃねーの。本当、若い女に嫉妬するだけのクソババアばっかりの連中だな」
それなりに顔の整った衛兵にそう言い放たれ、聖女たちは愕然としその場に座り込んだ。
違う、私たちはみんなつもりなかった。ただほんのちょっと彼女が気に入らなかったから、小さなミスでも厳しめに注意しただけで。彼女と顔を合わせるとどうしてもイライラしてくるから、強い口調を使ってしまっただけで。
「いや、そういうのを『パワハラ』って言うんだからさ。今度また新しい聖女を雇うことがあったら、今回のことをきちんと活かして自分の行動を鑑みた方がいいよ。まぁ、この件を知った国王がどんな沙汰をするかによって聖女パーティーの在り方も変わるかもしれないからどうしようもないけどね」
容赦ない衛兵の一言に聖女たちは心を抉られ、ただ茫然と立ち尽くすことしかできなかった。
「――ということがあったから、君が元いた聖女パーティーはもう解散間近で、リストラされた聖女たちは今後フリーでやっていくかお針子や娼婦のような仕事にジョブチェンジするしかないみたい。だからさ、君も少しはこれで溜飲が下がったんじゃないかな」
シズ様の話を聞き終えた私は、心の中で様々な感情が湧き上がる。
私の心をさんざん傷つけた先輩聖女たちが今の立場を追われるのは、はっきり言って自業自得だ。
それに――正直「ざまあみろ」という気持ちが沸いて出てし合う。そりゃ赤の他人がそんな目に遭ったら気の毒だとは思うが、相手がさんざん自分を追い詰めて心まで壊そうとしてきたとなると微塵も同情心が湧かない。何ならもっと酷い罰を受けさせてもいいはずだ。そんな私の言葉を飲み込んでいればシズ様は一転、優しい口調で私に話しかける。
「過去を忘れるのは簡単なことじゃないし、きっとこれからも辛い記憶が思い出しては涙が出てしまうことがあると思う。でもさ、今の君は僕とこの寂れているけど人々に愛される教会があるんだ。それを誇りに思っていい、というか思っていてほしい。少なくとも僕は君に出会えたことが何より幸せだと思うし、神様がくれた最高のプレゼントだとさえ思っているんだ。だから……これからもずっと、僕と共にいてくれ」
シズ様の熱っぽく、ストレートな口説き文句に私の頬がぽっと赤くなる。
……正直、「聖女」という道を選択してから恋愛のことなんてちっとも考えたことがない。けれど、こうやって私のトラウマを受け止めさらにその傷を植え付けた相手の不幸を喜ぶような醜い自分を許してくれるなら。
……シズ様は素敵かもしれない……
私の心の奥底で、小さく芽生えたそれの正体はまだ突き止めないでおく。代わりにシズ様にお礼を言うと、私は深呼吸をして「私はまだまだやれる、ここでならできることがたくさんある」と自分自身を鼓舞してまた聖女としての仕事に戻ることを決心するのだった。
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