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第3話

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 ルルの指導にあたっていた先輩聖女は、その裏でルルに嫉妬心を抱いていた。



 ルルは聖女団の中でもかなり若く、また見た目も悪くない方だった。加えて「丁寧に愛想よく」をモットーにしていたためか例え時間がかかっても確実な治療を行うし、一部の客たちからは特に気に入られていたようだった。



 だが――先輩聖女たちはそんな彼女が許せなかった。



 新米の聖女が、若いからという理由だけで少しの失敗を許してもらえる。可愛らしく、利用者たちに媚びているから聖女としての仕事を怠けていても誰も咎めない。ルルの先輩にあたる聖女は勝手にそう決めつけ、「こんな女は聖女失格だ」と思い込みルルにの粗探しをしてはそれを鬼の首を取ったように大げさに騒ぎ立て彼女の人格を否定するという行いを繰り返し続けた。

 もっとも、その根源にあるものが「真面目に働いているルルが気に入らない」「若くカワイイだけでちやほやしてもらえるのが妬ましい」という妬みであるという事実は頑なに認めなかったが……ルルの真面目な仕事ぶりと、それをわざわざ粗探ししてはまるで顧客たちにまで宣伝するように大声で怒鳴りつける聖女たちの姿は明らかにその光景が異様だったと気が付いていた。



 そうしてルルがついに耐え切れず、聖女団を退職したことでさらに状況は一変する。



「あの年増の聖女たちが若いルルに嫉妬して、虐めて彼女を追いだしたんだ」

 その噂はあっという間に広がり――ルルがいなくなったことでグダグダになった聖女団の様子を見た人々は、その噂が真実なのだと改めて確認する。

「ちょっとアンタたち! 俺は治療に来てるんだぞ! ペチャクチャ喋ってないでさっさと治療を始めてくれ!」

「おい、なんでそんなに遅いんだ! こっちは急いでるんだぞ!」

 患者たちにそう急かされるが、先輩聖女たちは何もできずただオロオロすることしかできなかった。



 ルル以外の聖女たちは「ルルはまだ若い新人だし、可愛くて調子に乗ってるから」という理由でルルに仕事を押し付けてばかりいたため久しぶりに行う真面目な業務をスムーズに行うことができずにいた。しかしルルがいなくなった今、そんな言い訳は通用しない。仕方なく今までルルに任せきりだった仕事をやるとなると、ルルがこなしていた仕事の量が想像以上に多く難しいものだとわかり先輩聖女たちは混乱状況に陥った。

「ちょっとこの治療どうすればいいのよ!」

「私だって知らないわよ!」

「仕方ないでしょ、もとはルルが一人でやってたんだから! 全く、あの子はもう辞めてからも迷惑をかけることになるなんて!」



 そうして、ルルが辞めた後のことすらルルのせいにしていたが――それを目にしていた人々の間では、聖女パーティーの評判が徐々に下がりつつあった。

「やっぱり、ルルさんは虐められてパーティーを追い出されたんだよ」

「可哀想になぁ、きっとルルさんに何でも押し付ければいいと思ってたんだよ。だってルルさんがいなくなった途端にこうだもんな」

「あんな奴らに治療してもらっても安心できないし、もう地方の聖女パーティーなり自分で傷薬を買うなりしてなんとかするしかないな」



 そうして、聖女パーティーを訪れる人は消えていき――気づけば聖女パーティーに来る者は、誰もいなくなっていた。
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