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聖女とは結婚できませんよ?~王子の盛大なる勘違い~
リン・フウカ⑤
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つまり。セシリア様に残された道は二つ。
一つは聖女として教会に入り、王子との結婚を諦める。もう一つは王子と結婚し、聖女の職を辞すという選択だ。
前者であれば「同じ聖女を貶すとは何事か」と教会に詰問されるだろう。
それを乗り切ったとして、他の聖女のように人々の信仰を集められるとは思えない。聖女はこの上なく清らかでお優しい存在、と考えているらしいこの国の民衆はきっとそっぽを向くだろう。何だったら、「お前なんかが聖女を名乗るんじゃない」なんて暴動が起きるかもしれない。
後者であれば、聖女の名を騙り聖女を貶し王子を誑かした悪女として王室の怒りを買うことになる。
特に自らも聖女と結婚した王弟殿下はさぞお怒りになるだろう。彼は今のところ王位を継ぐつもりはないらしいが、王位を狙える立場ではある。やろうと思えば、エドアルド王子を失脚させることもできるはずだ。
どちらに転んでも、待っているのは破滅のみ。それを悟ったセシリア様は先ほどと態度を一変。自らの欲望を剥き出しにした醜い形相で、エドアルド王子へと掴みかかる。
「ちょっと、どういうことよ! 聖女になったら教会も国も思いのままで好きに暮らせるって言ってたじゃない! アンタ自分の国の法律もちゃんと勉強してなかったの?」
「そ、それはお前もだろう! ジェドのような田舎の国から来た人間が知っていることを、なぜお前は知らなかったんだ!」
王子とセシリア様はお互いに責任をなすりつけ合い、掴みかからんばかりの口論を繰り広げる。
……でも今、しれっとジェドを田舎扱いしましたね? 正直、癪に障りますが私は文句を零さず口をつぐみます。
なぜなら、私の代わりにこの二人へ鉄槌を下してくれる人がいるから。
アンナ様がぱんっ、と両手を叩き乾いた音を会場に響かせる。
純白の衣装に染み付いたワインが今は血のようで、ものすごく不気味だがそれは言わないでおこう。互いに罵り合う王子とセシリア様を見つめ、というか睨みつけるとアンナ様は口元だけにっこりして口を開いた。
一つは聖女として教会に入り、王子との結婚を諦める。もう一つは王子と結婚し、聖女の職を辞すという選択だ。
前者であれば「同じ聖女を貶すとは何事か」と教会に詰問されるだろう。
それを乗り切ったとして、他の聖女のように人々の信仰を集められるとは思えない。聖女はこの上なく清らかでお優しい存在、と考えているらしいこの国の民衆はきっとそっぽを向くだろう。何だったら、「お前なんかが聖女を名乗るんじゃない」なんて暴動が起きるかもしれない。
後者であれば、聖女の名を騙り聖女を貶し王子を誑かした悪女として王室の怒りを買うことになる。
特に自らも聖女と結婚した王弟殿下はさぞお怒りになるだろう。彼は今のところ王位を継ぐつもりはないらしいが、王位を狙える立場ではある。やろうと思えば、エドアルド王子を失脚させることもできるはずだ。
どちらに転んでも、待っているのは破滅のみ。それを悟ったセシリア様は先ほどと態度を一変。自らの欲望を剥き出しにした醜い形相で、エドアルド王子へと掴みかかる。
「ちょっと、どういうことよ! 聖女になったら教会も国も思いのままで好きに暮らせるって言ってたじゃない! アンタ自分の国の法律もちゃんと勉強してなかったの?」
「そ、それはお前もだろう! ジェドのような田舎の国から来た人間が知っていることを、なぜお前は知らなかったんだ!」
王子とセシリア様はお互いに責任をなすりつけ合い、掴みかからんばかりの口論を繰り広げる。
……でも今、しれっとジェドを田舎扱いしましたね? 正直、癪に障りますが私は文句を零さず口をつぐみます。
なぜなら、私の代わりにこの二人へ鉄槌を下してくれる人がいるから。
アンナ様がぱんっ、と両手を叩き乾いた音を会場に響かせる。
純白の衣装に染み付いたワインが今は血のようで、ものすごく不気味だがそれは言わないでおこう。互いに罵り合う王子とセシリア様を見つめ、というか睨みつけるとアンナ様は口元だけにっこりして口を開いた。
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