【短編】猫になりたい私と、飼い主になる僕。

飼い主になる僕

僕、いや俺はルイゼがいなくなってから、とてつもなく頑張った。色んなところでバイトして、料理、洗濯一通りの家事スキルを身につけた。少しづつだがルイゼ貯金を貯めていく。

全てはルイゼのため。
そしてあと1年でルイゼが帰ってくるという時に彼女の両親から提案があったのだ。うちで働かないか？と。速攻で受けた。ルイゼのルーナ商会は大商会。世界にはばたく大きな商会。

千載一遇のチャンス。
ここで名をあげれば、ルイゼの望む猫みたいな自由気ままな生活が手に入るはずだ。と思っていたのだが、ルイゼとの手紙のやり取りで本物の猫の姿になりたがっていた事が分かったのだった。そのときの驚き、悲しみっていうか複雑だった。

それでも結局ルーナ商会で新商品の開発チームに加わって「ふわふわなりきりセット」を作ると爆発的ヒット。うさぎ、くま、いぬ、そしてもちろん猫。ルイゼにも1つ送った。その時はめちゃくちゃ喜んでくれて手紙15枚も届いたっけ。

あぁルイゼ会いたい、ルイゼ。

そんな中ルイゼから届いた悩み。
 

高等学校へ行くべきかどうか。


大商会の娘という家柄も、能力も全て申し分ない程にそろっているのに、未だに躊躇する。その理由になっているのはきっと僕だ。いつだって頭の片隅にあったあの日。猫になると彼女の放った言葉。その時の目。行動、笑顔。人が何かを決断する時は、あんなに力があるんだ。そう他人事のように思ったのを覚えている。

3年間、ルイゼはそんなにもあの約束を大事に思っていてくれたんだ。俺を忘れてはいなかったんだ。じわじわと湧いてくる嬉しさをかみ締めていく。


ねぇルイゼ、俺たちあと少しで会えるんだよ。

そしてそれからはずっと一緒で、
一緒に高等学校に行けるんだ。

ルイゼはどんな反応をするだろうか？
ルイゼに伝えるのが楽しみで早く春が訪れることを願った。