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猫になりたい私
しおりを挟むあれから3年。
ルイゼ13才の冬。
ユウくんに会うまであと3ヶ月。
私は今とっても困っている。週1回くるユウくんからの手紙を取りに行こうと思って事務室に来たのだが、扉の前でなにやら揉め事がおきているのだ。関わりたくない貴族達3人。
「お前らなんでいんだよ?」
「別に関係ないだろ」
「ちょっと用事が、ね」
毎週来る度になんかいつもあそこで喧嘩している気がする。もう迷惑だわ。
チラチラと何故か辺りを見渡す彼らに見つかりそう。いつも引き止められて、巻き込まれるのよね。
どうしようかと様子を見ていると急に肩に手を置かれた。少しビクッとしたが先生だった。
「ルイゼさんごめんなさいね、うちのクラスの生徒が」
「いえ、大丈夫です」
でもなんで急に先生が?と思ったところで
そうそうルイゼさんこれ、と渡されたのはユウくんからの手紙だった。思わず口からわぁと、息がこぼれる。
「ありがとうございます!」
「どういたしまして、それにしてもルイゼさん気を付けてね」
「???」
なにかある感じでチラリと目線を遠くに向ける先生。物憂げな、死んだ魚のような目をしている。どうしたのかな?わかんないや。
「~っと、今回はその手紙今渡したけど...。これからは多分もっと遅くきたほうがいいわね」
「そうですか。わかりました」
「まぁ、見張っとくから」
「…...? あ、ありがとうございます?」
「ふふふっ、この調子じゃ無理そうね」
じゃまた明日2時限目に、と3人の方へ向かっていく先生。・・・・・・見張るって? やっぱりわかんない。それよりも!ユウくんから返事が来たーー!
いつもより早く廊下を歩いていく。なんて書いてあるかな? 楽しみ!
前の手紙で私は重大な相談をユウくんにしていた。
高等学校へ行くべきかどうか。
これまで3年間ずっと魔法と猫とユウくんのことだけを考えて頑張って来た。そのおかげで学年1位をキープしている。
でも猫になるための研究の基礎を習っただけで本気でやろうと思ったらまだまだ学ぶ必要がある。13才で未だに猫になりたいって馬鹿にされるかもしれない。だけどなりたい気持ちは約束したあの頃から変わっていないんだ。
でも高等学校に行くとまたユウくんとは離れ離れ。また会えなくなる。そう思うと、先生にも勧められているけれど簡単には頷けない。あと1週間で決めなければいけないのに。
ガチャっと扉を開けて部屋に入ると、即座に手紙を開ける。素早く、丁寧に。
ルイゼへ
だんだん寒さが厳しくなってきたね、元気かな? 風邪ひかないように気を付けて。
そう、この間の手紙だけど心配はいらないよ。行きたいんでしょ? なら行けばいい。俺も頑張っているから。春に帰ってくる時にいい知らせを届けられるよ、たぶん。
そうだ!最近いいものを見つけたんだ。それはね......
計5枚の便箋を何回も何回も読み直す。
ユウくんは行けばいいって。背中を押してくれているのは理解してるけどなんか冷たい気がする。短いよ。行ったらまた会えなくなるって分かってるのかな?なんだか面白くない。モヤモヤする。ベッドに転がって考えていく。
初めは行くか行かないかだったのに、いつの間にかユウくんのことを考えていた。
そして私はある可能性を思い立ったのだ。
もしかして、もしかしてだけど彼女とか、好きな人が出来たのかな?
自分で思いついたくせにどんどん胸が苦しくなる。
あぁだから興味がなくなって冷たいんじゃないか。そういえば文字がいつもに比べて急いで書いたみたいな。いつもより雑かった。そんな悪い考えが出てきてしまう。ってあれ?なんでこんな気持ちになってるんだろう?あれ?
そんなことは絶対ないってわかってるのに。
あぁ猫になりたい。
にゃあってないてぶらぶら歩いて撫でてもらって。なんも考えたくない。
猫になりたい。
そうだ、もういい。
高等学校へ行こう。行ってやろう。猫になるんだ。
そうしたら、そうしたら.........。
ふと辺りを見渡して気づく。もう夜だ。それに部屋がめちゃくちゃだ。魔力が暴走してしまっていたみたい。こんなこと最近はなかったのに。
もう寝よう。
まどろみの中願ったのは猫になることだった。
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