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出会いって空から降ってくるもんだろ?③

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 浅雛先輩について行くと低くは無い自分より倍の高さを誇る教会のような威風堂々とした焦げ茶色の扉が待ち構えていた。アンティーク調のその扉の表面には幾何学模様が繊細に掘られていてまるでここが学校だということを忘れてしまいそうなほど芸術味を帯びていた。

「じゃ、入るっすね」

 飄々とした様子で扉を引く先輩に続き俺、中秋といった順で足を踏み入れる。

 そこからはもう別世界だった。

 普通生徒会室といったらいつものようなクラスと何ら変わりない部屋、もしくは部室のような部屋で生徒会の活動をやってると思ってた。俺の中学はそうだったし。

 でも、今目に見えるのは何なのか?

 ここだけまるで中世の貴族の館にタイムスリップしたような空間だ。地面には所狭しとレッドカーペットが敷き詰められ、その広い空間を持て余すかのように大きな焦げ茶色のソファが鎮座している。上にはシャンデリアが輝きを放っていて庶民の目には痛い限りだ。何気なく壁を見ても美術館で飾った方がいいんじゃないかと思うほど綺麗な風景画もあったりする。

 一応ここが生徒会室だと証明するかのように申し分程度にデスクが置かれているが、あの学校といえばでイメージする木材で出来た机ではもちろんない。重量感がある黄金色のデスクだ。成金主義か?と目を見張ったのは言うまでもない。ここだけでも俺の通っていた体育館程の広さはあるが、何よりも驚いたのは窓際にあるこれまた最初に出会ったと同じあの扉。

 そこから人が来たのだ。

 え、ここだけじゃなくてまだ部屋が続いてるってこと?

「お客さん来てるっすよ~! 会長」

 浅雛先輩が眠たげでルビーレッド色の目を手の甲でかいてる高身長の男に話しかけると、そいつはチッと舌打ちをした。

「手短に用件を言え」

 無駄がない洗練された動きで椅子に座ると俺達の方をじっと見た。濡羽色の髪は同じ黒色なのに中秋と全然違った色に思えてしょうがなかった。中秋は星がキラキラと輝く満点の夜空のような色に対して、彼の色は雨上がり大空を駆け回るカラスの羽が濡れた艶のような色だ。

「あ、えっと相棒届けを貰いにきました」

 俺の相棒はただ彼を睨んでいるから仕方なく俺が答える。初めて生徒会長と呼ばれるこの男が顔を上げた瞬間だった。

 目が合って真っ先に思ったのは、カッコイイ。男が惚れる男を代表したような顔。肌の色は健康的な肌色なのに透明感があって幅広い大きな二重の目は傲慢チキにつり上がってる。小鼻の存在なんて確認されない黄金比の鼻に、薄く人を小馬鹿にしような唇は小さい顎にすっぽりと収まっている。

 この人は人の上に立つことが似合いそう、って思うほど良い言い方をすればリーダー、悪い言い方をすればドSな顔をしていた。

「おい、出てこい! 居るんだろ、氷雨ひさめ

 急にこの会長と呼ばれる男が怒鳴ったかと思えば、さっき彼が出てきた扉の対局側にある扉が開いた。

「何ですか? うるさいのは顔だけにしてくださいよバ会長」
「あぁん? てめぇはちゃっちゃと働け」
「そういう貴方こそ最近遊んでばかりで日和先輩に迷惑かけてるとか思わないんですか?」
「うっせぇ。黙ってこっち来い」

 すると濃藍色をしたコバルトブルーの瞳を持つ眼鏡をかけた男が俺の目の前へ来た。黒シャツの上にベストを着ていてどことなく真面目そうな印象が伺える。理系メガネ男子って感じだな。

「あ、気にしなくて大丈夫っすよー。いつもの夫婦漫才だから」

 フォローのつもりなのか、2人の剣幕に一切あたられてない浅雛先輩はのほほんと飴を口に入れていた。

「「夫婦じゃねぇ(ないです)」」

 2人揃ってツッコム姿は夫婦漫才のそれだった。

「えぇと、それでこの方達は?」
「相棒届け取りに来たらしい。さっさと紙渡せ」

 会長がぶっきらぼうかつ手短に答えると氷雨と呼ばれたこの男の人に俺たちはジロジロ見られた。

「もしかして特待生の葉月さんですか?」
「あ、はい」

 まさか名前知られているとは、と一瞬胸がドキリと鳴ったが、俺は特待生だし知られても可笑しくは無いと自分をやり込める。

 相棒は何故か険しい顔をして氷雨さんを見ていた。

「へぇ~あなたが」
「何だ? お前知ってんのか?」

 さっきまで興味なさげに分厚い書類を見ていた会長の視線が俺に移る。
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