上 下
5 / 10

新生活って気合い入るよね④

しおりを挟む
 結論、入学式は遅刻した。
 理由は簡単。中秋も俺と同じ迷子だったからだ。
 何だあの頭脳系みたいな風貌してるくせに。俺より方向音痴じゃねぇか!

 2人してぎゃーびー揉めながら入学式の会場でもある体育館を探すこと数十分。やっとの思いで辿り着いたのに先生から入学早々怒られました。

 いかにも生徒指導を受け持ってそうな筋肉ムキムキ体育会系の先生に首根っこを捕まれ、体育館内からは新入生代表の挨拶が流れて聞こえる中俺らは外でお説教をされていた。

 勘弁してくれよ、悪いのは中秋だろなんて言えるはずもなく入学式に参加出来たのは校長の挨拶つまりほぼ終盤だった。

 周りの人に白い目で見られ居心地の悪い状態が永遠に続いた入学式。教頭が閉会の言葉を唱えた時まさに神の救いかと思った。俺教頭大好き!

 それにしても、流石櫻咲川学園通称ハイスペック養成所。周りを見渡すと顔面偏差値高い奴らしかいねぇ。俺も自信あるとはいえ、霞そうだな……そしたら特待生の奨学金打ち切られんのかな。しかも初っ端から怒られたしな。

 幸先不安すぎて泣いちゃうよあたし。

 そんなふうに頭を悩ませていると猫のしっぽのようなふわふわとしたミルクティー色の髪を後ろで一括りにした教師が立っていた。

「はい、1─Aの人は教室に戻ろうね~」

 まるで幼稚園児を接するかのようなのほほんとした態度に一瞬自分の年齢を忘れかけた。

 周りのヤツらが言われた通り立ち上がり長髪教師を先頭に歩き始める。

 クラスに着くとこれまたびっくり。
 中秋が同じクラスだった。
 席は通路を挟んでの隣。
 ここまで来ると腐れ縁な気がしてくる。

 何となく心強さからグッ!と右手で親指を立てるポーズをすると舌打ちされた。最近の若い子は短気すぎやしないか?

「1─Aを担当する九条くじょうでーす。いやもう君たちはね、この選ばれしハイスペ養成所の期待の星だよ~」

 皆が席に着くと満足そうに教壇に立ってる九条先生が話し始めた。優しそうなタレ目の下にはホクロ所謂泣きぼくろがある。確実に大人のオーラーがあるものの、話し方のせいなのか良く言えば親しみやすい、悪く言えば子供っぽい不思議な人だ。

 呑気にニコニコ笑いながら話しかける姿は教師とは思えない。俺の右隣もそう思ったのか眉間に皺を寄せている。

「ハイスペ養成所ってあだ名みたいなもんだよな? え、いいの?」
「い、いいんじゃないか? 教師が言ってるみたいだし」

 耐えきれず中秋に話しかけると彼も戸惑いを隠せていなかった。この教師強いぞ。

「君たちはねぇ、B組に抜かされさえしなければ何やってもいいから自由に学んでね~。あ、モラルと法律の範囲内だけど」

 頭に疑問符を浮かべていると彼は何故か俺達を見て微笑んだ。嫌な予感に背筋が寒くなる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

愉快な生活

白鳩 唯斗
BL
王道学園で風紀副委員長を務める主人公のお話。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

王道学園なのに会長だけなんか違くない?

ばなな
BL
※更新遅め この学園。柵野下学園の生徒会はよくある王道的なも のだった。 …だが会長は違ったーー この作品は王道の俺様会長では無い面倒くさがりな主人公とその周りの話です。 ちなみに会長総受け…になる予定?です。

学園の支配者

白鳩 唯斗
BL
主人公の性格に難ありです。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

処理中です...