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第二章 異世界ど田舎村を救え!
俺、異世界でも袖の下の大事さを思い知る ※画像あり
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ユキりんから話も聞き終えたことだし、……次はこっちだ。
ピナレラちゃんと早々に意気投合して「ごはんなにかな~」とか呑気なこと言ってる黒髪黒目の中学男子。
俺の父方の従兄弟カズアキだ。
いや待って。本当に待ってほしい。だってこいつは俺と同い年で十年以上前に死んだはずなのに。
「カズ君。あ、あのさ」
何と言ったらいいのか。躊躇いがちに話しかけるとカズアキはおしゃべりしてたピナレラちゃんに断って、俺に向き合った。
「うん。ラノベ展開だよね。僕は異世界転移してこの世界に来たんだ」
カズアキが軽く指先を胸元に当てると、胸周りに金色の細いフラフープが出現した。
ざわ、と場に波が立った。村長も勉さんも、男爵や部下の人たちもビックリしている。
夢の王様も似たような光の円環を出してたが、あっちは確か真紅だったか。
円環が問題なんじゃなく魔力の金色が珍しいようだ。
「転移チートで勇者になって、クエストやってた感じ。冒険者ギルドに登録してお金稼ぎながら。まだ二ヶ月も経ってないけど」
「転移チートって……」
「これ」
カズアキが金色のフープから取り出したのは登場時も持っていた棒状のLEDライトだ。それアイドルコンサートのとき観客が振るペンライトだべ?
「い、今どこから出した?」
「このフープから。これこの世界特有の魔法らしいよ。環っていってアイテムボックス機能付き」
「ず、ずるい! 俺も欲しいー!」
これは何としてでも王様からチート付与してもらわにゃなんね。王様が持ってたぐらいだ、俺にだって持つ権利はあるはずだ!
「このペンライトの力で大人になったり、魔法を使ったりできたんだ」
カチカチカチとスイッチを繰り返し押すと、明かりがついてペンライトは何色にも変化した。
ある色に変わったときカズアキはやや小柄な中学男子から、あの最初に現れたときの黒づくめファッションの大人の男の姿に変わり、また中学生に戻った。
「魔導具ってやつか。それに勇者という転移チート……や、やっぱりカズ君も次元の狭間で宇宙人に会っただか!?」
「ユウ君なに言ってるの? 宇宙人なんているわけないじゃない。これはこの世界に来る途中、不思議な部屋で会った美人なお姉さんに魔導具に改造してもらったんだよ」
来て、と言われて俺はカズアキに誘われるまま庭に出た。
ブォン……とクォンタムチックな音を立ててカズアキが青く光らせたペンライトで「えいっ」とその辺の岩に叩きつける。
見事にスパッと岩は真っ二つになった。え、それどこのSFセイバー……?
しかもそれ、隣町のホームセンターでワゴン投げ売りされてた懐中電灯じゃないか。コンサートライト機能付きで1999円ポッキリだったやつ。そういえば中二の夏休みにお前自分の小遣いで買ってたな。覚えてるぞ。
「そ、そのお姉さんって」
「すごい綺麗な人だった。麗しいっていうのかな、青みがかった長い銀髪で、目の色は綺麗な湖みたいで」
「やっぱりあの虹色キラキラ宇宙人三人組の一人かあっ! ……くっそ、あの連中め。俺にはくれなかったのにカズ君にだけチート渡しやがったな!?」
俺にはやはり夢の中の王様しかいません! 愛してるぜ王様! だから俺にもっとチートを!
室内に戻って料理が来るまで待ってると、カズアキがなんだかソワソワしてる。なんだ飯の前に便所は済ませてこい?
と思ったら違かった。申し訳なさそうに眉を下げて言うことには。
「どうした?」
「あ、あのね。おばあちゃんがユウ君と食べなさいって持たせてくれたアップルパイ、そのお姉さんにあげちゃったんだ」
「ん?」
「おばあちゃんの美味しいあれ。そしたらお礼にってライトを改造してくれて」
「……アップルパイ。そういえば」
俺はもう十年以上前のことを記憶の底から引っ張り出してきた。
中二の夏休み、俺はカズアキともなか山にハイキングに出かけて途中ではぐれた。
弁当は途中で食べた後だったんだが、麦茶の入った重い水筒は身体の大きかった俺、残りのおやつの入った袋はリュックに入れてカズアキが背負ってた。
はぐれたカズアキが戻ってきたのは夜になってからだ。家族皆で探してたところにひょっこり。
俺はおやつを食べ損ねたこと、そのおやつはカズアキが俺の分も食っちまったんだと思ってしばらく不機嫌になったんだっけ。
「……賄賂。そうか、チートは賄賂がないと貰えなかったのかも……」
ぐぬぬ、と内心俺は歯噛みした。
わかった。次からは毎日、王様やウパルパ様だけでなく次元の狭間で会った三人の神人たちにも祈ろう。
あと供物だな、今なら夏で枝豆の時期だ。ずんだ餅とかどうだろうか!?
NEXT→従兄弟カズアキの異世界転移の理由とは……?
※ばあちゃんのめちゃ美味アップルパイは女魔王様を感激させたらしい。呑気な天然君にあれこれチートを授ける程度には気に入ったようだ……(なにげに重要情報)
コンサートライトってこういう。本作のためにわざわざ通販しましたぞ。画像はネオンブルー🟦
ピナレラちゃんと早々に意気投合して「ごはんなにかな~」とか呑気なこと言ってる黒髪黒目の中学男子。
俺の父方の従兄弟カズアキだ。
いや待って。本当に待ってほしい。だってこいつは俺と同い年で十年以上前に死んだはずなのに。
「カズ君。あ、あのさ」
何と言ったらいいのか。躊躇いがちに話しかけるとカズアキはおしゃべりしてたピナレラちゃんに断って、俺に向き合った。
「うん。ラノベ展開だよね。僕は異世界転移してこの世界に来たんだ」
カズアキが軽く指先を胸元に当てると、胸周りに金色の細いフラフープが出現した。
ざわ、と場に波が立った。村長も勉さんも、男爵や部下の人たちもビックリしている。
夢の王様も似たような光の円環を出してたが、あっちは確か真紅だったか。
円環が問題なんじゃなく魔力の金色が珍しいようだ。
「転移チートで勇者になって、クエストやってた感じ。冒険者ギルドに登録してお金稼ぎながら。まだ二ヶ月も経ってないけど」
「転移チートって……」
「これ」
カズアキが金色のフープから取り出したのは登場時も持っていた棒状のLEDライトだ。それアイドルコンサートのとき観客が振るペンライトだべ?
「い、今どこから出した?」
「このフープから。これこの世界特有の魔法らしいよ。環っていってアイテムボックス機能付き」
「ず、ずるい! 俺も欲しいー!」
これは何としてでも王様からチート付与してもらわにゃなんね。王様が持ってたぐらいだ、俺にだって持つ権利はあるはずだ!
「このペンライトの力で大人になったり、魔法を使ったりできたんだ」
カチカチカチとスイッチを繰り返し押すと、明かりがついてペンライトは何色にも変化した。
ある色に変わったときカズアキはやや小柄な中学男子から、あの最初に現れたときの黒づくめファッションの大人の男の姿に変わり、また中学生に戻った。
「魔導具ってやつか。それに勇者という転移チート……や、やっぱりカズ君も次元の狭間で宇宙人に会っただか!?」
「ユウ君なに言ってるの? 宇宙人なんているわけないじゃない。これはこの世界に来る途中、不思議な部屋で会った美人なお姉さんに魔導具に改造してもらったんだよ」
来て、と言われて俺はカズアキに誘われるまま庭に出た。
ブォン……とクォンタムチックな音を立ててカズアキが青く光らせたペンライトで「えいっ」とその辺の岩に叩きつける。
見事にスパッと岩は真っ二つになった。え、それどこのSFセイバー……?
しかもそれ、隣町のホームセンターでワゴン投げ売りされてた懐中電灯じゃないか。コンサートライト機能付きで1999円ポッキリだったやつ。そういえば中二の夏休みにお前自分の小遣いで買ってたな。覚えてるぞ。
「そ、そのお姉さんって」
「すごい綺麗な人だった。麗しいっていうのかな、青みがかった長い銀髪で、目の色は綺麗な湖みたいで」
「やっぱりあの虹色キラキラ宇宙人三人組の一人かあっ! ……くっそ、あの連中め。俺にはくれなかったのにカズ君にだけチート渡しやがったな!?」
俺にはやはり夢の中の王様しかいません! 愛してるぜ王様! だから俺にもっとチートを!
室内に戻って料理が来るまで待ってると、カズアキがなんだかソワソワしてる。なんだ飯の前に便所は済ませてこい?
と思ったら違かった。申し訳なさそうに眉を下げて言うことには。
「どうした?」
「あ、あのね。おばあちゃんがユウ君と食べなさいって持たせてくれたアップルパイ、そのお姉さんにあげちゃったんだ」
「ん?」
「おばあちゃんの美味しいあれ。そしたらお礼にってライトを改造してくれて」
「……アップルパイ。そういえば」
俺はもう十年以上前のことを記憶の底から引っ張り出してきた。
中二の夏休み、俺はカズアキともなか山にハイキングに出かけて途中ではぐれた。
弁当は途中で食べた後だったんだが、麦茶の入った重い水筒は身体の大きかった俺、残りのおやつの入った袋はリュックに入れてカズアキが背負ってた。
はぐれたカズアキが戻ってきたのは夜になってからだ。家族皆で探してたところにひょっこり。
俺はおやつを食べ損ねたこと、そのおやつはカズアキが俺の分も食っちまったんだと思ってしばらく不機嫌になったんだっけ。
「……賄賂。そうか、チートは賄賂がないと貰えなかったのかも……」
ぐぬぬ、と内心俺は歯噛みした。
わかった。次からは毎日、王様やウパルパ様だけでなく次元の狭間で会った三人の神人たちにも祈ろう。
あと供物だな、今なら夏で枝豆の時期だ。ずんだ餅とかどうだろうか!?
NEXT→従兄弟カズアキの異世界転移の理由とは……?
※ばあちゃんのめちゃ美味アップルパイは女魔王様を感激させたらしい。呑気な天然君にあれこれチートを授ける程度には気に入ったようだ……(なにげに重要情報)
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