上 下
98 / 151
第二章 異世界ど田舎村を救え!

俺、ユキりんの秘密を盗み見る(ごめんして!)

しおりを挟む
「ユキりん。退屈なら動画でも見てる?」
「あ、はい」

 ばあちゃんたちとの連絡用にスマホは必ず持ち歩くようにしている。
 日本の動画を見ても異世界人のユキりんには言葉がわからないんだが、動画アプリの作品画面をタップすれば見るだけなら困らないからな。
 それにこの異世界にテレビや動画など動くコンテンツはまだ発明されてない。出演者たちが何を言ってるか意味不明でも、見てるだけで楽しいんだそうだ。

 適当なアニメを見つけて集中し始めたユキりんを、俺は不躾にならないよう盗み見た。
 うむ。真剣な顔してても麗しの美少年だべ。べっぴんしゃんだべ……(*´ω`*)

 ……じゃなくて!
 さっきステータス確認して、俺はスキル欄にかつて王様から伝授された『人物鑑定スキル(初級)』を見つけたのだ。
 そういえばこんなんあったわ。ちゃんとチート能力貰ってたのに忘れてた。ごめんして王様。

 部屋に清浄魔法クリーンをかけながら、こっそりユキりんを人物鑑定スキルで観てみた。


名前 ユキリーン・オコメダ(ユキリーン・リースト)

所属(出自)
御米田家第三子(養子、次男)
アケロニア王国リースト男爵家第六子(四男)


「ユウキさん? どうかしました?」

 次に称号や保有スキルを観ようとしたところで俺の視線に気づいたユキりんが振り返ってきた。くう。この子は勘が鋭いな。

「……いや、アプリの使い方は大丈夫か? 音はもっと大きくしても大丈夫だぞ」
「大丈夫です。そっち手伝いましょうか?」
「平気、平気。昼まで頑張ってみるから」

清浄魔法クリーン!』

 ううむ。このステータス表示機能なかなか高性能だべ。御米田家の第三子ってちゃんとピナレラちゃんの次に引き取られた子って認識してるじゃん。すげえな。

 ユキりん、男爵家のご令息か。男爵って確か貴族制度の一番下だっけ。この村を含む一帯のブランチウッド男爵と位は同じ。
 第六子……てことは大家族だ。上にお兄ちゃんたちがおるのだな。……マジでお姉ちゃんおりそうじゃないか?

 これ本人に直接聞いたら、勝手に鑑定したって怒られそう。
 仕方ない、やはり男爵のモーリスさんに聞きに行くのが一番か。あの人も人物鑑定持ちだし俺より詳しくユキりんを鑑定してそうだ。



 ひたすら清浄魔法クリーンをかけまくって、事務所の数年分のホコリを取り払ったところでちょうど正午だった。

「ん、給湯設備はまだまだ使えそうだ。ユキりん、適当にその辺の机の上片付けてくれるか」
「あ、はい。席二つ分ですね」

 ついでに濡れタオルも渡して机を拭いてもらう。さすがに数年使われてなかったデスクマットは上の透明ビニールも黄色く変色している。
 間に挟まった伝票なども色褪せてしまってる。これらの処分も考えないとなあ。

 もなか酒造の水道も、ど田舎村の水源と問題なく接続されたようだ。しばらく水道を流しっぱなしにして水道管の中で滞留してた古い水が流れきると、ばあちゃんちと同じように美味い湧水の味になった。
 給湯室には廃業前、社員たちが使っていた湯飲みや急須もそのまま残っていた。丁寧に使われてたようでヒビや欠け、べたつきもなかったから軽く水洗いしてそのまま使わせてもらうことにする。

 備品のヤカンは錆だらけになってたから磨くまでは使えない。
 携帯用ケトルは男爵に貰った異世界産のもの。水を注ぐとセットされた魔石が数十秒で沸騰させてくれる。
 今日はばあちゃんが持たせてくれたおにぎりと漬け物、緑茶でランチだ。

「飯食ったら夕方までまた掃除の続きだ」
「じゃあ午後からは僕もお手伝いします」
「んだな。頼んますユキりん先生」
「……いただきます」

 照れるユキりんが家から持ってきた包に手をかける。大判のハンカチを開くと中には笹の葉でピシッと包まれたおにぎりが。
 俺もユキりんも三個ずつ、三角形の握り飯をカットした海苔一枚で挟んだタイプだ。漬け物は青菜と大根の醤油漬け。

 中身は何かな。食べるまでのお楽しみだっぺ。





NEXT→おにぎりの中身は……🍙
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

家出少年ルシウスNEXT

真義あさひ
ファンタジー
簡単なあらすじ 新婚旅行中の大好きなお兄ちゃんの代わりに海辺の僻地ギルドに派遣された少年魔法剣士が凶悪なお魚さんモンスターを倒しつつ美味しいごはんにしてもぐもぐするお話。 ◇◇◇ ※全編通して飯テロにご注意ください。ほんとご注意ください ◇◇◇ 【家出少年ルシウスNEXT】 お兄ちゃん大好きっ子なルシウス君は14歳。 おうちは魔法の大家でルシウス君も魔法剣士だった。 可愛い弟くんが兄を慕う姿に周りはほっこりしていたが、お兄ちゃん中心に世界を回しているルシウス君はちょっとアレな感じで心配しかない。 お兄ちゃんが結婚してようやくブラコン卒業かと周囲がホッとする中、兄夫婦の新婚旅行にくっついて行こうとしたルシウス君にパパがついに切れた。 「いい加減、兄離れせんかーい!!!」 「なんでそんな酷いこというの!? 父様なんてハゲてしまえばいい!」 「残念、うちはハゲ家系ではない!」 こんな面倒くさい弟が家にいては、ようやく結婚できたお兄ちゃんが新婚早々、離婚の危機である。 非モテで奥手なのに、頑張ってお見合いを繰り返してやっと見つけたお嫁さんを逃してはならない。 これは、ちょっとはお兄ちゃん以外にも目を向けなさいと強制的に旅に出されたルシウス君が冒険者となり、お兄ちゃんに会いたい・おうちかえりたいと泣きながらもシーフードモンスターたちを狩りまくって人助けや飯テロしながら最強伝説を作っていく物語。 ビフォー魔法剣士、ネクスト……? ◇◇◇ 【続編 子爵少年ルシウスLEGEND】 後に聖剣の聖者、無欠のルシウスと呼ばれる男にも学生時代があった。 ひたすら、お魚さんモンスターと戦い続けた冒険者ギルドのココ村支部の日々から約二年後。 ルシウス君は子爵となり独立したがまだ十六歳。今年から学園の高等部に進学することになる。 可愛い甥っ子たんも生まれて毎日楽しく過ごせるかとウキウキしていたルシウス君だが、残念ながらほのぼのエンジョイスクールライフにはなりそうもなかった。 ※ 「家出少年ルシウスNEXT」の続編。 ※大人になったルシウス君様が見れるのは「王弟カズンの冒険前夜(後半から)」「聖女投稿、第二章以降」にて。 ちょっとアダルトな未来のお話は「ユキレラ」へ。 ※更に幼い8歳児ルシウス君の登場する「夢見の女王」もよろしくお願いします!

ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K
ファンタジー
ごく普通のぽっちゃり女子高生、牧 心寧(まきころね)はチートスキルを与えられ、異世界で目を覚ました。 有するスキルは、『暴食の魔王』。 その能力は、“食べたカロリーを魔力に変換できる”というものだった。 強大なチートスキルだが、コロネはある裏技に気づいてしまう。 「これってつまり、適当に大魔法を撃つだけでカロリー帳消しで好きなもの食べ放題ってこと!?」 そう。 このチートスキルの真価は新たな『ゼロカロリー理論』であること! 毎日がチートデーと化したコロネは、気ままに無双しつつ各地の異世界グルメを堪能しまくる! さらに、食に溺れる生活を楽しんでいたコロネは、次第に自らの料理を提供したい思いが膨らんできて―― 「日本の激ウマ料理も、異世界のド級ファンタジー飯も両方食べまくってやるぞぉおおおおおおおお!!」 コロネを中心に異世界がグルメに染め上げられていく! ぽっちゃり×無双×グルメの異世界ファンタジー開幕! ※基本的に主人公は少しずつ太っていきます。 ※45話からもふもふ登場!!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

手乗りドラゴンと行く異世界ゆるり旅  落ちこぼれ公爵令息ともふもふ竜の絆の物語

さとう
ファンタジー
旧題:手乗りドラゴンと行く追放公爵令息の冒険譚 〇書籍化決定しました!! 竜使い一族であるドラグネイズ公爵家に生まれたレクス。彼は生まれながらにして前世の記憶を持ち、両親や兄、妹にも隠して生きてきた。 十六歳になったある日、妹と共に『竜誕の儀』という一族の秘伝儀式を受け、天から『ドラゴン』を授かるのだが……レクスが授かったドラゴンは、真っ白でフワフワした手乗りサイズの小さなドラゴン。 特に何かできるわけでもない。ただ小さくて可愛いだけのドラゴン。一族の恥と言われ、レクスはついに実家から追放されてしまう。 レクスは少しだけ悲しんだが……偶然出会った『婚約破棄され実家を追放された少女』と気が合い、共に世界を旅することに。 手乗りドラゴンに前世で飼っていた犬と同じ『ムサシ』と名付け、二人と一匹で広い世界を冒険する!

処理中です...