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第二章 異世界ど田舎村を救え!

俺、王様のチート大剣の凄さを振り返る

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「……あの人も無事だといいな」
「光の剣を持ってた魔術師だっけ?」

 ユキりんを誘拐したギルガモス商会は違法組織だ。俺たちが転移してきたこの世界は円環大陸というんだが、奴隷は国際法で明確に禁じられている。
 だが各国に協力者の顧客がいてどの国もなかなか検挙できずにいるそうだ。

 ユキりんは何せこの麗しい美少女顔だ。男に言う言葉じゃないがべっぴんさんすぎる。そりゃ悪い奴に狙われもする。

 明日いよいよ奴隷オークションにかけられるという前日、ギルガモス商会を襲撃して違法に誘拐された人々を解放してくれた男がいたという。
 ユキりんによれば、俺と似た黒髪の男だったそうだ。光の剣を持っていて、魔術師と名乗ったとか。

 だが男爵に言わせれば、その名乗りはとてもおかしいそうだ。
 〝光の剣〟といった発光する武器を持つのはこの世界では聖なる魔力持ちしかいないという。
 本当にその男が光の剣を持っていたなら、その剣は聖剣だし男は剣聖と名乗るはずなのだと。

「………………」

 ユキりんはそれ以上を語らない。きっと今、この子の中ではギルガモス商会に囚われていたときの過酷な経験や複雑な思いが渦巻いているのだろう。
 おのれ、うちの可愛い次男にこんな憂い顔をさせる奴隷商許すまじ。



 俺は今、あの夢の中で出会った俺そっくりな王様から貰った、チート機能付き大剣で日々訓練をしている。
 使うだけなら、魔力を込めれば左腕にはバックラー、右手側には大剣が現れる。
 魔力で顕現させたりまた還元したりするだけあって、どちらもあまり重みは感じない。だが使いこなせるかといえばまた話は別だ。

 元々このど田舎領の騎士団長だったという勉さんや現役騎士でもある男爵の指導を受けに、週の半分は男爵の屋敷を訪れている。

 バックラーは俺だけでなく、大公令嬢だったばあちゃん、王家の近い親戚だった勉さんは何と同じように出して使えていた。村長は遠縁のせいか駄目なようだ。
 王様のチート大剣は元神官だった村長が検分して腰を抜かしかけていた。

『私の手持ちの剣の中でも、最も〝チート〟とやらに近い剣を授けた。神人四人と数多の聖女聖者の祝福を賜った究極のプレミアものだぞ』

 王様は確かそう言っていた。
 存在そのものが高度な魔導具というこの大剣は様々な機能を持っていた。
 刀身に埋め込まれた三つの魔石アダマンタイトに付与された強大な力もその一つだ。ユキりんを助けるため一個使ってしまって残機は既に二だが……王様マジで残機チャージしてけろ。残機はいつでも余剰たっぷりにしておかねえと安心できねえっぺ!

 鞘もない抜き身の剣だったが、物品鑑定スキルを持っていた村長が鑑定すると剣本体が但し書きを記録していた。
 村長が腰を抜かしたのは、大剣に祝福を与えた神人や聖女、聖者たちがこの世界の超弩級の大物ばかりだったからだ。

 神人カーナ。この世界の守護者にして長老。黄金龍と一角獣、二つの姿を持つ獣人の進化した種族ハイヒューマンという。
 男爵によれば、俺たちが異世界に転移してきてすぐの頃、歓迎会の夜に見たあの虹色キラキラに光る黄金龍がこの神人カーナだったそうだ。
 虹色を帯びた真珠色の魔力を持つという。……何か思い出しそうな気がするな……

 神人・魔王ジューア。ここ魔王がいるタイプの異世界だったか!? と胸がザワッとした俺だったが、男爵たち曰く魔王といっても邪悪な存在ではなく魔人族なる進化した種族ハイヒューマンの長だそうだ。
 青銀の長い髪を持つ麗しの美少女で、数多の透明な剣を操る魔法剣士でもあるらしい。
 彼女は虹色を帯びた夜空色の魔力を持つ。
 ……この辺で俺は察した。この神人たち、俺が異世界転移するとき次元の狭間で会った虹色キラキラに光る宇宙人たちだ……宇宙人じゃなくて進化した種族ハイヒューマンの中でも特に進化した神人という存在らしい。
 そういえば本人たちも神人ってちゃんと言ってた気もする。

 神人・医聖アヴァロニス。もうわかっている。あのミルクティ色の癖毛の男だ。
 医聖は医師や治癒師など、肉体や心の治療に特化した聖なる魔力持ちをいう。

『君はこの世界で大切な人を救わねばならない。その使命を果たしたとき、元の世界に戻るか、この世界に残るか。選択の機会が与えられるだろう』

 俺にそのような託宣を下した男だ。とても重要なクエストっぽい……
 だがどうせくれるなら、チートも一緒にくれても良かったのだぞ……?

 王様は神人四人と言っていたが、残り一人の名前は文字化けして読めなかったそうだ。『神人・歌聖』の称号までは読めたのだが名前が文字化け。
 歌聖は文字からすると歌で祝福する聖女もしくは聖者ってところか。俺好みの綺麗めなお姉さんだったらいいなあ。

 俺は皆にこの大剣を貰った王様の夢の話をしている。ばあちゃんたちはもちろん、男爵もものすごい驚いていた。
 俺の話を聞く限り、その王様は今より未来で即位した人物じゃないかとのことだった。

 俺そっくりの黒髪黒目、髪質や髪型なども同じ。背格好もまったく同じの黒い軍服姿。

 元騎士団長ベントリーだった勉さんはまだ王都の実家のウェイザー公爵家で暮らしていたとき、王宮内にある代々の主要王族の絵姿を見て覚えていた。

 俺とまったく同じ顔と雰囲気、背格好の王様の絵姿はなかったそうだ。それで俺が夢で会った王様は未来人だろうと結論付けられたわけだ。




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