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第二章 異世界ど田舎村を救え!

俺、焼きおにぎりに秘密兵器 ※おいちい回

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「でもこの芋煮、ちょっと作る量多すぎませんか。残ったら持ち帰るんですか?」
「ああ、それなら大丈夫」

 家から持ってきたキャンプ用のステンレス鍋は五人用。俺たち三人で食いきるにはちょっと多めの量を作ってしまった。
 だが、心配は要らない。芋煮だから。

「お、木炭に火ぃ入ったな」

 金属製のトングで、かまどとは別に石で小さな囲みを作っていた中へ、赤く熱した炭をぽいっと数個放り込む。
 上に金網。家から持ってきた塩抜きの三角おにぎりをのせて焼いていく。
 炭火は火の通りが早い。片面数十秒ですぐ焼き色が付いてくるので、調理用のミニトングでひっくり返してプラボトルで持ってきた醤油タレを振りかけていく。醤油に煮切ったみりんを少し混ぜたやつだ。
 家でやるならハケでじっくり繰り返し塗って染み込ませるがアウトドアだしな。

「わああ……いいにおい!」
「まだだ。こいつの本気はこんなもんじゃない」

 香ばしく焼ける米の匂いに、ピナレラちゃんばかりかユキりんまでソワッソワッとしている。
 両面を軽く焼く。焼き色が付いてきたら醤油タレを振りかける、を何度か繰り返して全体をこんがり焦げないよう気をつけながら焼く。
 焼けたら、持参していたクッキングペーパーを四つ折りした中に焼きおにぎりをイン。自作バーガー袋みたいなもんだ。

「おにいちゃ! はやくたべたい!」
「まあ待てピナレラちゃん。今日はとっておきがあるんだ」

 素早く荷物の中からジッパー付きの小袋を取り出した。中に入っているのは――イワシの削り節。要は煮干しの削り節だ。カツオ節みたいな燻製ではないが乾燥させたカタクチイワシをそのまま細かく柔らかく削ったやつだ。
 焼きおにぎりに、ふわふわのイワシ削りをたっぷりのせて完成である。

「二人とも、熱いから気をつけてな」
「あい!」
「はい!」

 もう俺のことなど見ちゃいない。焼いてる最中から焼きおにぎりに夢中だった二人はさっそくかぶりついている。

「「!」」

 家でばあちゃんがグリルで焼いた焼きおにぎりなら、もう二人とも経験済みだった。
 しかし炭火でこんがり焼いたやつは今日が初体験。そして秘蔵のイワシ削り節も今日が初公開だ。

「おいちい……おくちのなかがおいちいい……」
「……お代わりください。あと二個ぐらい」
「あたちももういっこ!」

 よし。今日もピナレラちゃんのおいちいをたくさん貰って俺は満足だった。
 ユキりんも食欲旺盛で何よりだべ。まだまだ細っこいので早く肥えるがよい。俺と同じ年になる頃にはムキムキになれるぞ。

 先に二人のリクエスト分の焼きおにぎりを焼いて渡してから、俺も自分の分を焼いて食った。
 まず熱々のところをはぐっと一口。ふわっと飛び散るイワシ削りにむせながらも、醤油とお焦げとイワシ削りの旨みの塊と混然となったこれ……これこれ!
 焼きおにぎりとイワシ削りの組み合わせは、会社員時代の社内バーベキューで他部署のお局様に教えてもらったものだ。食べ歩きが趣味の人で、観光地で食べて美味しかったもの上位に入るらしい。
 ふつうにカツオ節でも美味いんだが、イワシ削り節のほうが美味い。圧倒的に美味い。俺的にも過去食べた焼きおにぎりの中で間違いなく首位を争うほど美味い。
 イワシ削り節自体が出汁の材料だ。それを丸ごと薄く薄くふわっふわに削ったものを選ぶのがコツだ。口の中に入れたとき、口当たりがよくすぐ溶けるように旨みがじわあ……となるのが良い。

 そこに芋煮の汁をずずっと。……あああああ。うま。何もかもが美味い、もなかの自然の恵み最高!
 そろそろ、日本で買っていた食料に期限間近のものが増えてきた。このイワシ削り節もだ。使いきりに近いうちに男爵の屋敷で村人たちと芋煮会……良いな!

 ピナレラちゃんとユキりんも頬っぺたを薄っすらピンクに染めて美味そうに食っている。
 はあああ~うちの子たちが今日も可愛い。この笑顔がユキ兄ちゃんの生きがいだっぺ!






NEXT→芋煮がこれで終わるはずがない……

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