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第一章 異世界転移、村ごと!
俺、元カノの連絡先を全消去、そして引き出しの奥には……
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部屋に戻った俺はスマホを再び手に取った。
『君に選ばれなかったことを残念に思う。八十神とお幸せに』
これで最後だからと思って、格好つけてそんなメッセージを書いて送った。
……だが! 後輩鈴木から、その後追加で一通だけメッセージが来ていたのだ。
『あ、元カノさん、八十神にフラれたみてーです。
社内ですげえ修羅場ってました。ザッマァーwwwwwwwwww』
おい鈴木、草の生やしすぎだ。一つか三つまでに留めておくのがお作法というやつだぞ。
「ふ……フハハハハハ! なんだなんだ、俺を捨ててまだ二ヶ月も経ってないぞう? ふ……フハ……ハハハハハ! ……ゲホゲホッ」
むせ返りながら俺は笑った。ああ、おかしい。だが、まさか女性相手にこんな本音や馬鹿笑いそのままのメッセージを送るわけにもいかないだろう?
鈴木のメッセージをもとに、俺は元カノが欲しがってた高級店の指輪の相場を調べたのだ。
三百万から五百万。あ、こりゃこの女は駄目なやつだったと、そこで頭が冷えた。目が覚めたと言ってもいい。
その金があればマンションや一軒家の頭金になる。車だって買える。生まれるだろう子供の学資保険の積立金にだってできる。そういった地に足の付いた視点が彼女にはない。
こういう考え方は、彼女の実家が裕福なこととは関係がないと思う。むしろお嬢さん育ちであのセレブへの強い憧れはちょっとズレてるんじゃないかとは思ってた。
まあ……指輪も百万ぐらいなら買ってしまったかもしれんが……
俺は淡々と、元カノのメールやメッセージアプリのトークルームなど一つ一つ消していき、――すべての連絡先をブロックして削除した。
さようなら、元カノ。もう二度と会うこともないだろう。
そうして俺は彼女を自分のストレージの『過去の女』フォルダに放り込んだのだった。
「……こうなると、元カノにこれを見せなくて本当に良かった」
俺は自室の机の一番下の引き出しの鍵を開けて、中から美しい黒のビロード貼りの小箱を取り出した。
たまに銀座のデパ地下で買ってた高級チョコレートの外箱だ。中は仕切りを取り外して、内側全面は真紅のビロード貼り。
中には金貨が詰まっている。全部純金のカナダのメープルリーフ金貨だ。サイズは一オンスで揃えている。
あのオッサ……じゃなくておばちゃんのみどり社長と俺は、先祖の墓が同じもなか村にあって昔からの顔馴染みだ。
高校から大学までしばらく会ってなかったが、新卒で入社して営業マンとして挨拶に行ったら、あのおばちゃんが相変わらずゲハハハ笑って現れたものだから驚いた。そういう仲だ。
それ以前、中学のとき、親父の長期休暇で冬休みに帰省して久し振りに会ったときのこと。
『ユウキ君。お年玉はなんに使うんだ?』
『東京さ帰ったら近所の信用金庫さ行って積み立てだべ。今なら自転車当たるかもって』
『ばっか、そんなん当たらね! そんなんより金がええ、金! 金はまだまだ上がるっぺさ!』
『ほわあ……おばちゃん、物知りだなや~』
『んだあ。おばちゃんを信じて金買っどけ。金!』
みどりさんの言葉を真に受けた俺は、それから毎年のお年玉や、高校大学で始めたバイト代、社会人になってからもボーナスで少しずつ金貨を買うようになった。
最初は一番小さなやつ。溜まってきたら大きなサイズに変えて最終的に一オンス金貨にする。
今、チョコレートの箱の中には二十枚と少しの一オンス金貨が。
元カノと付き合い始めてから、毎年何枚か換金しちまってたんだよなあ。もったいないことをした。
それでも、最初にみどりさんに金が良いぞと勧められた頃から金価格は倍以上に値上がりしていた。
「異世界で仕事見つけるにしろ商売やるにしろ。元手にちょうどいい。俺が皆を養わなきゃ」
みどりさんからは、証券会社の純金積立もいいけど現物で持ってると金運が上がるぞと教えを受けていた。
お社長族の験担ぎみたいなものだ。東京からもなか村に帰ってくるとき、現物で引き出してこれだけ持ってきていたんだ。
俺単独でなく、村ごと、家ごと異世界転移で良かったっぺ!
結局、銀行の残高は異世界にいる限りこっちに引き出せないしな……クレジットカードはまだ有効だが買えるのはデジタルコンテンツだけだし。
男爵によると純金コインはこっちの通貨とほぼ等価で交換できるらしい。
余計なことも吹っ切れたことだし。
ひとまずこれで、ど田舎村での生活の基盤を整えていくことにする。
『君に選ばれなかったことを残念に思う。八十神とお幸せに』
これで最後だからと思って、格好つけてそんなメッセージを書いて送った。
……だが! 後輩鈴木から、その後追加で一通だけメッセージが来ていたのだ。
『あ、元カノさん、八十神にフラれたみてーです。
社内ですげえ修羅場ってました。ザッマァーwwwwwwwwww』
おい鈴木、草の生やしすぎだ。一つか三つまでに留めておくのがお作法というやつだぞ。
「ふ……フハハハハハ! なんだなんだ、俺を捨ててまだ二ヶ月も経ってないぞう? ふ……フハ……ハハハハハ! ……ゲホゲホッ」
むせ返りながら俺は笑った。ああ、おかしい。だが、まさか女性相手にこんな本音や馬鹿笑いそのままのメッセージを送るわけにもいかないだろう?
鈴木のメッセージをもとに、俺は元カノが欲しがってた高級店の指輪の相場を調べたのだ。
三百万から五百万。あ、こりゃこの女は駄目なやつだったと、そこで頭が冷えた。目が覚めたと言ってもいい。
その金があればマンションや一軒家の頭金になる。車だって買える。生まれるだろう子供の学資保険の積立金にだってできる。そういった地に足の付いた視点が彼女にはない。
こういう考え方は、彼女の実家が裕福なこととは関係がないと思う。むしろお嬢さん育ちであのセレブへの強い憧れはちょっとズレてるんじゃないかとは思ってた。
まあ……指輪も百万ぐらいなら買ってしまったかもしれんが……
俺は淡々と、元カノのメールやメッセージアプリのトークルームなど一つ一つ消していき、――すべての連絡先をブロックして削除した。
さようなら、元カノ。もう二度と会うこともないだろう。
そうして俺は彼女を自分のストレージの『過去の女』フォルダに放り込んだのだった。
「……こうなると、元カノにこれを見せなくて本当に良かった」
俺は自室の机の一番下の引き出しの鍵を開けて、中から美しい黒のビロード貼りの小箱を取り出した。
たまに銀座のデパ地下で買ってた高級チョコレートの外箱だ。中は仕切りを取り外して、内側全面は真紅のビロード貼り。
中には金貨が詰まっている。全部純金のカナダのメープルリーフ金貨だ。サイズは一オンスで揃えている。
あのオッサ……じゃなくておばちゃんのみどり社長と俺は、先祖の墓が同じもなか村にあって昔からの顔馴染みだ。
高校から大学までしばらく会ってなかったが、新卒で入社して営業マンとして挨拶に行ったら、あのおばちゃんが相変わらずゲハハハ笑って現れたものだから驚いた。そういう仲だ。
それ以前、中学のとき、親父の長期休暇で冬休みに帰省して久し振りに会ったときのこと。
『ユウキ君。お年玉はなんに使うんだ?』
『東京さ帰ったら近所の信用金庫さ行って積み立てだべ。今なら自転車当たるかもって』
『ばっか、そんなん当たらね! そんなんより金がええ、金! 金はまだまだ上がるっぺさ!』
『ほわあ……おばちゃん、物知りだなや~』
『んだあ。おばちゃんを信じて金買っどけ。金!』
みどりさんの言葉を真に受けた俺は、それから毎年のお年玉や、高校大学で始めたバイト代、社会人になってからもボーナスで少しずつ金貨を買うようになった。
最初は一番小さなやつ。溜まってきたら大きなサイズに変えて最終的に一オンス金貨にする。
今、チョコレートの箱の中には二十枚と少しの一オンス金貨が。
元カノと付き合い始めてから、毎年何枚か換金しちまってたんだよなあ。もったいないことをした。
それでも、最初にみどりさんに金が良いぞと勧められた頃から金価格は倍以上に値上がりしていた。
「異世界で仕事見つけるにしろ商売やるにしろ。元手にちょうどいい。俺が皆を養わなきゃ」
みどりさんからは、証券会社の純金積立もいいけど現物で持ってると金運が上がるぞと教えを受けていた。
お社長族の験担ぎみたいなものだ。東京からもなか村に帰ってくるとき、現物で引き出してこれだけ持ってきていたんだ。
俺単独でなく、村ごと、家ごと異世界転移で良かったっぺ!
結局、銀行の残高は異世界にいる限りこっちに引き出せないしな……クレジットカードはまだ有効だが買えるのはデジタルコンテンツだけだし。
男爵によると純金コインはこっちの通貨とほぼ等価で交換できるらしい。
余計なことも吹っ切れたことだし。
ひとまずこれで、ど田舎村での生活の基盤を整えていくことにする。
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