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第一章 異世界転移、村ごと!
俺、異世界幼女と家族になる ※おいちい回
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昼にばあちゃんが男爵家の料理人と作ったのは、梅ジソのおにぎりと、唐揚げ入り、小海老のフリットを濃いめの天つゆに浸して具にした天むすだった。
こいつはまた……食べやすくて、食いすぎてしまうおにぎりの代表選手が来た!
「米はど田舎領でも栽培してるんです。ライスボールもあるけど普段はピラフを丸めたり、ソースやチーズを加えてコロッケですね」
「俺たち異世界人のレシピ、口に合います?」
「美味いですよ、心配ご無用です。醤油も味噌も流通してますからね。あなたがたニホンから来た異世界人の集落で作ってるそうですよ」
おおおお。醤油と味噌があるほうの異世界だったか! ここ本当に優しい異世界すぎるだろ!
食文化の違いといえば、今の日本食みたいに料理には滅多に砂糖やみりんなどの甘味料を使わないことが一番大きな違いだそうで。甘いものはスイーツ限定だという。
男爵の屋敷には、俺たち四人と男爵、部下と料理人、下働きの数名。
ばあちゃんは、せっかくだからと自家製味噌に煮干しと昆布をふんだんに使った出汁で味噌汁も作っていた。
具はうちの冷蔵庫のストックの豆腐と、ど田舎村産のネギのコラボ。日本の白ネギより一回り太くて柔らかい。あとは油揚げ。これもばあちゃんちのストック。
「いやあ~異世界って贅沢だねえ。こんな揚げ物を当たり前に作っちゃうなんて」
食堂の大皿に並んだ、唐揚げや天ぷら風フリット入りのおにぎりに男爵が感激していた。
「こっちの世界じゃ唐揚げとかなかったりします?」
「あるよ、あるけどこの国はあんまり大量の油を使う料理はないね。昔、食中毒被害が蔓延して揚げ物を食べる文化が下火になったんだ」
「ああ……油の酸化かな。あれ本当にヤバいって聞くから」
肥満しにくい食文化だ。良いことだ。
さて、昨日の夜や今朝とは違うおにぎりだが、ピナレラちゃんの反応はどうだろうか?
まずは一個、海苔で包んだ唐揚げ入りのおにぎりを手に取っている。そのまま、ぱくっと大きなお口を開けて唐揚げごと行ったあー!
「あげたとりしゃん。おいちい」
もぐもぐ、ごっくんしてから、うむ、と一端の評論家の顔つきでピナレラちゃんが頷いている。よし。唐揚げは異世界幼女にも好評だ。
半分ほど食べた時点で味噌汁を木のスプーンですくって一口。
「おばあちゃのスープ、おいちい! おこめとしゅごくあう!」
「そうけえ。たくさんあるでな、たんと召し上がれ」
ばあちゃんは自分の手作りごはんを美味しく食べてもらうのが大好きだ。ニコニコしながら自分の食事を後回しにして配膳に回っている。
思い思いにおにぎりや味噌汁、惣菜を食す皆の中で、俺は梅ジソのおにぎりをひとつ取った。
はぐっと一口。うっま。やはり〝ささみやび〟最高。梅ジソもさすが日本の誇るふりかけ代表。
咀嚼しながら齧った跡を見る。
「むううう……」
やはり、薄っすら米が光っている。だが今回は米だけじゃなかった。味噌汁も光っている。ということはやはり、ど田舎村の水だと思う。
この村の飲料水も山から伸びてる水脈の湧水らしいから、土地に何か秘密があるのだろう。
この辺は調べてみるのも面白そうだ。
その夜、予想通り嵐が来て皆は軽めの夕飯を取ってそのまま早く寝ついたが、男爵は領内の仕事をしていた。
俺は男爵に時間を貰って、この国に帰化する意志とピナレラちゃんのことを話した。
「もし、このまま俺が彼女の面倒を見ることになったら、どう思いますか?」と尋ねた。
男爵は少し考えた後、深く頷いて答えてくれた。
「ユウキ君。まだ君たちと出会って数日だけど、私や村の人たちは君を見ていた。君ならピナレラをしっかり守ってくれると信じているよ。君なら安心して任せられる」
男爵の言葉に安堵した。同時にこの村で託された新たな役割に責任を感じた。
ピナレラちゃんにとっての良き兄、良き父として、何よりこの村の一員として。
この異世界のど田舎村での日々は、多くの挑戦と困難を伴うのは間違いない。
でも、それ以上に得られる喜びや人々との絆、ピナレラちゃんの成長を見守れる幸運、何より大好きなばあちゃんと一緒で、遠縁だが村長やベンさんも一緒だ。何を恐れることがあるだろうか。
そう、俺はこの世界に留まることを選んだ。
この地で、新たな家族を迎えてともに未来を築いていく。それが俺の新しい人生、新しい章の始まりなのだ。
今は屋敷を揺らしている嵐も、明日になれば止んで晴れるだろう。
明日こそは朝一番でピナレラちゃんに俺たちが〝家族〟になることを伝えよう。喜んでくれるといいんだが……
だが、俺の心にはまだ元カノ穂波の影がちらついていた。
ああ、次元の狭間にいた虹色キラキラに光る宇宙人三人組よ。異世界転移の衝撃で過去の記憶を元カノだけ都合よく吹き飛ばしてほしかった!
俺はきっと、どれだけ異世界に馴染んでも元カノを忘れられないんだろうな……女々しい男と言うなら言え。
……と振られた余韻にまだまだ浸っていた俺だったが、そんな自己憐憫が吹き飛ばされるような出会いが訪れたのは、嵐が過ぎ去った翌日のことだった。
こいつはまた……食べやすくて、食いすぎてしまうおにぎりの代表選手が来た!
「米はど田舎領でも栽培してるんです。ライスボールもあるけど普段はピラフを丸めたり、ソースやチーズを加えてコロッケですね」
「俺たち異世界人のレシピ、口に合います?」
「美味いですよ、心配ご無用です。醤油も味噌も流通してますからね。あなたがたニホンから来た異世界人の集落で作ってるそうですよ」
おおおお。醤油と味噌があるほうの異世界だったか! ここ本当に優しい異世界すぎるだろ!
食文化の違いといえば、今の日本食みたいに料理には滅多に砂糖やみりんなどの甘味料を使わないことが一番大きな違いだそうで。甘いものはスイーツ限定だという。
男爵の屋敷には、俺たち四人と男爵、部下と料理人、下働きの数名。
ばあちゃんは、せっかくだからと自家製味噌に煮干しと昆布をふんだんに使った出汁で味噌汁も作っていた。
具はうちの冷蔵庫のストックの豆腐と、ど田舎村産のネギのコラボ。日本の白ネギより一回り太くて柔らかい。あとは油揚げ。これもばあちゃんちのストック。
「いやあ~異世界って贅沢だねえ。こんな揚げ物を当たり前に作っちゃうなんて」
食堂の大皿に並んだ、唐揚げや天ぷら風フリット入りのおにぎりに男爵が感激していた。
「こっちの世界じゃ唐揚げとかなかったりします?」
「あるよ、あるけどこの国はあんまり大量の油を使う料理はないね。昔、食中毒被害が蔓延して揚げ物を食べる文化が下火になったんだ」
「ああ……油の酸化かな。あれ本当にヤバいって聞くから」
肥満しにくい食文化だ。良いことだ。
さて、昨日の夜や今朝とは違うおにぎりだが、ピナレラちゃんの反応はどうだろうか?
まずは一個、海苔で包んだ唐揚げ入りのおにぎりを手に取っている。そのまま、ぱくっと大きなお口を開けて唐揚げごと行ったあー!
「あげたとりしゃん。おいちい」
もぐもぐ、ごっくんしてから、うむ、と一端の評論家の顔つきでピナレラちゃんが頷いている。よし。唐揚げは異世界幼女にも好評だ。
半分ほど食べた時点で味噌汁を木のスプーンですくって一口。
「おばあちゃのスープ、おいちい! おこめとしゅごくあう!」
「そうけえ。たくさんあるでな、たんと召し上がれ」
ばあちゃんは自分の手作りごはんを美味しく食べてもらうのが大好きだ。ニコニコしながら自分の食事を後回しにして配膳に回っている。
思い思いにおにぎりや味噌汁、惣菜を食す皆の中で、俺は梅ジソのおにぎりをひとつ取った。
はぐっと一口。うっま。やはり〝ささみやび〟最高。梅ジソもさすが日本の誇るふりかけ代表。
咀嚼しながら齧った跡を見る。
「むううう……」
やはり、薄っすら米が光っている。だが今回は米だけじゃなかった。味噌汁も光っている。ということはやはり、ど田舎村の水だと思う。
この村の飲料水も山から伸びてる水脈の湧水らしいから、土地に何か秘密があるのだろう。
この辺は調べてみるのも面白そうだ。
その夜、予想通り嵐が来て皆は軽めの夕飯を取ってそのまま早く寝ついたが、男爵は領内の仕事をしていた。
俺は男爵に時間を貰って、この国に帰化する意志とピナレラちゃんのことを話した。
「もし、このまま俺が彼女の面倒を見ることになったら、どう思いますか?」と尋ねた。
男爵は少し考えた後、深く頷いて答えてくれた。
「ユウキ君。まだ君たちと出会って数日だけど、私や村の人たちは君を見ていた。君ならピナレラをしっかり守ってくれると信じているよ。君なら安心して任せられる」
男爵の言葉に安堵した。同時にこの村で託された新たな役割に責任を感じた。
ピナレラちゃんにとっての良き兄、良き父として、何よりこの村の一員として。
この異世界のど田舎村での日々は、多くの挑戦と困難を伴うのは間違いない。
でも、それ以上に得られる喜びや人々との絆、ピナレラちゃんの成長を見守れる幸運、何より大好きなばあちゃんと一緒で、遠縁だが村長やベンさんも一緒だ。何を恐れることがあるだろうか。
そう、俺はこの世界に留まることを選んだ。
この地で、新たな家族を迎えてともに未来を築いていく。それが俺の新しい人生、新しい章の始まりなのだ。
今は屋敷を揺らしている嵐も、明日になれば止んで晴れるだろう。
明日こそは朝一番でピナレラちゃんに俺たちが〝家族〟になることを伝えよう。喜んでくれるといいんだが……
だが、俺の心にはまだ元カノ穂波の影がちらついていた。
ああ、次元の狭間にいた虹色キラキラに光る宇宙人三人組よ。異世界転移の衝撃で過去の記憶を元カノだけ都合よく吹き飛ばしてほしかった!
俺はきっと、どれだけ異世界に馴染んでも元カノを忘れられないんだろうな……女々しい男と言うなら言え。
……と振られた余韻にまだまだ浸っていた俺だったが、そんな自己憐憫が吹き飛ばされるような出会いが訪れたのは、嵐が過ぎ去った翌日のことだった。
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