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守護者と立ち向かう新ループ

再びの巻き戻り2

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 再び時間が巻き戻っても、マーゴットの環境は変わっていなかった。

 学園に入学する前に両親は流行り病で相次いで亡くなっている。

 バルカスはやはり、王家から公爵家への支援金等を横領し着服して、取り巻きたちと良くない遊びに使っている。

 そろそろ、あの平民の女生徒ポルテを寵愛し始める頃だろう。



◇◇◇



 少し経って、マーゴットに神殿から書状が届いた。

「えっ。カーナが直接この国に来たの!?」

 近年は、神殿の護摩の炎の中にぼんやりとした魔力の塊でしか降臨しなかった守護者が、直接生身の身体でカレイド王国を訪れているという。

 慌ててすっ飛んでいくと、久し振りに見る黒髪と琥珀の瞳の優美な青年が、神官長と応接間でお茶を飲んでいた。

「カーナ! カーナ、カーナ、会いたかった!」
「マーゴット。相変わらずお転婆だなあ」

 身につけたはずの淑女教育の成果が頭から吹っ飛んだマーゴットは、子供の頃のように青年に抱きついた。
 彼はいつも甘く瑞々しい桃のような香りがする。

「おっと。婚約者がいる子をよその男が抱き締めるのは良くないね」
「あ」

 黒髪の青年はその場で仔馬サイズの一角獣に変わった。
 一角獣はすぐにまた人の形になる。
 ただし、今度は黒髪と琥珀の瞳の、マーゴットと同い年ぐらいの美しい少女になった。

 竜人族と一角獣人族のハーフ、ハイヒューマンのカーナは男女どちらの姿にもなれる。

「女の子の姿、久し振りに見たわ。バルカスが聞いたら悔しがるでしょうね」

 幼い頃、マーゴットは青年姿のカーナが好きだった。

 従兄弟のバルカスは、少女の姿のカーナに一目惚れした。

 マーゴットとバルカスは同じ相手を好きになった同士でもあったのだ。


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