41 / 62
お野菜モンスターの元凶
しおりを挟む
「ぜんぶ王妃が悪いってのは確定なのねえ」
「……王妃の所業は他にもありそうよ」
姉妹が研究室の壁に貼られている、タイアド王国の国内地図を指す。
赤ペンでバツ印が付いている場所は、お野菜モンスターが大発生した地域だ。
姉妹がタイアド王国入りして冒険者ギルドで受けた指名依頼が、国内で大繁殖していたお野菜モンスターの調査だった。
特に妹のハスミンは占い師で、ペンデュラムを使った探索スキルが使える。
繁殖の原因を解明してほしいというのが、ここ冒険者ギルドのタイアド王国王都支部からの依頼である。
国内はあらかた調査し終わって、ちょうどマリオンが研究学園を追放される前後にお野菜モンスターの出現は収束していた。
王族として、春から騎士団を率いて討伐任務にあたっていたエドアルド王子が目ぼしい繁殖地を叩き終わったからだ。
ところが、ここに来てまた続々と国内で大繁殖を始めつつあるときた。
机の上にあらかじめ想定される発生原因を書き出した紙を置いて、ハスミンは一件一件、原因をチェックしていった。
使うペンデュラムのトップには究極の浄化作用を持つアダマンタイトの珠を用い、先端部には聖女と聖者の祝福を受けたミスラル銀を使っている。
一般的なペンデュラムでは、人の悪意や邪気の絡む現象をチェックするとペンデュラム自体が穢れてすぐ使い物にならなくなるが、これはいつでも常に浄化された安全な護符でもある。
何ならこのペンデュラムだけで物品の浄化や邪気抜き、魔力チャージもできるぐらいだ。
お野菜モンスターは自然発生か? ノー。
元からタイアド王国の国内に生息していたものか? ノー。
人為的に仕掛けられたものか? イエス。
仕掛け人は国内の人物か? 国外の人物か? →国内人物である。
それは王族か? 貴族か? 平民か? →王族。
「国王、王太子、エド君、王妃、王弟二人……うん、やっぱり王妃ね」
「え、この国の王妃がお野菜モンスターを繁殖させてたってこと? なんで?」
王妃が自国に魔物を繁殖させる理由がわからない。
「お野菜モンスター出現時期は今年の春から。以降、エドが討伐に出てる間ずっと国内に出没し続けてたそうよ。……まあ、野菜だから畑や野原限定なんだけど」
「ピュイッ」
研究室の作業台の上のカゴの中に、マリオンたちが採集してきたお野菜モンスターが山と積まれている。
草食の綿毛竜のルミナスは、太めの顔のあるズッキーニをおやつ代わりに齧っていた。
「時期を考えると、エドとマリオンを会わせたくなかったのかしら」
「それもあるだろうし、エド君を王都から追い払いたくてわざと魔物を繁殖させたんじゃない? あの子、剣バカなとこあるから子供の頃から喜んで討伐任務に出てたもの」
姉妹が今後を話し合っている間にマリオンは今朝の新聞と地図を交互に見ては考え込んでいた。
(エド、今度はタイアドの第7号ダンジョンに行ってるのか。その近隣でもまたお野菜モンスター再発……)
新聞には『今日のエドアルド王子』コーナーがあって、人気王子の活動報告代わりになっている。
先日まで自領の鉱山でミスラルスライム相手に戦闘を続けてようやく帰還したかと思えば、またすぐ王都から出立してしまった。
(エドアルド王子、キングミスラルスライム相手に名刀匠の剣を数振り潰す、か)
マリオンは魔導具師だから、刀鍛冶のような武器は作れない。既にある武器に仕掛けを施すのは得意なのだが。
ただ、マリオンは錬金魔導具師といって、魔導具に組み込む魔石や鉱物、あるいは魔法樹脂という魔力で作る透明な樹脂に、錬金スキルを用いて様々な属性付与する能力があった。
(本当ならじいじから貰ったアダマンタイトを使って、エドに錬金剣を作りたかったんだよね。タイアドは芸術の国だから、装飾のカッコいい剣を調達してさ)
研究学園にはエドアルド王子も学生として通学すると聞いていたから、一緒に開発していこうと思ったら、あの偽王子からの虐げと追放だ。本当にツイてない。
(じいじは先に国に帰りなさいって言ってくれたけど……)
すれ違ってばかりだし、この間の大衆浴場でも素知らぬ振りでエドアルド王子とはほとんど話もできなかった。
(エド、すごく格好良くなってた。ああして間近で見ると偽王子とは全然顔つきも違かったよね。もっと真面目に対応してたら今頃とっくにエドと再会できてたのかな……)
とりあえずもうちょっとだけ、マリオンは知らんぷりを続けるつもりでいる。
「……王妃の所業は他にもありそうよ」
姉妹が研究室の壁に貼られている、タイアド王国の国内地図を指す。
赤ペンでバツ印が付いている場所は、お野菜モンスターが大発生した地域だ。
姉妹がタイアド王国入りして冒険者ギルドで受けた指名依頼が、国内で大繁殖していたお野菜モンスターの調査だった。
特に妹のハスミンは占い師で、ペンデュラムを使った探索スキルが使える。
繁殖の原因を解明してほしいというのが、ここ冒険者ギルドのタイアド王国王都支部からの依頼である。
国内はあらかた調査し終わって、ちょうどマリオンが研究学園を追放される前後にお野菜モンスターの出現は収束していた。
王族として、春から騎士団を率いて討伐任務にあたっていたエドアルド王子が目ぼしい繁殖地を叩き終わったからだ。
ところが、ここに来てまた続々と国内で大繁殖を始めつつあるときた。
机の上にあらかじめ想定される発生原因を書き出した紙を置いて、ハスミンは一件一件、原因をチェックしていった。
使うペンデュラムのトップには究極の浄化作用を持つアダマンタイトの珠を用い、先端部には聖女と聖者の祝福を受けたミスラル銀を使っている。
一般的なペンデュラムでは、人の悪意や邪気の絡む現象をチェックするとペンデュラム自体が穢れてすぐ使い物にならなくなるが、これはいつでも常に浄化された安全な護符でもある。
何ならこのペンデュラムだけで物品の浄化や邪気抜き、魔力チャージもできるぐらいだ。
お野菜モンスターは自然発生か? ノー。
元からタイアド王国の国内に生息していたものか? ノー。
人為的に仕掛けられたものか? イエス。
仕掛け人は国内の人物か? 国外の人物か? →国内人物である。
それは王族か? 貴族か? 平民か? →王族。
「国王、王太子、エド君、王妃、王弟二人……うん、やっぱり王妃ね」
「え、この国の王妃がお野菜モンスターを繁殖させてたってこと? なんで?」
王妃が自国に魔物を繁殖させる理由がわからない。
「お野菜モンスター出現時期は今年の春から。以降、エドが討伐に出てる間ずっと国内に出没し続けてたそうよ。……まあ、野菜だから畑や野原限定なんだけど」
「ピュイッ」
研究室の作業台の上のカゴの中に、マリオンたちが採集してきたお野菜モンスターが山と積まれている。
草食の綿毛竜のルミナスは、太めの顔のあるズッキーニをおやつ代わりに齧っていた。
「時期を考えると、エドとマリオンを会わせたくなかったのかしら」
「それもあるだろうし、エド君を王都から追い払いたくてわざと魔物を繁殖させたんじゃない? あの子、剣バカなとこあるから子供の頃から喜んで討伐任務に出てたもの」
姉妹が今後を話し合っている間にマリオンは今朝の新聞と地図を交互に見ては考え込んでいた。
(エド、今度はタイアドの第7号ダンジョンに行ってるのか。その近隣でもまたお野菜モンスター再発……)
新聞には『今日のエドアルド王子』コーナーがあって、人気王子の活動報告代わりになっている。
先日まで自領の鉱山でミスラルスライム相手に戦闘を続けてようやく帰還したかと思えば、またすぐ王都から出立してしまった。
(エドアルド王子、キングミスラルスライム相手に名刀匠の剣を数振り潰す、か)
マリオンは魔導具師だから、刀鍛冶のような武器は作れない。既にある武器に仕掛けを施すのは得意なのだが。
ただ、マリオンは錬金魔導具師といって、魔導具に組み込む魔石や鉱物、あるいは魔法樹脂という魔力で作る透明な樹脂に、錬金スキルを用いて様々な属性付与する能力があった。
(本当ならじいじから貰ったアダマンタイトを使って、エドに錬金剣を作りたかったんだよね。タイアドは芸術の国だから、装飾のカッコいい剣を調達してさ)
研究学園にはエドアルド王子も学生として通学すると聞いていたから、一緒に開発していこうと思ったら、あの偽王子からの虐げと追放だ。本当にツイてない。
(じいじは先に国に帰りなさいって言ってくれたけど……)
すれ違ってばかりだし、この間の大衆浴場でも素知らぬ振りでエドアルド王子とはほとんど話もできなかった。
(エド、すごく格好良くなってた。ああして間近で見ると偽王子とは全然顔つきも違かったよね。もっと真面目に対応してたら今頃とっくにエドと再会できてたのかな……)
とりあえずもうちょっとだけ、マリオンは知らんぷりを続けるつもりでいる。
13
お気に入りに追加
577
あなたにおすすめの小説
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
【完結】転生じぃちゃん助けた子犬に喰われる!?
湊未来
BL
『ななな、なんで頭にウサギの耳が生えているんだぁぁぁ!!!!』
時の神の気まぐれなお遊びに巻き込まれた哀れな男が、獣人国アルスター王国で、絶叫という名の産声をあげ誕生した。
名を『ユリアス・ラパン』と言う。
生を全うし天へと召された爺さんが、何の因果か、過去の記憶を残したまま、兎獣人へと転生してしまった。
過去の記憶を武器にやりたい放題。無意識に、周りの肉食獣人をも魅了していくからさぁ大変!
果たして、兎獣人に輪廻転生してしまった爺さんは、第二の人生を平和に、のほほんと過ごす事が出来るのだろうか?
兎獣人に異様な執着を見せる狼獣人✖️爺さんの記憶を残したまま輪廻転生してしまった兎獣人のハートフルBLコメディ。時々、シリアス。
※BLは初投稿です。温かな目でご覧頂けると幸いです。
※R-18は出てきません。未遂はあるので、保険でR-15つけておきます。
※男性が妊娠する世界観ですが、そう言った描写は出てきません。
人生に脇役はいないと言うけれど。
月芝
BL
剣? そんなのただの街娘に必要なし。
魔法? 天性の才能に恵まれたごく一部の人だけしか使えないよ、こんちくしょー。
モンスター? 王都生まれの王都育ちの塀の中だから見たことない。
冒険者? あんなの気力体力精神力がズバ抜けた奇人変人マゾ超人のやる職業だ!
女神さま? 愛さえあれば同性異性なんでもござれ。おかげで世界に愛はいっぱいさ。
なのにこれっぽっちも回ってこないとは、これいかに?
剣と魔法のファンタジーなのに、それらに縁遠い宿屋の小娘が、姉が結婚したので
実家を半ば強制的に放出され、住み込みにて王城勤めになっちゃった。
でも煌びやかなイメージとは裏腹に色々あるある城の中。
わりとブラックな職場、わりと過激な上司、わりとしたたかな同僚らに囲まれて、
モミモミ揉まれまくって、さあ、たいへん!
やたらとイケメン揃いの騎士たち相手の食堂でお仕事に精を出していると、聞えてくるのは
あんなことやこんなこと……、おかげで微妙に仕事に集中できやしねえ。
ここにはヒロインもヒーローもいやしない。
それでもどっこい生きている。
噂話にまみれつつ毎日をエンジョイする女の子の伝聞恋愛ファンタジー。
王子様と魔法は取り扱いが難しい
南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。
特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。
※濃縮版
帝国皇子のお婿さんになりました
クリム
BL
帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。
そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。
「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」
「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」
「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」
「うん、クーちゃん」
「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」
これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる