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side 王子 王妃の王子失脚作戦は失敗!
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エドアルド王子とダリオンが退室した後の謁見室では。
「ち、父上、エドアルドが!」
「ああ。良い顔になっていた。いっぱしの男の顔であった……!」
甘えのなかなか抜けない次男がようやく大人への階段を登り始めたと、国王と王太子は手に手を取り合って大喜びだ。
タイアド王族の彼らは金髪とエメラルド色の瞳で、甘い顔立ちの美貌になるか、過去に取り入れた他国の王族の血が出ると端正なイケメン顔になるかが多い。今代の国王と王太子はどちらかといえば後者寄りだ。
あの次男は甘い顔立ちの美形の多いタイアド王族の中では、愛嬌のある笑顔の可愛らしい子だった。亡くなった側室の母親似なのだ。
子供の頃から剣ばっかり振っていて、いつの間にか若干18歳にして騎士ランクと冒険者ランクをBまで上げた有望な剣士だ。
ただ、若干頭の中身が緩いというか、お花畑の住人ぽいところだけが心配だった。
『おれはね、前世からの運命のひとがいるんです! そのひとのために生まれてきたんです!』
最初は父親も異母兄の王太子も誰も本気にしてなかった。
ところが先ほど去ったばかりのダリオンが「そういうこともある」と転生者の情報を教えてくれて以来、「そんなものか」とこれまた緩く受け入れたという経緯がある。
「何をふざけたことを! あの者、あなたから王太子の座を奪うと言わんばかりではありませんか!」
怒る王妃を見返す国王と王太子の目は冷たい。
すべての元凶(推定)が何を言うか。
「父上、私はマリオン殿と研究学園の実態調査に動きますのでお先に失礼します」
「うむ、頼んだぞ」
さて、謁見室に残るのは国王と王妃のみだが。
「妃や。随分と手の込んだ真似をしてくれたものだ。お前の謀のせいでこの国と、マリオン殿やダリオン殿の国とは戦争が始まるやもしれぬ」
「は? たかが魔導具師と冒険者ギルドのギルドマスターに何ができるというのです?」
「お前はエドアルドを失脚させたいから、あの子が招聘した魔導具師殿を貶めたのだな?」
「……その通りですわ」
王妃はすんなり認めた。
「新聞の告発記事を読む限り、学園の教師たちの買収までして随分と複雑な工作をしたと見える。だがな、そこまでしておきながら、なぜマリオン殿のことを調べなかったのだ?」
「第二王子が贔屓してるだけの魔導具師でしょう? しかもまだ17歳だなんて、どうせ自分がお気に入りにしてるだけの実力もない者なのでしょう?」
なるほど、そういう思い込みがあったから、マリオンを取るに足らない人物として虐げ、追放させる工作に抵抗がなかったわけだ。
「マリオン殿と祖父のダリオン殿は、アケロニア王国のブルー男爵家の一族だ。お前にはブルー商会と言ったほうがわかるかの?」
「ブルー商会……まさか……」
王妃の顔色が変わった。
そんな王妃は国王の親戚だ。同じ金髪碧眼でこちらは代々続くタイアド王族らしい甘い美貌の持ち主だが、傲慢で自分勝手なタイアド王族の良くない性格が顕著である。
「そう。お前が好んで集めている若返りと美貌維持の魔力を込めた宝石や魔石、美容用魔導具や化粧品を販売している商会の一族だ」
ブルー商会は総合商社で多種多様な商品を販売しているが、伝統的に魔導具や化粧品の開発と販売が特に強い。
一族には魔導具師が多く、マリオンは近年若手として頭角を表し始めた人物だ。
「マリオン殿は錬金魔導具師という、魔導具師の上位称号とスキルの持ち主だ。ほれ、お前も顔や手の染みが消えたと喜んでいた化粧水があっただろう。ああいう商品を開発するのが得意なのだよ」
「うそ……だ、だとしたら、わたくしのしたことは……」
一族自慢の息子を虐げられたブルー商会、いやブルー男爵家が今後、タイアド王家にどう出るか。
王妃に美容用の魔導具や化粧品を販売しないだけならまだ良い。
問題は、この芸術と虚飾の大国、タイアド王国への販売停止措置を取りかねない事態ということだ。
「妃よ。お前はわしが許可するまで自室で謹慎しているように。反省しておるなら後から遣わす尋問官に素直に己のやったことを白状することだ」
「……わたくしが供述することで、息子の立場は悪くなりませんか」
即ち、正妃の息子である王太子の、次期国王の座が揺らがないかの心配だ。
「次期国王はお前の産んだ第一王子、それが揺らぐことはない。そもそも側室腹の第二王子エドアルドは数年以内に臣籍降下の予定だった。最初から、お前の息子の地位は盤石だったのだよ。妃や」
「そんな……では、わたくしのしたことは」
すべて無駄だった。ただ若い有望な魔導具師を不当に貶めて、関係者の心象を地の底まで落としただけだ。
「お前はひとりの有望な若者のキャリアを阻害し歪めた。マリオン殿の属すブルー男爵家、ブルー商会、それに彼をこの国に派遣する許可を出してくれたアケロニア王国への賠償……まったく、頭が痛いわい」
もっとも、大金にはなるだろうがこの国は豊かなので大して懐は痛まない。
ただし、慰謝料も賠償もすべてこの元凶の王妃の予算から出させる。
何かとトラブルメーカーの王妃だが、数年ぐらい大人しくしてもらわねば割に合わないといったところだ。
「ち、父上、エドアルドが!」
「ああ。良い顔になっていた。いっぱしの男の顔であった……!」
甘えのなかなか抜けない次男がようやく大人への階段を登り始めたと、国王と王太子は手に手を取り合って大喜びだ。
タイアド王族の彼らは金髪とエメラルド色の瞳で、甘い顔立ちの美貌になるか、過去に取り入れた他国の王族の血が出ると端正なイケメン顔になるかが多い。今代の国王と王太子はどちらかといえば後者寄りだ。
あの次男は甘い顔立ちの美形の多いタイアド王族の中では、愛嬌のある笑顔の可愛らしい子だった。亡くなった側室の母親似なのだ。
子供の頃から剣ばっかり振っていて、いつの間にか若干18歳にして騎士ランクと冒険者ランクをBまで上げた有望な剣士だ。
ただ、若干頭の中身が緩いというか、お花畑の住人ぽいところだけが心配だった。
『おれはね、前世からの運命のひとがいるんです! そのひとのために生まれてきたんです!』
最初は父親も異母兄の王太子も誰も本気にしてなかった。
ところが先ほど去ったばかりのダリオンが「そういうこともある」と転生者の情報を教えてくれて以来、「そんなものか」とこれまた緩く受け入れたという経緯がある。
「何をふざけたことを! あの者、あなたから王太子の座を奪うと言わんばかりではありませんか!」
怒る王妃を見返す国王と王太子の目は冷たい。
すべての元凶(推定)が何を言うか。
「父上、私はマリオン殿と研究学園の実態調査に動きますのでお先に失礼します」
「うむ、頼んだぞ」
さて、謁見室に残るのは国王と王妃のみだが。
「妃や。随分と手の込んだ真似をしてくれたものだ。お前の謀のせいでこの国と、マリオン殿やダリオン殿の国とは戦争が始まるやもしれぬ」
「は? たかが魔導具師と冒険者ギルドのギルドマスターに何ができるというのです?」
「お前はエドアルドを失脚させたいから、あの子が招聘した魔導具師殿を貶めたのだな?」
「……その通りですわ」
王妃はすんなり認めた。
「新聞の告発記事を読む限り、学園の教師たちの買収までして随分と複雑な工作をしたと見える。だがな、そこまでしておきながら、なぜマリオン殿のことを調べなかったのだ?」
「第二王子が贔屓してるだけの魔導具師でしょう? しかもまだ17歳だなんて、どうせ自分がお気に入りにしてるだけの実力もない者なのでしょう?」
なるほど、そういう思い込みがあったから、マリオンを取るに足らない人物として虐げ、追放させる工作に抵抗がなかったわけだ。
「マリオン殿と祖父のダリオン殿は、アケロニア王国のブルー男爵家の一族だ。お前にはブルー商会と言ったほうがわかるかの?」
「ブルー商会……まさか……」
王妃の顔色が変わった。
そんな王妃は国王の親戚だ。同じ金髪碧眼でこちらは代々続くタイアド王族らしい甘い美貌の持ち主だが、傲慢で自分勝手なタイアド王族の良くない性格が顕著である。
「そう。お前が好んで集めている若返りと美貌維持の魔力を込めた宝石や魔石、美容用魔導具や化粧品を販売している商会の一族だ」
ブルー商会は総合商社で多種多様な商品を販売しているが、伝統的に魔導具や化粧品の開発と販売が特に強い。
一族には魔導具師が多く、マリオンは近年若手として頭角を表し始めた人物だ。
「マリオン殿は錬金魔導具師という、魔導具師の上位称号とスキルの持ち主だ。ほれ、お前も顔や手の染みが消えたと喜んでいた化粧水があっただろう。ああいう商品を開発するのが得意なのだよ」
「うそ……だ、だとしたら、わたくしのしたことは……」
一族自慢の息子を虐げられたブルー商会、いやブルー男爵家が今後、タイアド王家にどう出るか。
王妃に美容用の魔導具や化粧品を販売しないだけならまだ良い。
問題は、この芸術と虚飾の大国、タイアド王国への販売停止措置を取りかねない事態ということだ。
「妃よ。お前はわしが許可するまで自室で謹慎しているように。反省しておるなら後から遣わす尋問官に素直に己のやったことを白状することだ」
「……わたくしが供述することで、息子の立場は悪くなりませんか」
即ち、正妃の息子である王太子の、次期国王の座が揺らがないかの心配だ。
「次期国王はお前の産んだ第一王子、それが揺らぐことはない。そもそも側室腹の第二王子エドアルドは数年以内に臣籍降下の予定だった。最初から、お前の息子の地位は盤石だったのだよ。妃や」
「そんな……では、わたくしのしたことは」
すべて無駄だった。ただ若い有望な魔導具師を不当に貶めて、関係者の心象を地の底まで落としただけだ。
「お前はひとりの有望な若者のキャリアを阻害し歪めた。マリオン殿の属すブルー男爵家、ブルー商会、それに彼をこの国に派遣する許可を出してくれたアケロニア王国への賠償……まったく、頭が痛いわい」
もっとも、大金にはなるだろうがこの国は豊かなので大して懐は痛まない。
ただし、慰謝料も賠償もすべてこの元凶の王妃の予算から出させる。
何かとトラブルメーカーの王妃だが、数年ぐらい大人しくしてもらわねば割に合わないといったところだ。
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