上 下
8 / 62

陰謀に巻き込まれてたみたいです

しおりを挟む
「「王子様の偽物!?」」

 研究学園から友達の綿毛竜コットンドラゴンと逃げ出してきた経緯を聞いて、ハスミンとガブリエラ姉妹は声をあげて驚いた。

「しー、しー! 他の人に聞こえちゃうでしょ!」

 マリオンはここに来るまでの経緯をふたりに簡単に説明した。

 ハスミンからルミナスを受け取ってもふりながら、まずは国ひとつ跨いだ同盟国から、魔導具師の自分がここ、タイアド王国に招聘される経緯を。

 特別講師として招かれたはずが、学園に行ってみると生徒と勘違いされた上に、職員寮にも学生寮の利用許可も下りなくて、倉庫代わりの小屋にルミナスとこっそり隠れて住んでいたこと。

 赴任期間中、講義を開いたが教室には誰も生徒が参加せず、参加しようとした生徒がいれば王子の率いる生徒会長が阻害したこと。

 研究学園を通じて発表したマリオンが新規開発した魔導具師の設計図が、なぜか途中で盗まれて、この王都の魔導具師ギルドの別の魔導具師たちの成果として発表されることが続いた、などだ。

「いちばん酷かったのは、食堂を使わせてくれなかったことだよ……仕方ないからこっそり抜け出して冒険者登録して食費を稼いでたんだ」
「ピューイッ」

 これら不遇な扱いの原因をマリオンなりに調べてみたのだが、どうもよくわからない。
 マリオンを研究学園に招いた当のエドアルド王子がマリオンをまったく知らず、よくわからない言いがかりや、理不尽な扱いばかりしてくる。
 本人は取り付く島もないし、かといって責任者の学園長は長期で留守にしている。
 留守を預かる副学園長は王子たちとグルで、マリオンを虐げる側。

「それ、今年の春からでしょ? なんですぐ逃げてこないの」
「せめて故郷の家族に助けを求めるとか」

 と姉妹に叱られるも、マリオンにだって言い分はある。

「研究学園、お金かけてるだけあって設備は良かったんだー。お陰で研究は捗ったよ」
「もう。技術屋はこれだから……。その情熱を陰謀の解明に使いなさいよね!」
「陰謀?」

 とルミナスをもふりながら一緒に小首を傾げると、ガブリエラが食堂内のラックから新聞を持ってきた。

「あなたの知り合いだという王子は今、魔物の討伐任務に就いてるのよ。王族だから責任者ね。このマンドラゴラもどきを含めた植物の魔物が広がってる地域を片っ端から巡ってる」

 新聞を受け取ると、確かにエドアルド第二王子の活躍が日報として掲載されている。

「ちょうど春頃から。マリオン君がこの国に来たのもその頃でしょ?」
「……エドが。でも、だって、そんなこと手紙にも全然書いてなかったのに……」

 実はマリオンは筆まめで、この国に来てからも週一で王宮宛に手紙を書いているのだ。
 だが、言われてみれば研究学園に入ってから返事は来ていない。相手は王子だし、何かと忙しいと聞いていたからそんなものだと軽く考えていた。

 わざわざ他国からマリオンを呼び寄せるぐらいだから、時間ができたときにお茶を飲むぐらいできるだろうと思っていたら、春からあっという間に冬になってしまった。

 時間が経つのは早いなー。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

嫌われ者だった俺が転生したら愛されまくったんですが

夏向りん
BL
小さな頃から目つきも悪く無愛想だった篤樹(あつき)は事故に遭って転生した途端美形王子様のレンに溺愛される!

【第1部完結】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~

ちくわぱん
BL
【11/28第1部完結・12/8幕間完結】(第2部開始は年明け後の予定です)ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

王子様と魔法は取り扱いが難しい

南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。 特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。 ※濃縮版

処理中です...