187 / 216
番外編 異世界板前ゲンジ、ルシウス君と再会す
カレーは奥深いのです
しおりを挟む
次は海のある他領から新鮮な海老を手配し、ストックしてあった分を使って海老のココナッツカレーだ。
ヨシュア坊ちゃんがカボチャ好きなので、一緒にカボチャも加えることにする。
こちらはマサラグレイビーと、今回はニンニクと生姜を同量すりおろして炒め合わせる。
本来ならタマリンドという酸っぱい実を酸味付けに使うが見当たらなかったので、トマトで代用する。
野菜カレーと同じようにトマトの水分を飛ばす感覚で炒めた後、カボチャを炒め、ターメリック、クミン、コリアンダー、黒胡椒、シナモン少々を加えて馴染ませるように炒める。
あとは別のフライパンでバターで炒めておいた尻尾だけ残して剥いた海老と合わせて鍋へ。
塩を足し、ココナッツミルクを入れて加熱。海老はあらかじめ炒めてあるし、カボチャも火の通りが早いので煮込み時間は短い。
カボチャを入れたせいかもったりした感触になったので厨房にあった野菜のスープストックで少々伸ばした。
仕上げのテンパリングは、オイル少々にマスタードシードと、アジョワンシードという爽やかな風味のホールスパイスで香味を引き出して鍋へ投入、軽くかき混ぜて出来上がり。
「あ、味見……味見を……オヤジさあん……」
ルシウスや他の料理人たちに縋る仔犬のような潤んだ瞳で見つめられたが、ここはあえて心を鬼にして次の料理に取り掛かった。
何せ作る量が多いのだ。時間も足りなくなってしまう。
主食はイースト抜きの全粒粉入りの小麦粉でチャパティという丸い平焼きパンをひたすら焼く。
ゲンジがインド人主婦に習ったところ、ナンなどの発酵パンは腹が張りやすいので現地では消化に良いチャパティが一般的らしい。
こちらは口頭で説明するとすぐ料理人たちが理解してくれたので任せることにする。
「じゃあ次はほうれん草のカレーね」
茹でたほうれん草をペースト状にして加えたカレーだ。
ルシウスに聞いてみると、ほうれん草ペーストを使ったポタージュはアケロニア王国でも飲むらしいのであえてメニューに加えてみた。
作り方の手順は他のカレーとほぼ同じ。
今回はニンニクは少し、生姜はたっぷり加えて味の中核に据える。どちらもすり下ろして、マサラグレイビーと炒めてトマトを加えるところまでは共通だ。
スパイスはクミン、コリアンダー、唐辛子のパウダーを。更に塩。
茹で汁と一緒にペーストにしたほうれん草を加えて数分煮れば完成だ。今回は特にスパイスのテンパリングは行わない。
王都近郊の他領から取り寄せてもらったフレッシュチーズはよく水切りして一口大にカットした後、油で軽く表面を焼いて皿へ。
出来上がったほうれん草カレーをその上から。チーズはカレーと一緒に煮ると溶けてしまうので別々調理にした。
「オヤジさん……オヤジさあん……」
じーっと訴えるようなうるうるのお目々で見つめられて、ゲンジは陥落した。
(ああ、これでココ村支部にいたときもよく負けてたんだよね)
「ちょっとだけだよ。ひと口ずつね」
器にルシウスや料理人たちでティースプーンひとすくいずつ分になるよう、ほうれん草カレーを盛ってやった。
「は、初めて食べるあじ!」
「これに本番は焼きチーズが加わるのか……」
「は、早く賄いの時間にならないかな!」
評判は上々の様子。
「さて、主食はチャパティがあるけどライスも用意しようか」
調べてみると、タイ米のジャスミンライスやインド米のバスティカライスと同じ、粘りの少ない長米種はアケロニア王国にもあった。
ビリヤニのように別に作ったカレーと層にして炊き上げるピラフを作っても良かったが、ここはあえて単純な炊きご飯にしてみよう。
作り方は簡単で、スパイスの女王と呼ばれるホールのカルダモンを軽く潰して、レモンスライスと一緒に鍋で炊くだけだ。
炊き上がり蓋を開けると、長米種の香りとカルダモン、レモンの爽やかな香気が立ちのぼる。
レモンライスはお好みで。
「さて、あとは……」
やはりメインは、リースト伯爵領一の特産品、鮭を使いたい。
ヨシュア坊ちゃんがカボチャ好きなので、一緒にカボチャも加えることにする。
こちらはマサラグレイビーと、今回はニンニクと生姜を同量すりおろして炒め合わせる。
本来ならタマリンドという酸っぱい実を酸味付けに使うが見当たらなかったので、トマトで代用する。
野菜カレーと同じようにトマトの水分を飛ばす感覚で炒めた後、カボチャを炒め、ターメリック、クミン、コリアンダー、黒胡椒、シナモン少々を加えて馴染ませるように炒める。
あとは別のフライパンでバターで炒めておいた尻尾だけ残して剥いた海老と合わせて鍋へ。
塩を足し、ココナッツミルクを入れて加熱。海老はあらかじめ炒めてあるし、カボチャも火の通りが早いので煮込み時間は短い。
カボチャを入れたせいかもったりした感触になったので厨房にあった野菜のスープストックで少々伸ばした。
仕上げのテンパリングは、オイル少々にマスタードシードと、アジョワンシードという爽やかな風味のホールスパイスで香味を引き出して鍋へ投入、軽くかき混ぜて出来上がり。
「あ、味見……味見を……オヤジさあん……」
ルシウスや他の料理人たちに縋る仔犬のような潤んだ瞳で見つめられたが、ここはあえて心を鬼にして次の料理に取り掛かった。
何せ作る量が多いのだ。時間も足りなくなってしまう。
主食はイースト抜きの全粒粉入りの小麦粉でチャパティという丸い平焼きパンをひたすら焼く。
ゲンジがインド人主婦に習ったところ、ナンなどの発酵パンは腹が張りやすいので現地では消化に良いチャパティが一般的らしい。
こちらは口頭で説明するとすぐ料理人たちが理解してくれたので任せることにする。
「じゃあ次はほうれん草のカレーね」
茹でたほうれん草をペースト状にして加えたカレーだ。
ルシウスに聞いてみると、ほうれん草ペーストを使ったポタージュはアケロニア王国でも飲むらしいのであえてメニューに加えてみた。
作り方の手順は他のカレーとほぼ同じ。
今回はニンニクは少し、生姜はたっぷり加えて味の中核に据える。どちらもすり下ろして、マサラグレイビーと炒めてトマトを加えるところまでは共通だ。
スパイスはクミン、コリアンダー、唐辛子のパウダーを。更に塩。
茹で汁と一緒にペーストにしたほうれん草を加えて数分煮れば完成だ。今回は特にスパイスのテンパリングは行わない。
王都近郊の他領から取り寄せてもらったフレッシュチーズはよく水切りして一口大にカットした後、油で軽く表面を焼いて皿へ。
出来上がったほうれん草カレーをその上から。チーズはカレーと一緒に煮ると溶けてしまうので別々調理にした。
「オヤジさん……オヤジさあん……」
じーっと訴えるようなうるうるのお目々で見つめられて、ゲンジは陥落した。
(ああ、これでココ村支部にいたときもよく負けてたんだよね)
「ちょっとだけだよ。ひと口ずつね」
器にルシウスや料理人たちでティースプーンひとすくいずつ分になるよう、ほうれん草カレーを盛ってやった。
「は、初めて食べるあじ!」
「これに本番は焼きチーズが加わるのか……」
「は、早く賄いの時間にならないかな!」
評判は上々の様子。
「さて、主食はチャパティがあるけどライスも用意しようか」
調べてみると、タイ米のジャスミンライスやインド米のバスティカライスと同じ、粘りの少ない長米種はアケロニア王国にもあった。
ビリヤニのように別に作ったカレーと層にして炊き上げるピラフを作っても良かったが、ここはあえて単純な炊きご飯にしてみよう。
作り方は簡単で、スパイスの女王と呼ばれるホールのカルダモンを軽く潰して、レモンスライスと一緒に鍋で炊くだけだ。
炊き上がり蓋を開けると、長米種の香りとカルダモン、レモンの爽やかな香気が立ちのぼる。
レモンライスはお好みで。
「さて、あとは……」
やはりメインは、リースト伯爵領一の特産品、鮭を使いたい。
10
お気に入りに追加
553
あなたにおすすめの小説
最弱の荷物持ちは謎のスキル【証券口座】で成り上がる〜配当で伝説の武器やスキルやアイテムを手に入れた。それでも一番幸せなのは家族ができたこと〜
k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
※以前投稿していた作品を改稿しています。
この世界のお金は金額が増えると質量は重くなる。そのため枚数が増えると管理がしにくくなる。そのため冒険者にポーターは必須だ。
そんなポーターであるウォーレンは幼馴染の誘いでパーティーを組むが、勇者となったアドルにパーティーを追放されてしまう。
謎のスキル【証券口座】の力でお金の管理がしやすいという理由だけでポーターとなったウォーレン。
だが、その力はお金をただ収納するだけのスキルではなかった。
ある日突然武器を手に入れた。それは偶然お金で権利を購入した鍛冶屋から定期的にもらえる配当という謎のラッキースキルだった。
しかも権利を購入できるのは鍛冶屋だけではなかった。
一方、新しいポーターを雇った勇者達は一般のポーターとの違いを知ることとなる。
勇者達は周りに強奪されないかと気にしながら生活する一方、ウォーレンは伝説の武器やユニークスキル、伝説のアイテムでいつのまにか最強の冒険者ポーターとなっていた。
異世界修学旅行で人狼になりました。
ていぞう
ファンタジー
修学旅行中の飛行機が不時着。
かろうじて生きながらえた学生達。
遭難場所の海岸で夜空を見上げれば、そこには二つの月が。
ここはどこだろう?
異世界に漂着した主人公は、とあることをきっかけに、人狼へと変化を遂げる。
魔法の力に目覚め、仲間を増やし自らの国を作り上げる。
はたして主人公は帰ることができるのだろうか?
はるか遠くの地球へ。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~
TOYA
ファンタジー
~完結済み~
「この世界のルールはとても残酷だ。10歳の洗礼の試練は避ける事が出来ないんだ」
この世界で大人になるには、10歳で必ず発生する洗礼の試練で生き残らなければならない。
その試練はこの世界の最下層、魔物の巣窟にたった一人で放り出される残酷な内容だった。
生存率は1%未満。大勢の子供たちは成す術も無く魔物に食い殺されて行く中、
生き延び、帰還する為の魔法を覚えなければならない。
だが……魔法には帰還する為の魔法の更に先が存在した。
それに気がついた主人公、ロフルはその先の魔法を習得すべく
帰還せず魔物の巣窟に残り、奮闘する。
いずれ同じこの地獄へと落ちてくる、妹弟を救うために。
※あらすじは第一章の内容です。
―――
本作品は小説家になろう様 カクヨム様でも連載しております。
ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話
天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。
その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。
ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。
10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。
*本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています
*配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします
*主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。
*主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる