家出少年ルシウスNEXT

真義あさひ

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番外編 異世界板前ゲンジ、ルシウス君と再会す

本家本元、リースト伯爵家のサーモンパイ

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 その後はついに本家本元、リースト伯爵家のサーモンパイをいただいたゲンジだ。
 もうルシウスの父メガエリスは引退しているから、息子兄弟ふたりで調理してくれたと聞いてゲンジは感無量だった。

(兄貴と一緒に料理できて良かったなあ、坊主~)

 ココ村支部にいたとき、兄を深く慕う言動をよく見ていただけに感慨深かった。

 出てきたサーモンパイは小型で三角形。中身は鮭の他に温野菜やリゾットなど多種多様。
 赤ワインソースで食す、ご馳走パイだ。ついつい、勧められるままにお代わりしてしまったし、昼からワインも飲み過ぎてしまったゲンジだった。

「焼きたては本当に格別ですね。ココ村支部の食堂で僕も何度か作りましたが、こりゃあ格が違う」

 パイは小麦粉やバターが新鮮なら、どこの国、どこの地域で作って食べてもそう大差はない。
 バターの量や折り込む層の数による違いぐらいだ。

 だが、リースト伯爵家の鮭は、調理スキル特級ランク持ちのゲンジから見ても、とても質が良かった。
 鮮やかなサーモンピンクはもちろん、ふわっと柔らかいのに弾力があり、旨味と脂のバランスも良い。

「ココ村海岸のデビルズサーモンも美味しかったけど、ちょっと脂身が多かったよね」
「この鮭を食べて育ったなら、比べ物にならないよねえ」

 サーモンパイはさほど味の濃い料理でもないのだが、素材が新鮮で良いのと、味付けや鮭以外の具材、付け合わせや赤ワインソースとの組み合わせで驚くほどご馳走感の出る料理だ。

 ルシウスの兄嫁ブリジット夫人の隣で、甥っ子君ヨシュアも嬉しそうにサーモンパイを頬張っている。

「昔は保存食の一種で、もっと単純な料理だったそうでな。次第にソースを工夫したりで美味しくなってきたのだよ」

 とはルシウスの父、メガエリス前伯爵のお言葉である。

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