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番外編 異世界板前ゲンジ、ルシウス君と再会す

張り切っておやつを作りました

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「あたしがリンクでルシウス君におやつを送って、受け取り確認が取れたらまた次を送ればいいんじゃないかしら」

 ハスミンの説明に、なるほどとゲンジは頷いた。

 まずは揚げドーナツだ。
 ほんのり甘い小麦粉の生地を輪っかの形に揚げて、砂糖やシナモンシュガーをまぶしたり、チョコレートをコーティングしたり。

 お供の伝説級魔術師と聖女も甘いものは好きだったはずだから、とりあえず三人分。

 翌日、ゲンジが食堂に出勤すると、ハスミンから手紙を預かった。
 宛名はなくて、中にはメモが一枚。


『こういうのを待ってた!』


 そして大金貨が一枚。(約20万円)

「金なんかいいのになぁ。坊主ったら」
「あら、そのお金でどんどん送れってことでしょ?」
「あ、そうか!」

 冒険者ギルドにいると、羽振りの良い冒険者たちが気軽にチップを寄越すのでゲンジの金銭感覚も少々麻痺していたようだ。

「大金貨一枚分、張り切っちゃおうかな!」



 そして最低でも週に2回、ルシウスたちにおやつを送り続けた。

 数回繰り返すと、リンクを通じて受け取ったルシウスが、その場ですぐに魔法樹脂に封入していると手紙に書いてあった。
 それからは日持ちを考えずに食堂で食べていたようなスイーツもどんどん作って送った。

 パンケーキなどは食べやすいよう、厚めのクレープにして中に生クリームやカスタードクリームを詰めてブリトーのように中身を包んだ状態にして送ったり。

 毎回手紙が来るなどと期待しているわけではない。
 それでも必ず週に一回は手紙に、それまで食べたおやつが如何に美味しかったか、そして次のリクエストや、旅している現地の美味しいものレポを書いて送ってきてくれる。

「はあ~。やっぱり坊主は俺の癒しだよ」

 普通なら、食事もおやつも、食べて「おいしかった!」それで終わりなのだ。料理とはそういうものだ。
 だがあのルシウス少年は、それだけでは足りないと言わんばかりに言葉でも手紙でもたくさんの「好き」と「ありがとう」をくれる。

 これが案外、料理人にとって嬉しいものなのだ。


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