139 / 216
ルシウス君、称号ゲット!からのおうちに帰るまで
アジフライの可能性
しおりを挟む
「最初、何も付けないで食うじゃん? 次に塩。レモン。ウスターソース。タルタルソースの順。で最後にソースとタルタルソースをたっぷり両方かけて、ガブっと」
それが自分のアジフライのときの作法だと自信満々のギルマスのカラドンに、「わかる!」と頷く面々。
派閥的にはウスターソース派とタルタルソース派で二分されている。
「アジフライおいしい」
ルシウスの故郷アケロニア王国はあまり揚げ物のない国だった。
過去に、加熱した油で調理した料理で全国的に食中毒が流行したことと、油脂の摂りすぎで魔力が乱れるという研究があり、文化的に非推奨の食事に指定されているのだ。
多少、素揚げがあるぐらいで、パンや菓子に使うバターを除くと、炒め物やサラダに使う以外の油脂の用途は少ない。
多分、帰郷してもココ村支部で食べているようには食せない気がするので、ここぞとばかりにフライ物に齧りついていた。
何といっても釣りたて獲れたて捌きたてのアジだ。
しかも今、真夏はアジの旬でもある。
お魚さんも海の中でプランクトンなどの餌が豊富で肥えていて、身もしっかりしている。
刺身や塩焼き、ソテーも美味だったが、やはりアジフライは格別だ。
オヤジさんは短時間でカラッと揚げる派のようで、外はカリッと、中の身は蒸されてふわっと。
ザクッと齧りつくと、白身魚ほど上品でなく、赤み魚ほど野暮ったくない。
それでいて脂の乗ったふわふわ柔らかな身の旨みときたら堪らない。
ルシウスもソース、タルタルソース、両方好きだが、
「お醤油でたべるアジフライ、すごくおいしい!」
「「「その手があったか!」」」
目から鱗とばかりに、今までなかった味変に一同ビックリしている。
「俺の故郷だと、大根おろしと醤油で食べる派もいたねえ。……いるかい?」
「「「お願いします!」」」
それで、さっそく用意してもらった大根おろし+醤油で食べるアジフライに、皆して新しい境地に開眼していた。
「僕、大根おろしでさっぱり食べるの好きー」
おやつ感覚で何枚もいけてしまう。
「刺身と同じ魚だしね。醤油で合わないわけがないのさ」
オヤジさんの至言、きた!
今回、締めは2種類用意されていた。
ひとつめは、アジのユッケ丼。
薬師リコから薬師スキルの伝授を受けて、生卵の浄化ができるようになったとのことで、コチュジャンという甘辛い唐辛子味噌で和えた生のアジの細切りを、刻み海苔を敷いたご飯の上へ。
後はたっぷりの小口ネギと胡麻油を少々、真ん中に生卵の黄身をのせて白胡麻をぱらり。
ふたつめは、焼きアジのほぐし身を使った炊き込みご飯で、そのままでも良いし、出汁茶漬けにアレンジも可能だ。
「他のメニューが良ければ言ってくれたら作るからね」
とオヤジさんは言うが、この頃になると皆はもう悟っている。
オヤジさんがそのときに作ってくれるものが一番美味しい!
ユッケ丼と炊き込みご飯だと、味がバトルってしまう気がする。
炊き込みご飯は明日の朝に持ち越しも可能だとのことなので、大半はユッケ丼を選択した。
新鮮なとろ~んとした黄身に絡む、これまた新鮮なコチュジャン和えのアジ。
そこに胡麻油のコクと香ばしさ。海苔の磯の香り。
「今日もオヤジさんのごはんがおいしい。しあわせ」
頬っぺたをピンク色に染めて、至福に浸る。
コチュジャンはちょっと辛かったが、甘みの強い調味料で、オヤジさんが強い辛味の苦手なルシウス用に量を調整してくれたこともあって美味しくいただくことができた。
今日も美味しいごはんをたくさん食べて、ふわんふわんした気分で寝ぐらの宿直室へ戻ろうとしたところ、薬師リコに手招きされた。
「ルシウス君だったか? これな、フリーダヤから頼まれてた綿毛竜の翼から作った特殊ポーションな。日持ちしないから寝る前にでも飲んで」
忘れてた。
先っぽをパキッと折って飲むタイプのアンプル型ポーションを受け取って、ちょっとルシウスは途方に暮れた。
「……これ、飲まないとダメかな?」
「別に儂は構やしないけど。でも飲まなきゃ素材にした翼は無駄になっちまうねえ」
「うう……」
パキッとアンプルを折って、目をぎゅっと瞑ってその場で中身を一気飲みした。
味はしない。無味無臭だ。
ピコン
ステータスに変化が起きたことを知らせるお知らせ音が聞こえた。
「竜種の加護は付いたかい?」
「付いた! 『綿毛竜の恩人』と『竜種の加護』ふたつ!」
おおお、と歓声が上がる。
知性ある魔物の代表格、竜の恩人ときたか。
「またアケロニア王国に報告書を書かなきゃな。ルシウスのパパさん、喜ぶだろうな~」
このお子さんはいったいどこまで成長するのだろう。
楽しみだけどちょっと怖いと思うギルマスのカラドンなのだった。
--
アジフライ、小骨や皮がイヤーと言って食べれるようになったの大人になってからだったんですが、え、うま、これウマ……っ! となった料理のひとつでした(*´ω`*)
ソース派ですが最近おろし醤油に目覚めた。
それが自分のアジフライのときの作法だと自信満々のギルマスのカラドンに、「わかる!」と頷く面々。
派閥的にはウスターソース派とタルタルソース派で二分されている。
「アジフライおいしい」
ルシウスの故郷アケロニア王国はあまり揚げ物のない国だった。
過去に、加熱した油で調理した料理で全国的に食中毒が流行したことと、油脂の摂りすぎで魔力が乱れるという研究があり、文化的に非推奨の食事に指定されているのだ。
多少、素揚げがあるぐらいで、パンや菓子に使うバターを除くと、炒め物やサラダに使う以外の油脂の用途は少ない。
多分、帰郷してもココ村支部で食べているようには食せない気がするので、ここぞとばかりにフライ物に齧りついていた。
何といっても釣りたて獲れたて捌きたてのアジだ。
しかも今、真夏はアジの旬でもある。
お魚さんも海の中でプランクトンなどの餌が豊富で肥えていて、身もしっかりしている。
刺身や塩焼き、ソテーも美味だったが、やはりアジフライは格別だ。
オヤジさんは短時間でカラッと揚げる派のようで、外はカリッと、中の身は蒸されてふわっと。
ザクッと齧りつくと、白身魚ほど上品でなく、赤み魚ほど野暮ったくない。
それでいて脂の乗ったふわふわ柔らかな身の旨みときたら堪らない。
ルシウスもソース、タルタルソース、両方好きだが、
「お醤油でたべるアジフライ、すごくおいしい!」
「「「その手があったか!」」」
目から鱗とばかりに、今までなかった味変に一同ビックリしている。
「俺の故郷だと、大根おろしと醤油で食べる派もいたねえ。……いるかい?」
「「「お願いします!」」」
それで、さっそく用意してもらった大根おろし+醤油で食べるアジフライに、皆して新しい境地に開眼していた。
「僕、大根おろしでさっぱり食べるの好きー」
おやつ感覚で何枚もいけてしまう。
「刺身と同じ魚だしね。醤油で合わないわけがないのさ」
オヤジさんの至言、きた!
今回、締めは2種類用意されていた。
ひとつめは、アジのユッケ丼。
薬師リコから薬師スキルの伝授を受けて、生卵の浄化ができるようになったとのことで、コチュジャンという甘辛い唐辛子味噌で和えた生のアジの細切りを、刻み海苔を敷いたご飯の上へ。
後はたっぷりの小口ネギと胡麻油を少々、真ん中に生卵の黄身をのせて白胡麻をぱらり。
ふたつめは、焼きアジのほぐし身を使った炊き込みご飯で、そのままでも良いし、出汁茶漬けにアレンジも可能だ。
「他のメニューが良ければ言ってくれたら作るからね」
とオヤジさんは言うが、この頃になると皆はもう悟っている。
オヤジさんがそのときに作ってくれるものが一番美味しい!
ユッケ丼と炊き込みご飯だと、味がバトルってしまう気がする。
炊き込みご飯は明日の朝に持ち越しも可能だとのことなので、大半はユッケ丼を選択した。
新鮮なとろ~んとした黄身に絡む、これまた新鮮なコチュジャン和えのアジ。
そこに胡麻油のコクと香ばしさ。海苔の磯の香り。
「今日もオヤジさんのごはんがおいしい。しあわせ」
頬っぺたをピンク色に染めて、至福に浸る。
コチュジャンはちょっと辛かったが、甘みの強い調味料で、オヤジさんが強い辛味の苦手なルシウス用に量を調整してくれたこともあって美味しくいただくことができた。
今日も美味しいごはんをたくさん食べて、ふわんふわんした気分で寝ぐらの宿直室へ戻ろうとしたところ、薬師リコに手招きされた。
「ルシウス君だったか? これな、フリーダヤから頼まれてた綿毛竜の翼から作った特殊ポーションな。日持ちしないから寝る前にでも飲んで」
忘れてた。
先っぽをパキッと折って飲むタイプのアンプル型ポーションを受け取って、ちょっとルシウスは途方に暮れた。
「……これ、飲まないとダメかな?」
「別に儂は構やしないけど。でも飲まなきゃ素材にした翼は無駄になっちまうねえ」
「うう……」
パキッとアンプルを折って、目をぎゅっと瞑ってその場で中身を一気飲みした。
味はしない。無味無臭だ。
ピコン
ステータスに変化が起きたことを知らせるお知らせ音が聞こえた。
「竜種の加護は付いたかい?」
「付いた! 『綿毛竜の恩人』と『竜種の加護』ふたつ!」
おおお、と歓声が上がる。
知性ある魔物の代表格、竜の恩人ときたか。
「またアケロニア王国に報告書を書かなきゃな。ルシウスのパパさん、喜ぶだろうな~」
このお子さんはいったいどこまで成長するのだろう。
楽しみだけどちょっと怖いと思うギルマスのカラドンなのだった。
--
アジフライ、小骨や皮がイヤーと言って食べれるようになったの大人になってからだったんですが、え、うま、これウマ……っ! となった料理のひとつでした(*´ω`*)
ソース派ですが最近おろし醤油に目覚めた。
11
お気に入りに追加
553
あなたにおすすめの小説
チート狩り
京谷 榊
ファンタジー
世界、宇宙そのほとんどが解明されていないこの世の中で。魔術、魔法、特殊能力、人外種族、異世界その全てが詰まった広大な宇宙に、ある信念を持った謎だらけの主人公が仲間を連れて行き着く先とは…。
それは、この宇宙にある全ての謎が解き明かされるアドベンチャー物語。
プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜
ガトー
ファンタジー
まさに社畜!
内海達也(うつみたつや)26歳は
年明け2月以降〝全ての〟土日と引きかえに
正月休みをもぎ取る事に成功(←?)した。
夢の〝声〟に誘われるまま帰郷した達也。
ほんの思いつきで
〝懐しいあの山の頂きで初日の出を拝もうぜ登山〟
を計画するも〝旧友全員〟に断られる。
意地になり、1人寂しく山を登る達也。
しかし、彼は知らなかった。
〝来年の太陽〟が、もう昇らないという事を。
>>>
小説家になろう様・ノベルアップ+様でも公開中です。
〝大幅に修正中〟ですが、お話の流れは変わりません。
修正を終えた場合〝話数〟表示が消えます。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
主人公は高みの見物していたい
ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。
※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます
※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~
TOYA
ファンタジー
~完結済み~
「この世界のルールはとても残酷だ。10歳の洗礼の試練は避ける事が出来ないんだ」
この世界で大人になるには、10歳で必ず発生する洗礼の試練で生き残らなければならない。
その試練はこの世界の最下層、魔物の巣窟にたった一人で放り出される残酷な内容だった。
生存率は1%未満。大勢の子供たちは成す術も無く魔物に食い殺されて行く中、
生き延び、帰還する為の魔法を覚えなければならない。
だが……魔法には帰還する為の魔法の更に先が存在した。
それに気がついた主人公、ロフルはその先の魔法を習得すべく
帰還せず魔物の巣窟に残り、奮闘する。
いずれ同じこの地獄へと落ちてくる、妹弟を救うために。
※あらすじは第一章の内容です。
―――
本作品は小説家になろう様 カクヨム様でも連載しております。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話
天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。
その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。
ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。
10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。
*本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています
*配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします
*主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。
*主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる