上 下
74 / 216
ルシウス君、覚醒編

アイテムボックスはレアスキルです

しおりを挟む
 とりあえず、日用雑貨の類から。
 清掃用品やアメニティグッズなどは専門の清掃員が掃除に来てくれるときに補充してくれているので不要だ。
 クレアたちは、ココ村支部に常駐する職員の日用品をいくつか頼まれている。

 あとはやはり一番の大物は食料品だ。
 これも配達を頼んではいるのだが、ココ村支部を利用する冒険者は数が少ないため発注の品数も多くない。
 少量を頻繁に注文して配達させるには問題のある場所にあるのがココ村支部。
 仕方ないから職員自ら買い出しに来るしかないという悪循環がここにも。

「ハスミンさん、お願いしまーす」
「おっけー」

 次々にメモに記入していた物品や食料品をクレアが買い込み、精算を済ませた端からハスミンが荷物に触れていく。
 そして買い物が消える。

「あれ、それって……」

 ハスミンの黒い魔法使いのローブの腰まわりに光の帯状の円環リングが出現している。

「ハスミンさん、リンク使いだったの?」
「そうなのよう。本当は冒険者じゃなくて、占い師が本職なんだけどね」

 この世界、魔力使いには2種類あって、旧世代と新世代に分かれている。
 旧世代は、ルシウスのような魔法剣士や一般的に魔法使いや魔術師といって誰もが想像するものだ。それぞれ固有の魔力の使い方をする術者たちの総称である。
 大きな特徴は、自分自身が持つ魔力の総量によって実力、つまり使える術の威力が決まることだろう。
 この辺はわかりやすい。魔力の多い者ほど強いということなので。

 新世代はハスミンのような、リンクと呼ばれる光のリングを身体の周りに出して、魔力を使うコントロールパネルとして使う。
 こちらはリンクを通じて、自分が持つ魔力以外に他者や外界から魔力を調達できるところに特徴がある。
 上手くいくと、自分の実力以上の術の発動も可能になる。
 ただ、旧世代と比べると強い術者があまりおらず、積極的に戦うよりバフ担当などサポート役が多いと言われている。

「でもハスミンさん、結構強いよね」
「あらそう? 魔法使いの修行して使えるようになったの、本当にここ最近なんだけどね」

 そんな話をしているうちに、買った品物をすべて収納し終わった。

「アイテムボックスのスキル持ちはリンク使いだけですからねえ。ハスミンさんは容量多い方だから助かります」
「木箱五箱分ぐらいだけどね。残り一箱とちょっと。買う量に気をつけて」
「はい!」



 またお手手を繋いで次の店だ。

「ルシウス君、リンクに興味ある?」
「ううん、ないよ。僕より強いリンク使い、見たことないし」

 メリットを感じない。
 リンク使いはココ村支部を利用する冒険者たちの中にも一定数いたが、ランクはどちらかといえば低めの者が多かった。
 ハスミンはBランクだからその中では高いほうだ。

「まあそうね。……でもアイテムボックスとか使ってみたくない?」

 断られたが、ハスミンが食い下がった。

「んー。僕、必要な道具なら魔法樹脂で作れるし、あんまり必要性を感じないかなあ」
「そっかあ……」

 それ以上はハスミンも食い下がらなかった。
 しつこく迫ることはせず、商店街の屋台を指差して話題を切り替えた。

「あっ、ワッフル! ふたりとも、ちょっと休憩、甘いもの食べましょ!」
「「賛成です!」」

 女の人ならお店で落ち着いて食事したいのではないか、とルシウスが素朴な疑問を抱くと、

「「ここの屋台は別格!」」

 とのこと。
 二人のオススメのワッフルの屋台は若い女の子中心に行列ができている。
 せっかくなので三人で並んで順番を待ちながら、おしゃべりしていた。



「バターのいい匂い。これ、持ち帰れるかな?」
「ああ……明日は食堂、いつものオヤジさんいない日かあ」

 週に一度か二度だけの臨時料理人は何かとルシウスに突っかかってきてウザい。
 作る料理も飯マズなので、彼の当番の日は食堂に近づかないルシウスだ。

「クレアさんとハスミンさんは、あの飯マズをどうやって乗り切ってるの?」
「んん……それはね……」
「おいしくないなりに、まあ……やり方があるんですよ……」

 両隣で二人が顔を逸らした。

 そうこう言っている間に順番が回ってきた。
 プレーンが一番美味しいとのことなので、食べ歩き用に三人分三枚と、ルシウスの明日のおやつ用に二枚。更にギルドの皆へのお土産を箱に詰めてもらった。

 近くにベンチがあるというので、そこに向かう途中、クレアが人数分のアイスティーを買ってくれてワッフルと一緒にいただくことにした。



しおりを挟む
感想 286

あなたにおすすめの小説

プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー
ファンタジー
まさに社畜! 内海達也(うつみたつや)26歳は 年明け2月以降〝全ての〟土日と引きかえに 正月休みをもぎ取る事に成功(←?)した。 夢の〝声〟に誘われるまま帰郷した達也。 ほんの思いつきで 〝懐しいあの山の頂きで初日の出を拝もうぜ登山〟 を計画するも〝旧友全員〟に断られる。 意地になり、1人寂しく山を登る達也。 しかし、彼は知らなかった。 〝来年の太陽〟が、もう昇らないという事を。  >>> 小説家になろう様・ノベルアップ+様でも公開中です。 〝大幅に修正中〟ですが、お話の流れは変わりません。 修正を終えた場合〝話数〟表示が消えます。

斬られ役、異世界を征く!!

通 行人(とおり ゆきひと)
ファンタジー
 剣の腕を見込まれ、復活した古の魔王を討伐する為に勇者として異世界に召喚された男、唐観武光(からみたけみつ)……  しかし、武光は勇者でも何でもない、斬られてばかりの時代劇俳優だった!!  とんだ勘違いで異世界に召喚された男は、果たして元の世界に帰る事が出来るのか!?  愛と!! 友情と!! 笑いで綴る!! 7000万パワーすっとこファンタジー、今ここに開幕ッッッ!!

ダンジョン・ホテルへようこそ! ダンジョンマスターとリゾート経営に乗り出します!

彩世幻夜
ファンタジー
異世界のダンジョンに転移してしまった、ホテル清掃員として働く24歳、♀。 ダンジョンマスターの食事係兼ダンジョンの改革責任者として奮闘します!

主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。 ※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます ※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

かの世界この世界

武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
人生のミス、ちょっとしたミスや、とんでもないミス、でも、人類全体、あるいは、地球的規模で見ると、どうでもいい些細な事。それを修正しようとすると異世界にぶっ飛んで、宇宙的規模で世界をひっくり返すことになるかもしれない。

4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA
ファンタジー
~完結済み~ 「この世界のルールはとても残酷だ。10歳の洗礼の試練は避ける事が出来ないんだ」 この世界で大人になるには、10歳で必ず発生する洗礼の試練で生き残らなければならない。 その試練はこの世界の最下層、魔物の巣窟にたった一人で放り出される残酷な内容だった。 生存率は1%未満。大勢の子供たちは成す術も無く魔物に食い殺されて行く中、 生き延び、帰還する為の魔法を覚えなければならない。 だが……魔法には帰還する為の魔法の更に先が存在した。 それに気がついた主人公、ロフルはその先の魔法を習得すべく 帰還せず魔物の巣窟に残り、奮闘する。 いずれ同じこの地獄へと落ちてくる、妹弟を救うために。 ※あらすじは第一章の内容です。 ――― 本作品は小説家になろう様 カクヨム様でも連載しております。

処理中です...