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ルシウス君、覚醒編
アイテムボックスはレアスキルです
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とりあえず、日用雑貨の類から。
清掃用品やアメニティグッズなどは専門の清掃員が掃除に来てくれるときに補充してくれているので不要だ。
クレアたちは、ココ村支部に常駐する職員の日用品をいくつか頼まれている。
あとはやはり一番の大物は食料品だ。
これも配達を頼んではいるのだが、ココ村支部を利用する冒険者は数が少ないため発注の品数も多くない。
少量を頻繁に注文して配達させるには問題のある場所にあるのがココ村支部。
仕方ないから職員自ら買い出しに来るしかないという悪循環がここにも。
「ハスミンさん、お願いしまーす」
「おっけー」
次々にメモに記入していた物品や食料品をクレアが買い込み、精算を済ませた端からハスミンが荷物に触れていく。
そして買い物が消える。
「あれ、それって……」
ハスミンの黒い魔法使いのローブの腰まわりに光の帯状の円環が出現している。
「ハスミンさん、環使いだったの?」
「そうなのよう。本当は冒険者じゃなくて、占い師が本職なんだけどね」
この世界、魔力使いには2種類あって、旧世代と新世代に分かれている。
旧世代は、ルシウスのような魔法剣士や一般的に魔法使いや魔術師といって誰もが想像するものだ。それぞれ固有の魔力の使い方をする術者たちの総称である。
大きな特徴は、自分自身が持つ魔力の総量によって実力、つまり使える術の威力が決まることだろう。
この辺はわかりやすい。魔力の多い者ほど強いということなので。
新世代はハスミンのような、環と呼ばれる光のリングを身体の周りに出して、魔力を使うコントロールパネルとして使う。
こちらは環を通じて、自分が持つ魔力以外に他者や外界から魔力を調達できるところに特徴がある。
上手くいくと、自分の実力以上の術の発動も可能になる。
ただ、旧世代と比べると強い術者があまりおらず、積極的に戦うよりバフ担当などサポート役が多いと言われている。
「でもハスミンさん、結構強いよね」
「あらそう? 魔法使いの修行して使えるようになったの、本当にここ最近なんだけどね」
そんな話をしているうちに、買った品物をすべて収納し終わった。
「アイテムボックスのスキル持ちは環使いだけですからねえ。ハスミンさんは容量多い方だから助かります」
「木箱五箱分ぐらいだけどね。残り一箱とちょっと。買う量に気をつけて」
「はい!」
またお手手を繋いで次の店だ。
「ルシウス君、環に興味ある?」
「ううん、ないよ。僕より強い環使い、見たことないし」
メリットを感じない。
環使いはココ村支部を利用する冒険者たちの中にも一定数いたが、ランクはどちらかといえば低めの者が多かった。
ハスミンはBランクだからその中では高いほうだ。
「まあそうね。……でもアイテムボックスとか使ってみたくない?」
断られたが、ハスミンが食い下がった。
「んー。僕、必要な道具なら魔法樹脂で作れるし、あんまり必要性を感じないかなあ」
「そっかあ……」
それ以上はハスミンも食い下がらなかった。
しつこく迫ることはせず、商店街の屋台を指差して話題を切り替えた。
「あっ、ワッフル! ふたりとも、ちょっと休憩、甘いもの食べましょ!」
「「賛成です!」」
女の人ならお店で落ち着いて食事したいのではないか、とルシウスが素朴な疑問を抱くと、
「「ここの屋台は別格!」」
とのこと。
二人のオススメのワッフルの屋台は若い女の子中心に行列ができている。
せっかくなので三人で並んで順番を待ちながら、おしゃべりしていた。
「バターのいい匂い。これ、持ち帰れるかな?」
「ああ……明日は食堂、いつものオヤジさんいない日かあ」
週に一度か二度だけの臨時料理人は何かとルシウスに突っかかってきてウザい。
作る料理も飯マズなので、彼の当番の日は食堂に近づかないルシウスだ。
「クレアさんとハスミンさんは、あの飯マズをどうやって乗り切ってるの?」
「んん……それはね……」
「おいしくないなりに、まあ……やり方があるんですよ……」
両隣で二人が顔を逸らした。
そうこう言っている間に順番が回ってきた。
プレーンが一番美味しいとのことなので、食べ歩き用に三人分三枚と、ルシウスの明日のおやつ用に二枚。更にギルドの皆へのお土産を箱に詰めてもらった。
近くにベンチがあるというので、そこに向かう途中、クレアが人数分のアイスティーを買ってくれてワッフルと一緒にいただくことにした。
清掃用品やアメニティグッズなどは専門の清掃員が掃除に来てくれるときに補充してくれているので不要だ。
クレアたちは、ココ村支部に常駐する職員の日用品をいくつか頼まれている。
あとはやはり一番の大物は食料品だ。
これも配達を頼んではいるのだが、ココ村支部を利用する冒険者は数が少ないため発注の品数も多くない。
少量を頻繁に注文して配達させるには問題のある場所にあるのがココ村支部。
仕方ないから職員自ら買い出しに来るしかないという悪循環がここにも。
「ハスミンさん、お願いしまーす」
「おっけー」
次々にメモに記入していた物品や食料品をクレアが買い込み、精算を済ませた端からハスミンが荷物に触れていく。
そして買い物が消える。
「あれ、それって……」
ハスミンの黒い魔法使いのローブの腰まわりに光の帯状の円環が出現している。
「ハスミンさん、環使いだったの?」
「そうなのよう。本当は冒険者じゃなくて、占い師が本職なんだけどね」
この世界、魔力使いには2種類あって、旧世代と新世代に分かれている。
旧世代は、ルシウスのような魔法剣士や一般的に魔法使いや魔術師といって誰もが想像するものだ。それぞれ固有の魔力の使い方をする術者たちの総称である。
大きな特徴は、自分自身が持つ魔力の総量によって実力、つまり使える術の威力が決まることだろう。
この辺はわかりやすい。魔力の多い者ほど強いということなので。
新世代はハスミンのような、環と呼ばれる光のリングを身体の周りに出して、魔力を使うコントロールパネルとして使う。
こちらは環を通じて、自分が持つ魔力以外に他者や外界から魔力を調達できるところに特徴がある。
上手くいくと、自分の実力以上の術の発動も可能になる。
ただ、旧世代と比べると強い術者があまりおらず、積極的に戦うよりバフ担当などサポート役が多いと言われている。
「でもハスミンさん、結構強いよね」
「あらそう? 魔法使いの修行して使えるようになったの、本当にここ最近なんだけどね」
そんな話をしているうちに、買った品物をすべて収納し終わった。
「アイテムボックスのスキル持ちは環使いだけですからねえ。ハスミンさんは容量多い方だから助かります」
「木箱五箱分ぐらいだけどね。残り一箱とちょっと。買う量に気をつけて」
「はい!」
またお手手を繋いで次の店だ。
「ルシウス君、環に興味ある?」
「ううん、ないよ。僕より強い環使い、見たことないし」
メリットを感じない。
環使いはココ村支部を利用する冒険者たちの中にも一定数いたが、ランクはどちらかといえば低めの者が多かった。
ハスミンはBランクだからその中では高いほうだ。
「まあそうね。……でもアイテムボックスとか使ってみたくない?」
断られたが、ハスミンが食い下がった。
「んー。僕、必要な道具なら魔法樹脂で作れるし、あんまり必要性を感じないかなあ」
「そっかあ……」
それ以上はハスミンも食い下がらなかった。
しつこく迫ることはせず、商店街の屋台を指差して話題を切り替えた。
「あっ、ワッフル! ふたりとも、ちょっと休憩、甘いもの食べましょ!」
「「賛成です!」」
女の人ならお店で落ち着いて食事したいのではないか、とルシウスが素朴な疑問を抱くと、
「「ここの屋台は別格!」」
とのこと。
二人のオススメのワッフルの屋台は若い女の子中心に行列ができている。
せっかくなので三人で並んで順番を待ちながら、おしゃべりしていた。
「バターのいい匂い。これ、持ち帰れるかな?」
「ああ……明日は食堂、いつものオヤジさんいない日かあ」
週に一度か二度だけの臨時料理人は何かとルシウスに突っかかってきてウザい。
作る料理も飯マズなので、彼の当番の日は食堂に近づかないルシウスだ。
「クレアさんとハスミンさんは、あの飯マズをどうやって乗り切ってるの?」
「んん……それはね……」
「おいしくないなりに、まあ……やり方があるんですよ……」
両隣で二人が顔を逸らした。
そうこう言っている間に順番が回ってきた。
プレーンが一番美味しいとのことなので、食べ歩き用に三人分三枚と、ルシウスの明日のおやつ用に二枚。更にギルドの皆へのお土産を箱に詰めてもらった。
近くにベンチがあるというので、そこに向かう途中、クレアが人数分のアイスティーを買ってくれてワッフルと一緒にいただくことにした。
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