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ルシウス君、覚醒編

町に初めてお出かけ行きます

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 その日は早朝にお魚さんモンスターが現れたので、朝食後はもう暇なココ村支部だった。
 第二弾が来ることもあるが、今日は他の冒険者たちもいるので余裕がある。

「買い出しに行きます! ルシウス君、一緒にどう?」
「行きます! 初めての外出は逃せない!」

 ルシウスがココ村支部に送り込まれてきたのは6月。もう翌月の7月、すっかり夏だった。
 そしてこの間、ルシウスは一度もココ村支部とココ村海岸から外に出ていない。
 お魚さんモンスター退治のために派遣されているので、頑張っているうちに外に出る機会を逃しっぱなしだったのだ。



 というわけで、受付嬢クレアと、荷物持ちに手伝うという女魔法使いハスミンに連れられてお出かけである。

 ギルドのあるココ村は、大した設備もなく冒険者ギルドや灯台のためだけの小村だ。
 必要な物資は徒歩数十分かかる内陸の町まで出なければならない。
 配達を頼めれば良いのだが、不気味なお魚さんモンスターが出没するココ村支部まで来たがる配達員は少ない。
 足りない分はこうして受付嬢クレアが冒険者たちに荷物持ちの依頼を出して買い出しに出ている。

「食料も海産物は豊富だけど、やっぱりお肉や卵も食べたいですしねー。お菓子や果物、お茶やお菓子なんかも」
「お菓子お菓子!」

 一番近い町、ヒヨリもそう規模の大きな町ではない。
 だがこちらにも冒険者ギルドや商業ギルド、教会、商店街など必要なものは揃っている。
 町の外に魔物が出ることと、少し離れた山の中にダンジョンがあるため、そちら攻略のために発展してきた町だった。



「うふ。紳士様、エスコートしてくださる?」

 人通りの多い商店街に入る前に、ハスミンが白くたおやかな手をルシウスに差し出してきた。

「喜んで、ハスミンさん!」
「あー! ずるい、私も私も、ルシウス君!」
「じゃあクレアさんも!」

 右手にハスミン、左手にクレアと両手に花になった。

「あれ?」

 女性二人に挟まれて、この状況にルシウスはふと首を傾げた。
 ハスミンは成人女性として華奢だが背丈は標準だ。
 クレアはそれよりちょっとだけ小柄。
 二人とも、まだ子供のルシウスよりは背が高い。

「ンフフ。これで迷子になる心配なし!」
「ここ、はぐれると合流するの大変ですからねー」

「!?」

 これエスコートじゃない。
 迷子防止措置だ!

「やー! 迷子になるほど僕、子供じゃないもん!」
「んまあ。誤解よルシウス君。あたしたちが迷子にならないためよお」
「そうそう。私とハスミンさんのお手手を離しちゃダメですよー?」
「やー!」

「「離さないもーん」」

 女性といえど二人とも冒険者。ルシウスが必死に手を振り解こうとしてもまったく外れてくれない。

「ルシウス君のお父様から、人の多いところに行くときはちゃんと手を繋いで離さないようにって注意を貰っているんです」
「おうちの人とお出かけするときも、お兄ちゃんたちとお手手繋いでたんでしょ? それと同じよう」

 ルシウスのパパ、メガエリスからの手紙には、好奇心旺盛な子供なので目を話すとあっという間に見失ってしまいます、と書かれていた。

「お手手繋いでくれないなら、次からはギルマスに抱っこされて持ち運ばれますからね?」
「ひえっ」

 ギルマスのカラドンは大剣使いだけあって腕も太腿も丸太のように太い。ルシウスぐらいなら小脇に抱えて平気で運ぶだろう。

「お手手つなぎます……」

 おんなのひとこわい。つよい。

 そう呟きながら、左右のお手手をつないでお買い物に付き合うルシウス少年だった。




--
※この世界の木箱は一箱あたり、ミカン箱×4ぐらいのサイズです。
何か物入れて持ち運ぶときの標準サイズ。
庶民のまだ若い独身者だと、持ち物は木箱一箱二箱ぐらいな感じ。
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