52 / 216
【家出少年ルシウスNEXT】ルシウス君、冒険者になる
side 父と嫁3〜兄の劣等感
しおりを挟む
「誤解が解けぬのは残念だったが、話が通じぬ妻の弟とは疎遠にならざるを得なかった。だが、妻が亡くなった後でこの弟はまた話を蒸し返してきてな……」
亡き妻の弟は、わざわざ王都に引っ越してきて仕事を見つけ、それからメガエリスの長男カイルに接触し始めたという。
「カイル様にですか。それはまたどうして?」
「弟のルシウスはお前の実の弟ではないぞ、と言うためだけにだ。だが、ルシウスを発見した当の本人に告げ口した気になっているのだから噴飯ものよ」
「………………」
ルシウスが実の弟でないことは、発見者当人のカイルにとっては当たり前のことだ。
だが、母親の弟である叔父に、一族の秘密が絡む弟ルシウスのことを説明することはできない。
「そうしたら、妻の弟は次に悪辣なことをやり始めた。カイルとルシウスの間に不和の種を蒔き始めたのだ」
さすがに度が過ぎている。
事態が発覚してすぐにメガエリスは亡き妻の弟にリースト伯爵家と、本家の者への接近禁止命令を出した。
妻の実家に一度は戻ったようだが、現在は行方不明となっている。
「その、不和の種というのはどんなことなのですか?」
「……息子たちは、どちらも魔法剣士として天才なのだ。だがルシウスのほうは次元が違う。何せ扱う魔法剣が聖剣だからな」
「せ、聖剣」
伝説級の武器だ。持ち主は現在、世界中を探しても数人いるかどうかと言われている。
「カイルとて、何十本もの魔法剣を創り出せる傑物よ。だが、ルシウスはたった一本の聖剣で兄の実力を軽々超えていった」
「あらー……。男兄弟でそれはキツいでしょうね」
「妻の弟はカイルに、弟に劣る兄であってはならないと、ことあるごとに諭しては劣等感を刺激していたようだ。そうしたら仲の良かった兄弟はあっという間にギクシャクし始めた。まあ、カイルだけだがな」
元々繊細な気質だった兄カイルは、悪意のある叔父の策略によって、すっかり捻くれた性格になってしまったという。
「ルシウス君はどうだったのです?」
「あの子はそんな小難しいことを考えるたちではない。昔から今に至るまでずーっと、『兄さん好き好き』と可愛らしく慕っておるわ」
「あらー」
なるほど、温度差のある兄弟なのだなとお嫁さんブリジットは理解した。
「鳥の雛が最初に見たものを親と思い込むようなものだったのだろうか……。ならば私が最初に目覚めたルシウスの前にいたら、『父様好き好き』な息子になっていたのだろうか……」
何やら難しい顔をしてメガエリスが悲しい顔をしている。
兄カイルは親離れが早かったし、弟ルシウスは物心つく前から兄にべったり。
子煩悩な父は少し寂しかった。
亡き妻の弟は、わざわざ王都に引っ越してきて仕事を見つけ、それからメガエリスの長男カイルに接触し始めたという。
「カイル様にですか。それはまたどうして?」
「弟のルシウスはお前の実の弟ではないぞ、と言うためだけにだ。だが、ルシウスを発見した当の本人に告げ口した気になっているのだから噴飯ものよ」
「………………」
ルシウスが実の弟でないことは、発見者当人のカイルにとっては当たり前のことだ。
だが、母親の弟である叔父に、一族の秘密が絡む弟ルシウスのことを説明することはできない。
「そうしたら、妻の弟は次に悪辣なことをやり始めた。カイルとルシウスの間に不和の種を蒔き始めたのだ」
さすがに度が過ぎている。
事態が発覚してすぐにメガエリスは亡き妻の弟にリースト伯爵家と、本家の者への接近禁止命令を出した。
妻の実家に一度は戻ったようだが、現在は行方不明となっている。
「その、不和の種というのはどんなことなのですか?」
「……息子たちは、どちらも魔法剣士として天才なのだ。だがルシウスのほうは次元が違う。何せ扱う魔法剣が聖剣だからな」
「せ、聖剣」
伝説級の武器だ。持ち主は現在、世界中を探しても数人いるかどうかと言われている。
「カイルとて、何十本もの魔法剣を創り出せる傑物よ。だが、ルシウスはたった一本の聖剣で兄の実力を軽々超えていった」
「あらー……。男兄弟でそれはキツいでしょうね」
「妻の弟はカイルに、弟に劣る兄であってはならないと、ことあるごとに諭しては劣等感を刺激していたようだ。そうしたら仲の良かった兄弟はあっという間にギクシャクし始めた。まあ、カイルだけだがな」
元々繊細な気質だった兄カイルは、悪意のある叔父の策略によって、すっかり捻くれた性格になってしまったという。
「ルシウス君はどうだったのです?」
「あの子はそんな小難しいことを考えるたちではない。昔から今に至るまでずーっと、『兄さん好き好き』と可愛らしく慕っておるわ」
「あらー」
なるほど、温度差のある兄弟なのだなとお嫁さんブリジットは理解した。
「鳥の雛が最初に見たものを親と思い込むようなものだったのだろうか……。ならば私が最初に目覚めたルシウスの前にいたら、『父様好き好き』な息子になっていたのだろうか……」
何やら難しい顔をしてメガエリスが悲しい顔をしている。
兄カイルは親離れが早かったし、弟ルシウスは物心つく前から兄にべったり。
子煩悩な父は少し寂しかった。
11
お気に入りに追加
551
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
よろしくお願いいたします。
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる