49 / 216
【家出少年ルシウスNEXT】ルシウス君、冒険者になる
女魔法使いハスミンの企み
しおりを挟む
ギルドから借りたカンテラを持って、金髪の可憐な女魔法使いハスミンは夕食後、腹ごなしに海岸を歩いていた。
魔女らしい先折れ帽子もローブも真っ黒なので、カンテラに照らされた白い顔と純金色の髪だけが浮き上がって見える。
海岸には少し高台に冒険者ギルドの三階建ての建物が。
やや離れた位置には、灯台がある。
灯台にはゼクセリア共和国の兵士が常駐しているそうだが、数日ごとの交代制で、彼らが特に冒険者ギルドに立ち寄ることもない。
互いの間に交流などもないそうだ。
「うーん。昼間のルシウス君の聖剣を見たとき、まさかと思ったけど」
ルシウスが大量の吸血オクトパスを殲滅させた聖剣から放たれたのは、聖なる魔力だ。
ネオンブルーの魔力の余波は、半日以上経った夜になっても、海岸付近をほんのり発光させて残っていた。
まるで空の星々が海と地上に降りてきたかのような美しい光景に、ハスミンはうっとり溜め息を漏らした。
「何という強大な魔力。しかもまだ14歳ですって? 将来が恐ろしいわ」
あの、まだ幼さの残る小柄な聖剣の魔法剣士は、吸血オクトパスを完全に殲滅するのみならず、海の魔物が大量発生する海岸の浄化までしてのけた。
海の魔物たちは対岸のカーナ王国側からやってくるから、またしばらくすればこちら側の海岸まで押し寄せてくるだろう。
「でも、もう何日かは来ない……来れないでしょうねえ、魔物は」
ハスミンは他に何人か聖なる魔力持ちを知っていたが、ルシウスほど高火力の魔力使いは見たことがなかった。
「欲しいわ、あの子。今のうちに唾つけて他に持っていかれないようにしないと」
ハスミンの水色の瞳が輝く。
行方不明の友人の捜索のためココ村支部を拠点に冒険者活動していたハスミンだが、成果を得られずそろそろ故郷に戻ろうかと考えていた。
だが、考えが変わった。
あの聖剣の持ち主の子供の側にいよう。
「そうと決まれば、町の宿屋から荷物引き上げてこーようっと。あたしもココ村支部で寝泊まり決定ね」
ルシウス少年は宿直室を借りているようだが、ギルドの建物裏手には職員寮用の建物があるのだ。
ギルドマスターのカラドン、サブギルドマスターのシルヴィス、そして受付嬢のクレアはそこに部屋を持っている。
ココ村支部は僻地で職員の数も少ないから、部屋は空いているはず。
ギルド側も、魔法使いのハスミンが常駐するとなれば利用を断りはしないだろう。
魔女らしい先折れ帽子もローブも真っ黒なので、カンテラに照らされた白い顔と純金色の髪だけが浮き上がって見える。
海岸には少し高台に冒険者ギルドの三階建ての建物が。
やや離れた位置には、灯台がある。
灯台にはゼクセリア共和国の兵士が常駐しているそうだが、数日ごとの交代制で、彼らが特に冒険者ギルドに立ち寄ることもない。
互いの間に交流などもないそうだ。
「うーん。昼間のルシウス君の聖剣を見たとき、まさかと思ったけど」
ルシウスが大量の吸血オクトパスを殲滅させた聖剣から放たれたのは、聖なる魔力だ。
ネオンブルーの魔力の余波は、半日以上経った夜になっても、海岸付近をほんのり発光させて残っていた。
まるで空の星々が海と地上に降りてきたかのような美しい光景に、ハスミンはうっとり溜め息を漏らした。
「何という強大な魔力。しかもまだ14歳ですって? 将来が恐ろしいわ」
あの、まだ幼さの残る小柄な聖剣の魔法剣士は、吸血オクトパスを完全に殲滅するのみならず、海の魔物が大量発生する海岸の浄化までしてのけた。
海の魔物たちは対岸のカーナ王国側からやってくるから、またしばらくすればこちら側の海岸まで押し寄せてくるだろう。
「でも、もう何日かは来ない……来れないでしょうねえ、魔物は」
ハスミンは他に何人か聖なる魔力持ちを知っていたが、ルシウスほど高火力の魔力使いは見たことがなかった。
「欲しいわ、あの子。今のうちに唾つけて他に持っていかれないようにしないと」
ハスミンの水色の瞳が輝く。
行方不明の友人の捜索のためココ村支部を拠点に冒険者活動していたハスミンだが、成果を得られずそろそろ故郷に戻ろうかと考えていた。
だが、考えが変わった。
あの聖剣の持ち主の子供の側にいよう。
「そうと決まれば、町の宿屋から荷物引き上げてこーようっと。あたしもココ村支部で寝泊まり決定ね」
ルシウス少年は宿直室を借りているようだが、ギルドの建物裏手には職員寮用の建物があるのだ。
ギルドマスターのカラドン、サブギルドマスターのシルヴィス、そして受付嬢のクレアはそこに部屋を持っている。
ココ村支部は僻地で職員の数も少ないから、部屋は空いているはず。
ギルド側も、魔法使いのハスミンが常駐するとなれば利用を断りはしないだろう。
11
お気に入りに追加
553
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。
【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~
椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。
しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。
タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。
数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。
すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう!
手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。
そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。
無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。
和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる