20 / 216
【家出少年ルシウスNEXT】ルシウス君、冒険者になる
お腹がへりました、おうち帰りたい
しおりを挟む
「今日も……これだけ……?」
ちゃりん、と受付嬢から渡された小銀貨と銅貨数枚。
「こ、今回はデビルズサーモン一匹だけですから!」
来襲するお魚さんモンスターは、多いときもあれば少ないときもある。
今日は少ないほうで、ルシウスが討伐したお魚さんも一匹だけ。
「そっかあ。……今日もご飯は一番安いC定食かあ……デザートもなし……」
「う……」
ひしひしと、侘しさが迫ってくる。
「おうち帰りたい……兄さんに会いたい……おうちのご飯が食べたいよう……」
「う、うう……っ」
ルシウスの湖面の水色の大きな瞳が、潤んで今にも涙を零しそうになるのを見て、もう受付嬢は限界だった。
ちょっと待っててね! とルシウスに言い置いて、受付後ろの事務室に駆け込んだ。
そこでは責任者兼管理職のはずのギルドマスターが慣れない書類仕事を頑張っている。
「ギルマスー! ギルドマスター! もうあたし無理です、これ以上は無理ー!」
「仕方ねえだろ、あんま調子乗らせねえよう締め上げとけって言われてるんだからよ!」
冷や汗ダラダラ流しながら言い訳する髭面ギルドマスター。
アケロニア王国のグレイシア王女様からは、ルシウスを甘やかさずやってくれとの手紙を受け取っている。
『世間知らずの甘ったれに社会というものを教えてやってほしい』
とのこと。
まだ学生の子供だが、実力は折り紙付き。
戦力として存分に使ってくれて構わないとのこと。
その代わりに社会性を叩き込んでやってほしいということのようだ。
「アケロニアのリースト伯爵家って、確か魔道騎士団の団長を出した家ですよね?」
「今は現役を退いて顧問らしいがな。ルシウスの親父さんだそうだ」
アケロニア王国は魔法と魔術の大国で、優秀な魔力使いが揃っている。
ルシウスのリースト伯爵家は建国期からの名家で、他国のここゼクセリア共和国でもそれなりに有名な家だった。
ましてや、ここは冒険者ギルドだ。
世界各国の有力者たちの情報データベースはよく把握している。
「一人前の魔法剣士を一人派遣してもらうと、普通はお高いですよね……」
「今回はまだ未成年の学生だからということで、格安派遣だ。あちらさんのお国的には、ちょっとした社会勉強で寄越したぐらいの感覚なんだろうよ」
とんでもない話である。
アケロニア王国の王女様は、ルシウスの価値と実力をよく知っていた。
その上で、『火力強めで一騎当千のやつ』を派遣しているのだが、冒険者ギルドのココ村支部の皆さんが本当の真実を知るのはもうちょっと後のことになる。
ちゃりん、と受付嬢から渡された小銀貨と銅貨数枚。
「こ、今回はデビルズサーモン一匹だけですから!」
来襲するお魚さんモンスターは、多いときもあれば少ないときもある。
今日は少ないほうで、ルシウスが討伐したお魚さんも一匹だけ。
「そっかあ。……今日もご飯は一番安いC定食かあ……デザートもなし……」
「う……」
ひしひしと、侘しさが迫ってくる。
「おうち帰りたい……兄さんに会いたい……おうちのご飯が食べたいよう……」
「う、うう……っ」
ルシウスの湖面の水色の大きな瞳が、潤んで今にも涙を零しそうになるのを見て、もう受付嬢は限界だった。
ちょっと待っててね! とルシウスに言い置いて、受付後ろの事務室に駆け込んだ。
そこでは責任者兼管理職のはずのギルドマスターが慣れない書類仕事を頑張っている。
「ギルマスー! ギルドマスター! もうあたし無理です、これ以上は無理ー!」
「仕方ねえだろ、あんま調子乗らせねえよう締め上げとけって言われてるんだからよ!」
冷や汗ダラダラ流しながら言い訳する髭面ギルドマスター。
アケロニア王国のグレイシア王女様からは、ルシウスを甘やかさずやってくれとの手紙を受け取っている。
『世間知らずの甘ったれに社会というものを教えてやってほしい』
とのこと。
まだ学生の子供だが、実力は折り紙付き。
戦力として存分に使ってくれて構わないとのこと。
その代わりに社会性を叩き込んでやってほしいということのようだ。
「アケロニアのリースト伯爵家って、確か魔道騎士団の団長を出した家ですよね?」
「今は現役を退いて顧問らしいがな。ルシウスの親父さんだそうだ」
アケロニア王国は魔法と魔術の大国で、優秀な魔力使いが揃っている。
ルシウスのリースト伯爵家は建国期からの名家で、他国のここゼクセリア共和国でもそれなりに有名な家だった。
ましてや、ここは冒険者ギルドだ。
世界各国の有力者たちの情報データベースはよく把握している。
「一人前の魔法剣士を一人派遣してもらうと、普通はお高いですよね……」
「今回はまだ未成年の学生だからということで、格安派遣だ。あちらさんのお国的には、ちょっとした社会勉強で寄越したぐらいの感覚なんだろうよ」
とんでもない話である。
アケロニア王国の王女様は、ルシウスの価値と実力をよく知っていた。
その上で、『火力強めで一騎当千のやつ』を派遣しているのだが、冒険者ギルドのココ村支部の皆さんが本当の真実を知るのはもうちょっと後のことになる。
11
お気に入りに追加
552
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
異世界召喚された俺は余分な子でした
KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。
サブタイトル
〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~
天秤兎
ファンタジー
突然、何故か異世界でチート能力と不老不死を手に入れてしまったアラフォー38歳独身ライフ満喫中だったサラリーマン 主人公 神代 紫(かみしろ ゆかり)。
現実世界と同様、異世界でも仕事をしなければ生きて行けないのは変わりなく、突然身に付いた自分の能力や異世界文化に戸惑いながら自由きままに転職しながら生活する行き当たりばったりの異世界放浪記です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる