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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
思い出のチョコレートケーキ
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元々が四角いホールケーキなので、スクエア型にカットして小皿に分けていった。
断面には分厚めにチョコレートクリームが挟まっている。スポンジもチョコレート味のようだ。
「生クリームとココアシロップまで……!」
カズンが感動に打ち震えている。
ケーキの箱の中、サイド部分にホイップクリームのチューブと、シロップの小さなボトルが入っていた。
小皿に分けたそれぞれのケーキに、生クリームをぎゅーっと鮭の人が絞っていく。
これにはアイシャとトオンのテンションも上がっていった。
「わああ……」
「えっ、そんなに!? そんなにクリームのせちゃっていいの!?」
太めに絞り出されたホイップ生クリームでマウンテンを作る。倒れるギリギリまで盛るのがコツだ。
「ゼリーとフルーツまで!?」
箱の中にはまだまだオプションが入っていた。
別容器には小さなブロックにカットされたコーヒーゼリーが。また別の容器にはシロップ漬けの果物、チェリーとミカンが入っている。
フルーツを生クリームに乗せて、上からココアシロップでデコレーションした。
更に、砕いたナッツをパラパラとふりかけて出来上がり。
見た目は庶民的だ。デコレーションされたパティシエの高級ケーキと比べれば確かに地味だったが、目の前で次々盛られていく様子には心が躍る。
「こんなの、絶対おいしいやつ!」
「オレとカズン様の学生時代のお気に入りだったんです。青春の味ってやつですね」
普段から親しんでいると忘れがちだが、カズンは他国の王族で、ヨシュアは高位貴族の家の当主で今はこの国の宰相閣下である。
その二人が美味というなら、間違いなく絶品のはず。
そして、期待は良いほうに裏切られた。
「お、お高いお店の味がする……!」
チョコレートクリームのケーキ本体は甘くコクがあり、完成度の高いチョコレートケーキだった。
――そう、完成された味だったのである。
ユーグレンも一口食べて驚いていた。
「これはガスター菓子店のショコラの味じゃないか」
「そうだ。引退したショコラティエが代々店主になってる喫茶店でな。庶民向けの店だから、コーヒーとセットなら銀貨一枚で頼めるのだ」
「あそこの客層は庶民も貴族も区別なかったですねえ。お小遣い貰ったらまずこのお店にいきましたもんね。ここは軽食もなかなかで。玉子サラダのサンドイッチやトーストも美味かったです」
「ハムサンドもな。何げに野菜サンドが新鮮で美味かったんだなこれが!」
「お前たちばっかり外食を楽しんでたのか。ずるいぞ!」
アケロニア勢三人が気安い会話を繰り広げる横で、アイシャとトオンはマイペースにケーキを堪能していた。
「上の生クリームも美味しい……。こんなにたくさんの生クリーム、夢みたい」
「お、コーヒーゼリーは無糖だ。これなら甘いもの苦手な人もいけそうだね」
小さめカットだったからすぐ食べ終わってしまったが、チョコレートと生クリームの幸福な余韻はしばらく皆の中に残った。
「ガスター菓子店って、確か前にカズン宛に大箱で送られてきたやつだよな?」
「ああ。送り手はこいつだ」
「そうでした! ユーグレンさんはお高いチョコレートの人!」
アイシャの茶の瞳と、トオンの蛍石の薄緑の瞳に感謝の色が浮かぶ。
もう一年以上前、聖女投稿事件の頃にカズンが分けてくれた、あの高級チョコレートは本当に美味だった。
艶々のトリュフは、チョコレートそのものも、中のクリームやキャラメル、プラリネやマジパンなどナッツ系やフルーツ系にウエハース入りのものなど、とにかくどれを食べても最高だったのだ。
あの頃、カズンがカーナ王国を去った後、タッチの差で謁見しにきた当時の鮭の人からの献上品の中にも大箱があった。
それからしばらく、アイシャとトオンは大事に少しずつお茶の時間に食べて癒しにしていたものだった。
「残りは置いていきますので、皆さんで早めに召し上がってくださいね」
残ったホイップ生クリームでウインナーコーヒーにしたり、コーヒーゼリーをアイスのカフェラテにクラッシュして入れても美味しくいただけるそうだ。
「暑い季節はケーキを凍らせてもいけるんだ、これが」
この調子なら古書店の面子だけで今日明日中には食べきってしまいそうだ。
ケーキの管理は厨房の主に再就任したカズンに任せて、アイシャたちはこの後ルシウス邸に向かう鮭の人を見送ったのだった。
断面には分厚めにチョコレートクリームが挟まっている。スポンジもチョコレート味のようだ。
「生クリームとココアシロップまで……!」
カズンが感動に打ち震えている。
ケーキの箱の中、サイド部分にホイップクリームのチューブと、シロップの小さなボトルが入っていた。
小皿に分けたそれぞれのケーキに、生クリームをぎゅーっと鮭の人が絞っていく。
これにはアイシャとトオンのテンションも上がっていった。
「わああ……」
「えっ、そんなに!? そんなにクリームのせちゃっていいの!?」
太めに絞り出されたホイップ生クリームでマウンテンを作る。倒れるギリギリまで盛るのがコツだ。
「ゼリーとフルーツまで!?」
箱の中にはまだまだオプションが入っていた。
別容器には小さなブロックにカットされたコーヒーゼリーが。また別の容器にはシロップ漬けの果物、チェリーとミカンが入っている。
フルーツを生クリームに乗せて、上からココアシロップでデコレーションした。
更に、砕いたナッツをパラパラとふりかけて出来上がり。
見た目は庶民的だ。デコレーションされたパティシエの高級ケーキと比べれば確かに地味だったが、目の前で次々盛られていく様子には心が躍る。
「こんなの、絶対おいしいやつ!」
「オレとカズン様の学生時代のお気に入りだったんです。青春の味ってやつですね」
普段から親しんでいると忘れがちだが、カズンは他国の王族で、ヨシュアは高位貴族の家の当主で今はこの国の宰相閣下である。
その二人が美味というなら、間違いなく絶品のはず。
そして、期待は良いほうに裏切られた。
「お、お高いお店の味がする……!」
チョコレートクリームのケーキ本体は甘くコクがあり、完成度の高いチョコレートケーキだった。
――そう、完成された味だったのである。
ユーグレンも一口食べて驚いていた。
「これはガスター菓子店のショコラの味じゃないか」
「そうだ。引退したショコラティエが代々店主になってる喫茶店でな。庶民向けの店だから、コーヒーとセットなら銀貨一枚で頼めるのだ」
「あそこの客層は庶民も貴族も区別なかったですねえ。お小遣い貰ったらまずこのお店にいきましたもんね。ここは軽食もなかなかで。玉子サラダのサンドイッチやトーストも美味かったです」
「ハムサンドもな。何げに野菜サンドが新鮮で美味かったんだなこれが!」
「お前たちばっかり外食を楽しんでたのか。ずるいぞ!」
アケロニア勢三人が気安い会話を繰り広げる横で、アイシャとトオンはマイペースにケーキを堪能していた。
「上の生クリームも美味しい……。こんなにたくさんの生クリーム、夢みたい」
「お、コーヒーゼリーは無糖だ。これなら甘いもの苦手な人もいけそうだね」
小さめカットだったからすぐ食べ終わってしまったが、チョコレートと生クリームの幸福な余韻はしばらく皆の中に残った。
「ガスター菓子店って、確か前にカズン宛に大箱で送られてきたやつだよな?」
「ああ。送り手はこいつだ」
「そうでした! ユーグレンさんはお高いチョコレートの人!」
アイシャの茶の瞳と、トオンの蛍石の薄緑の瞳に感謝の色が浮かぶ。
もう一年以上前、聖女投稿事件の頃にカズンが分けてくれた、あの高級チョコレートは本当に美味だった。
艶々のトリュフは、チョコレートそのものも、中のクリームやキャラメル、プラリネやマジパンなどナッツ系やフルーツ系にウエハース入りのものなど、とにかくどれを食べても最高だったのだ。
あの頃、カズンがカーナ王国を去った後、タッチの差で謁見しにきた当時の鮭の人からの献上品の中にも大箱があった。
それからしばらく、アイシャとトオンは大事に少しずつお茶の時間に食べて癒しにしていたものだった。
「残りは置いていきますので、皆さんで早めに召し上がってくださいね」
残ったホイップ生クリームでウインナーコーヒーにしたり、コーヒーゼリーをアイスのカフェラテにクラッシュして入れても美味しくいただけるそうだ。
「暑い季節はケーキを凍らせてもいけるんだ、これが」
この調子なら古書店の面子だけで今日明日中には食べきってしまいそうだ。
ケーキの管理は厨房の主に再就任したカズンに任せて、アイシャたちはこの後ルシウス邸に向かう鮭の人を見送ったのだった。
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