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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
その辺でワンコインで飲める安コーヒーの味
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ゴリ、ゴリ、ゴリ……
トオンが豆をコーヒーミルに入れて人数分を挽く間、それを見守る皆の顔からは少し血の気が引いていた。
特に、わざわざ時間をずらして後から合流したルシウスの顔色はひどい。
「せ、せっかく被害を避けたつもりだったのに!」
「大丈夫ですよ、叔父様。だってちゃんと表示されてるじゃないですか、〝解除〟って」
「だ、だがしかし」
「あ、まだ最初の飯マズコーヒー、取り置きしてありますよ。念の為、味見しておきます?」
「ヨシュアあああああ!」
こちらはこちらで、甥っ子が楽しく叔父を追い詰めている間にトオンが豆を粉に挽き終わった。
大人数分だが、ここは元々宿屋でもあるのでドリッパーもコーヒーポットも大きめだ。布フィルターに粉を全部入れ、後は熱湯を注げば終わり。
「ぷぅ?」
「ピュイッ?」
コーヒーを飲めないピアディとユキノはテーブルの上に陣取って、不思議そうに皆を眺めていた。
「トオン、沸き立てだから気をつけて」
「ありがとう、アイシャ」
ヤカンを手渡した後、アイシャはトオンの横からじーっとドリップの様子を見つめていた。
(何もおかしな魔力付与とかはない……のよね……)
最初にコーヒーの粉全体を湿らす程度に熱湯をひと回し。
ふわ、と焙煎されたコーヒーの香ばしく良い香りが食堂内に広がる。
そう、匂いはとても良いのだ。とても質の良いコーヒー豆であることが誰でもわかる。
飯マズは飲食物の匂いからではわからない。だからこそ脳がバグる。
砂時計をひっくり返して待つこと一分。あとは人数分の分量のコーヒーを抽出して、――ついに完成してしまった。完成してしまったのだ。
「できました。皆さんどうぞ」
「………………」
皆は無言だった。マグカップをテーブルの前に配膳されるも、なかなか手が伸びない。
熱いコーヒーがどんどん冷めていく。
「……私が死んだら、骨は拾ってほしい」
「いや死なないでしょ叔父様、神人なんだから」
悲壮な覚悟を決めたルシウスと、突っ込む甥の鮭の人のやりとりに、ようやく皆も諦めてマグカップに手を伸ばした。
「ここまで来たら一蓮托生です。大丈夫、もし飯マズコーヒーのままでも私がいます。聖女の私が。治癒も清浄魔法もバッチリです! 皆、せーので行きましょう。せーの!」
アイシャの掛け声に、男たちはトオンも含めてカップを手に取った。
ぎゅ、とかたく目を瞑ってコーヒーを一口あおる!
「……普通だな」
「普通ですね」
「特に何という感慨もなく普通」
ユーグレン、鮭の人、カズンがカップの中のまだ湯気の上がるコーヒーを見つめながらコメントしている。
「その辺でワンコインで飲める安コーヒーの味ですね」
「コーヒー専門店で買ってきたって言ってた……わよね?」
ユキレラとアイシャも首を傾げている。
「よかった。よかった、飲める、普通に飲めるぞ! 飯マズじゃない! やったなトオン!」
「やりました。俺はやりましたよルシウスさん……!」
ルシウスとトオンは涙ぐんでハグし合って感動している。
特にルシウスはアイシャたちの師匠として古書店に滞在していたとき、たびたび飯マズの被害に遭っていただけに感慨もひとしおだった。
トオンが豆をコーヒーミルに入れて人数分を挽く間、それを見守る皆の顔からは少し血の気が引いていた。
特に、わざわざ時間をずらして後から合流したルシウスの顔色はひどい。
「せ、せっかく被害を避けたつもりだったのに!」
「大丈夫ですよ、叔父様。だってちゃんと表示されてるじゃないですか、〝解除〟って」
「だ、だがしかし」
「あ、まだ最初の飯マズコーヒー、取り置きしてありますよ。念の為、味見しておきます?」
「ヨシュアあああああ!」
こちらはこちらで、甥っ子が楽しく叔父を追い詰めている間にトオンが豆を粉に挽き終わった。
大人数分だが、ここは元々宿屋でもあるのでドリッパーもコーヒーポットも大きめだ。布フィルターに粉を全部入れ、後は熱湯を注げば終わり。
「ぷぅ?」
「ピュイッ?」
コーヒーを飲めないピアディとユキノはテーブルの上に陣取って、不思議そうに皆を眺めていた。
「トオン、沸き立てだから気をつけて」
「ありがとう、アイシャ」
ヤカンを手渡した後、アイシャはトオンの横からじーっとドリップの様子を見つめていた。
(何もおかしな魔力付与とかはない……のよね……)
最初にコーヒーの粉全体を湿らす程度に熱湯をひと回し。
ふわ、と焙煎されたコーヒーの香ばしく良い香りが食堂内に広がる。
そう、匂いはとても良いのだ。とても質の良いコーヒー豆であることが誰でもわかる。
飯マズは飲食物の匂いからではわからない。だからこそ脳がバグる。
砂時計をひっくり返して待つこと一分。あとは人数分の分量のコーヒーを抽出して、――ついに完成してしまった。完成してしまったのだ。
「できました。皆さんどうぞ」
「………………」
皆は無言だった。マグカップをテーブルの前に配膳されるも、なかなか手が伸びない。
熱いコーヒーがどんどん冷めていく。
「……私が死んだら、骨は拾ってほしい」
「いや死なないでしょ叔父様、神人なんだから」
悲壮な覚悟を決めたルシウスと、突っ込む甥の鮭の人のやりとりに、ようやく皆も諦めてマグカップに手を伸ばした。
「ここまで来たら一蓮托生です。大丈夫、もし飯マズコーヒーのままでも私がいます。聖女の私が。治癒も清浄魔法もバッチリです! 皆、せーので行きましょう。せーの!」
アイシャの掛け声に、男たちはトオンも含めてカップを手に取った。
ぎゅ、とかたく目を瞑ってコーヒーを一口あおる!
「……普通だな」
「普通ですね」
「特に何という感慨もなく普通」
ユーグレン、鮭の人、カズンがカップの中のまだ湯気の上がるコーヒーを見つめながらコメントしている。
「その辺でワンコインで飲める安コーヒーの味ですね」
「コーヒー専門店で買ってきたって言ってた……わよね?」
ユキレラとアイシャも首を傾げている。
「よかった。よかった、飲める、普通に飲めるぞ! 飯マズじゃない! やったなトオン!」
「やりました。俺はやりましたよルシウスさん……!」
ルシウスとトオンは涙ぐんでハグし合って感動している。
特にルシウスはアイシャたちの師匠として古書店に滞在していたとき、たびたび飯マズの被害に遭っていただけに感慨もひとしおだった。
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