204 / 296
第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン
地下ダンジョン最奥へ
しおりを挟む
ダンジョンのエントランスになっている旧王城庭園で、まずルシウスが探索スキルを使った。
「どうですか? ルシウスさん」
「人の気配はある。三、四……五人だな。だが位置の特定ができぬ。何か隠蔽スキルを使用しているようだ」
「これまでの探索状況からすると、潜伏してそうな場所は……」
マッピング担当のトオンが手書きの地図を広げた。
地下ダンジョン内は大雑把に楕円形の形をしている。ちょうど王都の真下にあり、王都とほぼ同じ広さがある。
最初にルシウスが創りだしてしまったときにできてしまった地下空間は、地盤沈下しないよう全空間をルシウスが魔法樹脂で充填している。
探索は、最奥のラスボスに辿り着くことはもちろん、内部を移動するための道の整備作業が主だった。
「一応、ラスボスがいる場所の手前までは道を作ったのよね」
「現状、それ以外の踏破率は半分といったところか。潜伏しているなら休憩エリアだろうな」
侵入者が潜伏する可能性がある場所は数十ヶ所にも及ぶ。
アイシャとユーグレンも地図を覗き込んで思案げだ。
「この広い地下を五人では手が回らない。ダンジョンボスを倒しさえすれば、我ら踏破パーティー以外も探索できるようになる」
「よし。まずはボスのところだ。一気に行くぞ」
「「「はい!」」」
ビクトリノが庭園で待機して、外部との連絡を請け負ってくれることになった。
宰相や騎士団、冒険者ギルド、神殿などからの伝令にも対応するという。
「気をつけてな。嫌な気配がある。油断するなよ!」
「はい!」
ルシウスとジューア姉弟は全身に身体強化をかけて、一気に最奥まで疾走するそうだ。
「ピュイッ(アイシャちゃんたちはボクが運ぶよ!)」
ダンジョン内は高さも横幅も広めに造り込んできている。ユキノの元々の巨体サイズに戻れば、アイシャたち残りの三人を前脚で抱えて、飛んで移動できるということだった。
「あ、じゃあ、もふもふちゃんたちも」
アイシャがトオンやユーグレンと手分けして雛竜たちを抱えようとすると、リーダー格の一号雄がぽんっと跳ねてアイシャの黒髪の頭に乗った。
と思ったら。
「あら?」
「ピュイッ(ぼくたちはユキノおじちゃんの背中にいます!)」
「「「「ピュイッ(いまーす!)」」」」
二体はユキノの特にふわふわ度の高い、長めの羽毛のある鬣にしがみつき。
もう二体は長い尻尾に後ろ座り。
最後の一体である、ユキノの娘の五号雌はユキノの頭の上、柔らかな羽毛に覆われた二本の角の間にお座りした。
五体全員、ご機嫌でピュイピュイ鳴いている。
「今更だけど、雛たちまで連れてきちゃって良かったのかな……」
「ピーピッ(置いてきたってついてきちゃうよ。みんな好奇心おうせいだからね!)」
「だよなー」
言っている間にも、ルシウスとジューアは先に行ってしまった。
アイシャたち三人はユキノの前脚でまとめて胸元に抱き込まれた。
「うわっ。……も、もふもふ!」
そのまま三人一緒くたに羽毛が密集した胸元に沈み込んだ。すぐに浮遊する感覚が訪れる。
顔や腕、全身がユキノのふわふわもふもふの羽毛に包まれて、至福としか言いようがない。
「ピューイッ!(ユキノ、いきまーす!)」
そこからは速かった。
ダンジョン内は、同じ距離を外で空から飛べば五分で済むが、さすがに入り組んだ地下ではそうもいかない。
空中浮遊が使えるアイシャは平然としていたが、慣れないトオンとユーグレンはあたふたしていた――が、すぐにユキノのふわふわな羽毛の感触に癒されて落ち着いた。もふもふは偉大なりだ。
「あ、すごい。二人とも、環を出してみて。マップは頭に入ってる? マップと移動してる俺たちの位置関係が連動して頭の中に浮かばない?」
もふもふの中でトオンが言い出した。
「浮かぶ。なるほど、これは環使いならではの位置把握か」
「パーティーを組んだ環使い同士なら迷子にならないってことね」
「あとはさ、地図の覚え方を魔術で術式作ればかなりの精度で……」
トオンが楽しそうに構想を語る。今ここに異世界転生者のカズンがいれば『それはナビシステムだ』とでも言っただろう。
「あと二分……いや一分……」
「到着時刻まで自動計算か。これは馬車の御者や運輸業に喜ばれるスキルになるやも」
と言っている間に、ダンジョン最深、最奥部に到着した。
「ユキノ君、なかなかの乗り心地だったぞ」
「あんまり揺らさないで飛んでくれてありがとうな!」
「ピュイッ(どういたしまして!)」
男性二人がほのぼのしている横で、ユキノの懐から降りたアイシャは青ざめていた。
「も、もふもふちゃん!? うそ、どの子もいないわ!?」
どうやら飛んでくる間に落として、いや落ちてしまったらしい。
慌てて来た道を戻ろうとしたアイシャを、先に到着していたルシウスが鋭く静止した。
「待てアイシャ! ボス討伐が先だ!」
そう、ダンジョン最奥には支配者たるボスがいる。
まずは攻略を。皆の間に一気に緊張感が高まった。
「どうですか? ルシウスさん」
「人の気配はある。三、四……五人だな。だが位置の特定ができぬ。何か隠蔽スキルを使用しているようだ」
「これまでの探索状況からすると、潜伏してそうな場所は……」
マッピング担当のトオンが手書きの地図を広げた。
地下ダンジョン内は大雑把に楕円形の形をしている。ちょうど王都の真下にあり、王都とほぼ同じ広さがある。
最初にルシウスが創りだしてしまったときにできてしまった地下空間は、地盤沈下しないよう全空間をルシウスが魔法樹脂で充填している。
探索は、最奥のラスボスに辿り着くことはもちろん、内部を移動するための道の整備作業が主だった。
「一応、ラスボスがいる場所の手前までは道を作ったのよね」
「現状、それ以外の踏破率は半分といったところか。潜伏しているなら休憩エリアだろうな」
侵入者が潜伏する可能性がある場所は数十ヶ所にも及ぶ。
アイシャとユーグレンも地図を覗き込んで思案げだ。
「この広い地下を五人では手が回らない。ダンジョンボスを倒しさえすれば、我ら踏破パーティー以外も探索できるようになる」
「よし。まずはボスのところだ。一気に行くぞ」
「「「はい!」」」
ビクトリノが庭園で待機して、外部との連絡を請け負ってくれることになった。
宰相や騎士団、冒険者ギルド、神殿などからの伝令にも対応するという。
「気をつけてな。嫌な気配がある。油断するなよ!」
「はい!」
ルシウスとジューア姉弟は全身に身体強化をかけて、一気に最奥まで疾走するそうだ。
「ピュイッ(アイシャちゃんたちはボクが運ぶよ!)」
ダンジョン内は高さも横幅も広めに造り込んできている。ユキノの元々の巨体サイズに戻れば、アイシャたち残りの三人を前脚で抱えて、飛んで移動できるということだった。
「あ、じゃあ、もふもふちゃんたちも」
アイシャがトオンやユーグレンと手分けして雛竜たちを抱えようとすると、リーダー格の一号雄がぽんっと跳ねてアイシャの黒髪の頭に乗った。
と思ったら。
「あら?」
「ピュイッ(ぼくたちはユキノおじちゃんの背中にいます!)」
「「「「ピュイッ(いまーす!)」」」」
二体はユキノの特にふわふわ度の高い、長めの羽毛のある鬣にしがみつき。
もう二体は長い尻尾に後ろ座り。
最後の一体である、ユキノの娘の五号雌はユキノの頭の上、柔らかな羽毛に覆われた二本の角の間にお座りした。
五体全員、ご機嫌でピュイピュイ鳴いている。
「今更だけど、雛たちまで連れてきちゃって良かったのかな……」
「ピーピッ(置いてきたってついてきちゃうよ。みんな好奇心おうせいだからね!)」
「だよなー」
言っている間にも、ルシウスとジューアは先に行ってしまった。
アイシャたち三人はユキノの前脚でまとめて胸元に抱き込まれた。
「うわっ。……も、もふもふ!」
そのまま三人一緒くたに羽毛が密集した胸元に沈み込んだ。すぐに浮遊する感覚が訪れる。
顔や腕、全身がユキノのふわふわもふもふの羽毛に包まれて、至福としか言いようがない。
「ピューイッ!(ユキノ、いきまーす!)」
そこからは速かった。
ダンジョン内は、同じ距離を外で空から飛べば五分で済むが、さすがに入り組んだ地下ではそうもいかない。
空中浮遊が使えるアイシャは平然としていたが、慣れないトオンとユーグレンはあたふたしていた――が、すぐにユキノのふわふわな羽毛の感触に癒されて落ち着いた。もふもふは偉大なりだ。
「あ、すごい。二人とも、環を出してみて。マップは頭に入ってる? マップと移動してる俺たちの位置関係が連動して頭の中に浮かばない?」
もふもふの中でトオンが言い出した。
「浮かぶ。なるほど、これは環使いならではの位置把握か」
「パーティーを組んだ環使い同士なら迷子にならないってことね」
「あとはさ、地図の覚え方を魔術で術式作ればかなりの精度で……」
トオンが楽しそうに構想を語る。今ここに異世界転生者のカズンがいれば『それはナビシステムだ』とでも言っただろう。
「あと二分……いや一分……」
「到着時刻まで自動計算か。これは馬車の御者や運輸業に喜ばれるスキルになるやも」
と言っている間に、ダンジョン最深、最奥部に到着した。
「ユキノ君、なかなかの乗り心地だったぞ」
「あんまり揺らさないで飛んでくれてありがとうな!」
「ピュイッ(どういたしまして!)」
男性二人がほのぼのしている横で、ユキノの懐から降りたアイシャは青ざめていた。
「も、もふもふちゃん!? うそ、どの子もいないわ!?」
どうやら飛んでくる間に落として、いや落ちてしまったらしい。
慌てて来た道を戻ろうとしたアイシャを、先に到着していたルシウスが鋭く静止した。
「待てアイシャ! ボス討伐が先だ!」
そう、ダンジョン最奥には支配者たるボスがいる。
まずは攻略を。皆の間に一気に緊張感が高まった。
2
お気に入りに追加
3,939
あなたにおすすめの小説
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
契約破棄された聖女は帰りますけど
基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」
「…かしこまりました」
王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。
では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。
「…何故理由を聞かない」
※短編(勢い)
【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?
西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね?
7話完結のショートストーリー。
1日1話。1週間で完結する予定です。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。