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第二章 お師匠様がやってきた

お師匠様の得意技、魔法樹脂2

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「魔法の場合は、魔術のように決められた術式で組み上げることもできるし、術者の意図によって創造力と魔力の限り、自在に創ることのできる術をいう」

 また情報量の多い話になってきた。
 トオンはノートと鉛筆を取り出し、慌ててルシウスの話を書き取った。
 そろそろ速記を覚えたほうがいいかなと思い始めているトオンである。

「魔法は、形も作用も術者の自由に決められる。魔力使いの世界では、魔術は職人的、魔法は芸術的で創造的などということがある」

 言って、ルシウスは両手の中に一本の光り輝く両刃の剣を出現させた。
 聖者であるのみならず、魔法剣士でもある彼の持つ唯一の魔法剣、聖剣だ。素材は何と驚きのダイヤモンドだそうだ。
 彼のネオンブルーの魔力をまとった聖剣は、存在するだけで食堂内の空気を清浄に、爽快感ある魔力で満たしている。
 それだけでなく、食堂にはルシウス特有の松脂やフランキンセンス系の樹脂香の爽やかな芳香が広がっている。

「おおお……格好いいな!」
「こういうのが、魔法で創り出したものだ。魔法で作るから魔法剣。魔術で作る場合は当然、魔術剣と呼ぶ」

 ルシウスが言うには、このような魔法剣にも創成するための術式があるそうなのだが、複雑すぎて術者本人や血族以外では理解ができないことが多いらしい。

「一般的に、魔法は魔力量が多い者が使う。魔術は魔力使いなら誰でも使えるが、魔力が少なくても安定して使える術が多く開発されているから便利だ」
「「なるほど……」」

 やはりここでも、魔力の“量”の話が出てくる。



「武器、なんか格好いい武器を魔術樹脂で作るにはどうしたらいいですか!?」

 トオンが食い気味にルシウスに頼んでいる。

「まずは適当なものを、魔術樹脂で形成する練習をすること。食卓のナイフやフォークから始めてみるといい。ある程度モデルと同じものを安定して作れるようになったら、次は性質付与だ」

 カトラリー入れからナイフとフォークを渡された。

「やってみます。目指せ魔術剣士!」

 気合いを入れているトオンに、ルシウスがふふふと麗しの顔で笑っている。

(その意気や良し。男子なら皆、一度は通る道だ)

 ルシウスの甥っ子の幼馴染みだったカズンも、幼い頃は今のトオンと同じ夢いっぱいの可愛い顔をしてルシウスに魔法剣士や魔術剣士の指南をねだってきたものだった。

(旧世代の魔力使いならば、素質がなければ無理だと言ってそれで終わり。だがリンク使いの場合、何がどう転ぶかわからんからな……)

 もしかしたら、トオンが魔術剣士として大覚醒する可能性が、ないとは言いきれない。

 ルシウスは人の可能性を信じて、基本は褒めて伸ばすタイプの大人だったので、ここで「お前は素質なし、絶対むり」などと言ってトオンを落ち込ませるようなことはしないのだった。




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もしかしたらトオン君がすごい男になる可能性だってあるのです。
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