37 / 299
第二章 お師匠様がやってきた
環《リンク》使い最大のメリット
しおりを挟む
「環の良いところは、発動させているときの自分が、世界の理とリンクしているところだろう」
言って、ルシウスは食卓の席から立ち上がり、自分の腰回りに光る環を出現させた。
その輝きは強く安定している。
「環が安定して出ているとき、基本的に己の行動には責任がない。何をやってもやらなくても、なるようになるからそのまま任せればいい」
この辺りが、己の責務を放り出して社会から逸脱させるとして、旧世代の魔力使いたちから警戒される原因となっている。
環が示すなら、例えどれほど重責にあったとしても投げ出して、そのときに必要な行動を起こさねばならないからだ。
人間社会の建前をすっ飛ばして、世界の理と繋がった状態の本音優先で生きる方向へ次第にシフトしていくようになる。
それが存在としての自由への最短距離だ。
「逆にいえば、重要な決断や行動は、環が発動できないときにはやるなということだ。だから、安定していつでも自分の意思で自由に環が出せるようになるまでは、できるだけ日常生活では魔力を節約し温存するのが重要な戦略になる」
ここまでルシウスの話を聞いてきて、アイシャはそのまま聴き、トオンは小さなノートと鉛筆を持ってメモしながら聴いていた。
「ええと、ここまでの助言は」
ひとつ。
アイシャが邪悪な古代生物を浄化するとき用いた「この国に骨を埋める」の誓約の内訳や、違反したときのペナルティの調査。
ふたつ。
日常生活では魔力を節約、温存すること。
みっつ。
安定していつでもどこでも、自分の意思で環が出せるよう訓練すること。
トオンがまとめた内容に、ルシウスは満足そうに頷いた。
「いつでも自由に環が出せればいいが、本人のステータスによってはそうもいかないということだ。だから、環が出せない時期に普通の生活を送って消耗しないための処世術を、自分たちで考え確立していくといい」
しかし、旧世代の魔力使いの世界で生きてきたルシウスのような者ならともかく、新世代の環使いたちは元は魔力使いでない一般人だったものが多い。
そのため、旧世代よりずっと徒弟制度を重視して、先輩が徹底的に新たに環に目覚めた後輩を指導し育て上げる体制が必須となった。
環使いは魔力使いとして“弱い”と揶揄されることも多いのだが、フリーダヤとロータスのファミリーに属する者たちに限っては当てはまらない。
それは自分たちの義務として、徹底的にファミリーの者たちに環の特性と使いこなしのコツ、新世代の魔力使いとしての心得を叩き込み、また叩き込まれるからだった。
「まあ、とはいえ何も一から自分たちで考える必要もない。もちろん、そうしたいならそれはそれで構わないが」
新世代の魔力使いたちは、あまり人に物事を強制することがない。
基本的に人の自由意思を尊重しているからだが、物足りなさを感じて環を使わなくなる魔力使いもいるとのことだった。
言って、ルシウスは食卓の席から立ち上がり、自分の腰回りに光る環を出現させた。
その輝きは強く安定している。
「環が安定して出ているとき、基本的に己の行動には責任がない。何をやってもやらなくても、なるようになるからそのまま任せればいい」
この辺りが、己の責務を放り出して社会から逸脱させるとして、旧世代の魔力使いたちから警戒される原因となっている。
環が示すなら、例えどれほど重責にあったとしても投げ出して、そのときに必要な行動を起こさねばならないからだ。
人間社会の建前をすっ飛ばして、世界の理と繋がった状態の本音優先で生きる方向へ次第にシフトしていくようになる。
それが存在としての自由への最短距離だ。
「逆にいえば、重要な決断や行動は、環が発動できないときにはやるなということだ。だから、安定していつでも自分の意思で自由に環が出せるようになるまでは、できるだけ日常生活では魔力を節約し温存するのが重要な戦略になる」
ここまでルシウスの話を聞いてきて、アイシャはそのまま聴き、トオンは小さなノートと鉛筆を持ってメモしながら聴いていた。
「ええと、ここまでの助言は」
ひとつ。
アイシャが邪悪な古代生物を浄化するとき用いた「この国に骨を埋める」の誓約の内訳や、違反したときのペナルティの調査。
ふたつ。
日常生活では魔力を節約、温存すること。
みっつ。
安定していつでもどこでも、自分の意思で環が出せるよう訓練すること。
トオンがまとめた内容に、ルシウスは満足そうに頷いた。
「いつでも自由に環が出せればいいが、本人のステータスによってはそうもいかないということだ。だから、環が出せない時期に普通の生活を送って消耗しないための処世術を、自分たちで考え確立していくといい」
しかし、旧世代の魔力使いの世界で生きてきたルシウスのような者ならともかく、新世代の環使いたちは元は魔力使いでない一般人だったものが多い。
そのため、旧世代よりずっと徒弟制度を重視して、先輩が徹底的に新たに環に目覚めた後輩を指導し育て上げる体制が必須となった。
環使いは魔力使いとして“弱い”と揶揄されることも多いのだが、フリーダヤとロータスのファミリーに属する者たちに限っては当てはまらない。
それは自分たちの義務として、徹底的にファミリーの者たちに環の特性と使いこなしのコツ、新世代の魔力使いとしての心得を叩き込み、また叩き込まれるからだった。
「まあ、とはいえ何も一から自分たちで考える必要もない。もちろん、そうしたいならそれはそれで構わないが」
新世代の魔力使いたちは、あまり人に物事を強制することがない。
基本的に人の自由意思を尊重しているからだが、物足りなさを感じて環を使わなくなる魔力使いもいるとのことだった。
26
お気に入りに追加
3,937
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。
婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。
愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。
絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。
レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。
【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。
そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。