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第二章 お師匠様がやってきた

環《リンク》使い最大のメリット

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リンクの良いところは、発動させているときの自分が、世界の理とリンクしているところだろう」

 言って、ルシウスは食卓の席から立ち上がり、自分の腰回りに光るリンクを出現させた。
 その輝きは強く安定している。

リンクが安定して出ているとき、基本的に己の行動には責任がない。何をやってもやらなくても、なるようになるからそのまま任せればいい」

 この辺りが、己の責務を放り出して社会から逸脱させるとして、旧世代の魔力使いたちから警戒される原因となっている。
 リンクが示すなら、例えどれほど重責にあったとしても投げ出して、そのときに必要な行動を起こさねばならないからだ。
 人間社会の建前をすっ飛ばして、世界の理と繋がった状態の本音優先で生きる方向へ次第にシフトしていくようになる。
 それが存在としての自由への最短距離だ。

「逆にいえば、重要な決断や行動は、リンクが発動できないときにはやるなということだ。だから、安定していつでも自分の意思で自由にリンクが出せるようになるまでは、できるだけ日常生活では魔力を節約し温存するのが重要な戦略になる」


 ここまでルシウスの話を聞いてきて、アイシャはそのまま聴き、トオンは小さなノートと鉛筆を持ってメモしながら聴いていた。

「ええと、ここまでの助言は」

 ひとつ。
 アイシャが邪悪な古代生物を浄化するとき用いた「この国に骨を埋める」の誓約の内訳や、違反したときのペナルティの調査。

 ふたつ。
 日常生活では魔力を節約、温存すること。

 みっつ。
 安定していつでもどこでも、自分の意思でリンクが出せるよう訓練すること。



 トオンがまとめた内容に、ルシウスは満足そうに頷いた。

「いつでも自由にリンクが出せればいいが、本人のステータスによってはそうもいかないということだ。だから、リンクが出せない時期に普通の生活を送って消耗しないための処世術を、自分たちで考え確立していくといい」

 しかし、旧世代の魔力使いの世界で生きてきたルシウスのような者ならともかく、新世代のリンク使いたちは元は魔力使いでない一般人だったものが多い。
 そのため、旧世代よりずっと徒弟制度を重視して、先輩が徹底的に新たにリンクに目覚めた後輩を指導し育て上げる体制が必須となった。
 リンク使いは魔力使いとして“弱い”と揶揄されることも多いのだが、フリーダヤとロータスのファミリーに属する者たちに限っては当てはまらない。
 それは自分たちの義務として、徹底的にファミリーの者たちにリンクの特性と使いこなしのコツ、新世代の魔力使いとしての心得を叩き込み、また叩き込まれるからだった。

「まあ、とはいえ何も一から自分たちで考える必要もない。もちろん、そうしたいならそれはそれで構わないが」

 新世代の魔力使いたちは、あまり人に物事を強制することがない。
 基本的に人の自由意思を尊重しているからだが、物足りなさを感じてリンクを使わなくなる魔力使いもいるとのことだった。



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