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ユキレラ、ご先祖様の悲しい真実
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その日は午後に件の男爵家へ手土産持参で挨拶に連れて行かれて、大歓迎されてしまったユキレラだ。
そして、ユキレラのご先祖さまである『数代前のリースト男爵家の四男』の真実を知ることになる。
「当時、我が男爵家には二女四男の六人姉弟がいてね。君の先祖にあたる四男は末っ子でとても可愛がられていた。けれど……」
現当主の男爵は六十代前半、湖面の水色の瞳を持ち、一族特有の魔法剣を持つ魔法剣士だが、髪は濃いめのミルクティー色だった。
顔立ちは年配ながらリースト一族らしい麗しさがある。
ユキレラの先祖にあたる当時の四男について、今の男爵家は一族の教訓のため詳しく現在まで伝えてきているそうだ。
「姉弟の中で四男の彼だけが唯一、外から嫁いできた母親似で、リースト一族の血筋に特有の青銀の髪も、湖面の水色の瞳も持っていなかった。それを気に病んで、平民の女性と恋に落ちたのをきっかけに出奔してしまったんだ」
家族が後で知ったのは、四男が王都の学園に通学中、他の生徒から「リースト一族のくせにそんな見た目で、お前は母親の不義の子だろう」などといった侮辱を多数受けていたということだ。
もちろん事実は違う。
六人姉弟は全員が当時の男爵と唯一の妻との間の子供である。
これは当時の人物鑑定によっても裏付けられている。
けれど気づいたら四男は家族も知らない平民の恋人と「偽物は出て行きます。今まで育ててくれてありがとうございました」の書き置き一枚残して消えていた。
後に残された家族はもう半狂乱だ。
傍系男爵家とはいえリースト一族として身内への情の深いことで知られる家だから尚更だった。
しかも、よりによって末っ子。他の姉弟たちとは年齢が離れていたこともあり、家族で一番可愛がっていた息子が消えてしまったのだから。
「家出先の居場所だけは何とか掴めたんだ。王都から遠く離れたシルドット侯爵領でそれなりに幸福に暮らしていたようだから、家族は安否確認だけして静観していた」
「あー。でもど田舎村に移住しちゃったから」
「そう。そこで消息が途切れてしまって」
シルドット侯爵領はど田舎領のお隣さんにあたる。
「オレが父から聞いた話だと、ご先祖様は手先が器用なのを買われてど田舎村の地元の貴族様にヘッドハンティングされたみたいです」
ただ、器用とは言っても何がどう器用なのかまでは伝わっていなかった。
そのわりに、ど田舎村には随所にご先祖様〝ユキリーン〟の名前が刻まれている。
村の河川に架かる橋や、神殿や村の公民館、学校の建物や設備などなど。
それを話すと、男爵も、ご主人様ルシウスも我を得たりと深く頷いていた。
「傍系とはいえ、さすがはリースト一族の者だ。一族の秘術『魔法樹脂』で村の建造物や設備の修復を行なっていたんだろう」
「な、なるほど?」
多分、四男自身も自分が正しく男爵の父の息子であることはわかっていたはずなのだ。
魔法樹脂を扱える魔力使いは、魔法魔術大国と言われるここアケロニア王国にもそう多くはない。
魔法の下位互換、“魔術”樹脂の使い手とは訳が違う。
「その四男の子孫から、ユキレラ君みたいなリースト一族そのものの容姿の子が再び生まれたというのは感慨深いね」
しみじみと男爵はつぶやいた。
そして、ユキレラのご先祖さまである『数代前のリースト男爵家の四男』の真実を知ることになる。
「当時、我が男爵家には二女四男の六人姉弟がいてね。君の先祖にあたる四男は末っ子でとても可愛がられていた。けれど……」
現当主の男爵は六十代前半、湖面の水色の瞳を持ち、一族特有の魔法剣を持つ魔法剣士だが、髪は濃いめのミルクティー色だった。
顔立ちは年配ながらリースト一族らしい麗しさがある。
ユキレラの先祖にあたる当時の四男について、今の男爵家は一族の教訓のため詳しく現在まで伝えてきているそうだ。
「姉弟の中で四男の彼だけが唯一、外から嫁いできた母親似で、リースト一族の血筋に特有の青銀の髪も、湖面の水色の瞳も持っていなかった。それを気に病んで、平民の女性と恋に落ちたのをきっかけに出奔してしまったんだ」
家族が後で知ったのは、四男が王都の学園に通学中、他の生徒から「リースト一族のくせにそんな見た目で、お前は母親の不義の子だろう」などといった侮辱を多数受けていたということだ。
もちろん事実は違う。
六人姉弟は全員が当時の男爵と唯一の妻との間の子供である。
これは当時の人物鑑定によっても裏付けられている。
けれど気づいたら四男は家族も知らない平民の恋人と「偽物は出て行きます。今まで育ててくれてありがとうございました」の書き置き一枚残して消えていた。
後に残された家族はもう半狂乱だ。
傍系男爵家とはいえリースト一族として身内への情の深いことで知られる家だから尚更だった。
しかも、よりによって末っ子。他の姉弟たちとは年齢が離れていたこともあり、家族で一番可愛がっていた息子が消えてしまったのだから。
「家出先の居場所だけは何とか掴めたんだ。王都から遠く離れたシルドット侯爵領でそれなりに幸福に暮らしていたようだから、家族は安否確認だけして静観していた」
「あー。でもど田舎村に移住しちゃったから」
「そう。そこで消息が途切れてしまって」
シルドット侯爵領はど田舎領のお隣さんにあたる。
「オレが父から聞いた話だと、ご先祖様は手先が器用なのを買われてど田舎村の地元の貴族様にヘッドハンティングされたみたいです」
ただ、器用とは言っても何がどう器用なのかまでは伝わっていなかった。
そのわりに、ど田舎村には随所にご先祖様〝ユキリーン〟の名前が刻まれている。
村の河川に架かる橋や、神殿や村の公民館、学校の建物や設備などなど。
それを話すと、男爵も、ご主人様ルシウスも我を得たりと深く頷いていた。
「傍系とはいえ、さすがはリースト一族の者だ。一族の秘術『魔法樹脂』で村の建造物や設備の修復を行なっていたんだろう」
「な、なるほど?」
多分、四男自身も自分が正しく男爵の父の息子であることはわかっていたはずなのだ。
魔法樹脂を扱える魔力使いは、魔法魔術大国と言われるここアケロニア王国にもそう多くはない。
魔法の下位互換、“魔術”樹脂の使い手とは訳が違う。
「その四男の子孫から、ユキレラ君みたいなリースト一族そのものの容姿の子が再び生まれたというのは感慨深いね」
しみじみと男爵はつぶやいた。
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