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王弟カズンのお母様
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それから、カズンの母御の金髪碧眼の甘い顔立ちの美女が迎えに来るまでに、何とヨシュアも一人前に壁走りができるようになってしまった。
そうして、カズンと手を繋いで壁走りをしまくっていた。
「んまあ。あたくしの可愛いショコラちゃんがすごいことになってるわあ」
カズンの母御のセシリア様も、口調は呑気だったが、ルシウスやヨシュアと一緒になって子爵邸の外壁を垂直に駆け上がっていく姿に呆気に取られていた。
ショコラちゃん? とユキレラが首を傾げていると、カズンの母のセシリア様はお土産の大層お高そうなチョコレートの箱を従者から手渡してくれた。
「ふふ。うちの子、髪も目も真っ黒でしょ? それにチョコレートが大好物で。だからショコラちゃんなのよ」
なるほど、真っ黒な色をチョコレートになぞらえたあだ名なわけだ。
その後、今さらだが自己紹介し合って、ユキレラはセシリア様と一緒にお子さん三人を見守ったのだった。
そうして、カズンとヨシュアはセシリア様に連れられて帰っていった。
ヨシュアは離宮に帰る前にリースト伯爵家の本邸に寄って送っていってくれるとのこと。
馬車に乗って扉が閉まる寸前まで、カズンもヨシュアも、力いっぱい元気よく、ルシウスとユキレラに手を振ってくれていた。
「ルシウスさま、ユキレラ、ばいばい! またね、またあそんでね、ぜったいだよ!」
「はあい。今度は僕たちが離宮に遊びに行きますね」
「まってるから!」
自分たちだって可愛いお子さんたちと童心に返って遊んで楽しかった。
王家の馬車をルシウスとふたり、こちらも手を振りながら見送ったユキレラだった。
そして気づいた。
「せ、せ、せ、セシリア様って王族ですよね!? どうしましょう、オレ、すんごい馴れ馴れしくふつーに会話してしまっだああああ!」
あんらーうちの子たちと遊んでくれてありがとー
んだー気にせんでけろ
そうけー?
んだんだー
そんな、ど田舎村でのご近所さんたちとのノリでやらかしてしまった。
だが、慌てているユキレラを見て、ルシウスは面白そうに笑っている。
「正確には準王族だね。元々セシリア様は他国にお嫁入りしたヴァシレウス様の王女様のお血筋でね。ヴァシレウス様の曾孫様なんだ」
「あ、そ、そうですよね」
彼女は自分の直系尊属の曾祖父と結婚したことになる。
これも国内新聞で大々的に取り上げられていたことだ。
近親婚だが、セシリアは母国で元婚約者に虐げられていたのを、祖母の祖国のこの国へ避難してきて、そこで己の曾祖父だった先王ヴァシレウスに一目惚れして恋に落ちた。
この話は国民なら誰でも知っている。
最初は自分が老いた近親者であることを理由にセシリアのアタックから逃げていたヴァシレウスが、最終的には「真実の愛を教えてほしい」との夜這いを受け入れ結ばれるまでの経緯を。
セシリアは王家から国内の有力貴族の子息との婚約の打診を何件も受けたがすべて断っている。
そうこうしているうちに、カズンを妊娠したことが発覚して、あれよあれよという間に新たな王族様のご出産だ。
この国は現状、始祖からの直系王族の数が少ないので、未婚の令嬢が産んだ庶子でも国民は大喜びした。
しかもそれが、偉大な先王陛下のお子様だったので。
「セシリア様はカズン様をお産みになったことを機にこの国に帰化して、つい先日、女大公に列せられたんだよ」
セシリアは元が先王ヴァシレウスの曾孫で、アケロニア王族の血筋の令嬢だった。
それがアケロニアの国民として帰化したわけで。
「何だか複雑ですねえ」
「そう? この国は王族が少ないから、数が増えて良いと思うけど」
などとお茶を飲みながらのんきにおしゃべりしていた後日、そのカズン絡みでとんでもないことに巻き込まれるのである。
そうして、カズンと手を繋いで壁走りをしまくっていた。
「んまあ。あたくしの可愛いショコラちゃんがすごいことになってるわあ」
カズンの母御のセシリア様も、口調は呑気だったが、ルシウスやヨシュアと一緒になって子爵邸の外壁を垂直に駆け上がっていく姿に呆気に取られていた。
ショコラちゃん? とユキレラが首を傾げていると、カズンの母のセシリア様はお土産の大層お高そうなチョコレートの箱を従者から手渡してくれた。
「ふふ。うちの子、髪も目も真っ黒でしょ? それにチョコレートが大好物で。だからショコラちゃんなのよ」
なるほど、真っ黒な色をチョコレートになぞらえたあだ名なわけだ。
その後、今さらだが自己紹介し合って、ユキレラはセシリア様と一緒にお子さん三人を見守ったのだった。
そうして、カズンとヨシュアはセシリア様に連れられて帰っていった。
ヨシュアは離宮に帰る前にリースト伯爵家の本邸に寄って送っていってくれるとのこと。
馬車に乗って扉が閉まる寸前まで、カズンもヨシュアも、力いっぱい元気よく、ルシウスとユキレラに手を振ってくれていた。
「ルシウスさま、ユキレラ、ばいばい! またね、またあそんでね、ぜったいだよ!」
「はあい。今度は僕たちが離宮に遊びに行きますね」
「まってるから!」
自分たちだって可愛いお子さんたちと童心に返って遊んで楽しかった。
王家の馬車をルシウスとふたり、こちらも手を振りながら見送ったユキレラだった。
そして気づいた。
「せ、せ、せ、セシリア様って王族ですよね!? どうしましょう、オレ、すんごい馴れ馴れしくふつーに会話してしまっだああああ!」
あんらーうちの子たちと遊んでくれてありがとー
んだー気にせんでけろ
そうけー?
んだんだー
そんな、ど田舎村でのご近所さんたちとのノリでやらかしてしまった。
だが、慌てているユキレラを見て、ルシウスは面白そうに笑っている。
「正確には準王族だね。元々セシリア様は他国にお嫁入りしたヴァシレウス様の王女様のお血筋でね。ヴァシレウス様の曾孫様なんだ」
「あ、そ、そうですよね」
彼女は自分の直系尊属の曾祖父と結婚したことになる。
これも国内新聞で大々的に取り上げられていたことだ。
近親婚だが、セシリアは母国で元婚約者に虐げられていたのを、祖母の祖国のこの国へ避難してきて、そこで己の曾祖父だった先王ヴァシレウスに一目惚れして恋に落ちた。
この話は国民なら誰でも知っている。
最初は自分が老いた近親者であることを理由にセシリアのアタックから逃げていたヴァシレウスが、最終的には「真実の愛を教えてほしい」との夜這いを受け入れ結ばれるまでの経緯を。
セシリアは王家から国内の有力貴族の子息との婚約の打診を何件も受けたがすべて断っている。
そうこうしているうちに、カズンを妊娠したことが発覚して、あれよあれよという間に新たな王族様のご出産だ。
この国は現状、始祖からの直系王族の数が少ないので、未婚の令嬢が産んだ庶子でも国民は大喜びした。
しかもそれが、偉大な先王陛下のお子様だったので。
「セシリア様はカズン様をお産みになったことを機にこの国に帰化して、つい先日、女大公に列せられたんだよ」
セシリアは元が先王ヴァシレウスの曾孫で、アケロニア王族の血筋の令嬢だった。
それがアケロニアの国民として帰化したわけで。
「何だか複雑ですねえ」
「そう? この国は王族が少ないから、数が増えて良いと思うけど」
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