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ダンジョン編

86 頭スッキリでテンション高め

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「頭すげー軽くなったぞ!いやースッキリした」
「そんな感じで問題ねえか?」
「全然オッケーだ!アニキ髪切るのうめーな!」

合わせ鏡で後頭部も写して見せてくれた。もうパーフェクトだよ。

「コテツの中二感溢れる服装だと長髪のほうが女にモテるかもだし、今度伸ばしてみっか?」
「ほう。モテモテか!伸ばすのもアリだな!」
「まあ結局は女の好み次第だろうから、どっちがいいとも言えないんだがな」
「アニキは伸ばさんのか?」
「今は短いほうがいいな。ダンジョンから出たら伸ばす可能性は無くもない」
「なるほど。ダンジョンに女いねーもんな!オレも出てから伸ばそう」

基本ツンツン頭のコテツだが、女にモテたいという野望はあるのだ。
アニキも貫禄を出すためにリーゼントだったが、場合によっては長髪もアリだと思ってる。

「頭シャッキリしたところでどうするかだな。赤ゴブはまだだろうし」
「オレは当然クマ彫るぞ!勘を取り戻さなければならん」
「あー、それだ。麻雀牌と将棋の駒にニス塗る仕事あるんだった」

ということでそれぞれの持ち場に付く。


さっきのクマは魂がこもって無かった。オレの心構えがヌルかったのだ。

民族衣装に着替えて、封印していたヒゲを取り出し久々に装着する。
これだ、・・・力が漲って来る。何をするんでも形から入るのが正解なのだ。
巨大クマを作るのはまだ早い。感を散り戻すまでの我慢だ。
精神統一、そして彫刻刀を構え、チビハンマーを振り下ろした。


・・・・・


「悪くない。だが全盛期に戻るまであとクマ2匹は作る必要があるな」

「ハハハハハハハッ!コテツ、何だその恰好は!あとそのヒゲ!」
「ん?木彫り職人の正装だぞ!今日は本気なんでな」
「フフッ!ヒ、ヒゲも正装なのか?」
「露店でクマ彫ってる職人見たことない?全員ヒゲモジャだぞ」
「んーーー見たことあったっけかなあ?そういう恰好は祭りとかで見たかもしれんが」
「とにかくこれで完璧なのだ。アニキも着てみるとわかるが気合入るぞ!」
「そ、そうか?まあ俺はいいや。邪魔して悪かったな。続けてくれ」
「ウム。巨大クマ挑戦の前に2匹作らねばならぬ」

というわけで続行だ!


・・・・・


目の前には木彫りのクマが3匹。最後に作ったクマなどは会心の出来と言えよう。感は取り戻した。足りないのは大木だけだ。
ってことで早速木を収穫しに狩り場へ向かった。


部屋に戻り木を乾燥させ、作り上げるクマの大きさを想定する。木の一番太い部分を使ってコレくらいか・・・。いつもの2倍近い大きさだ!やれるのか!?

求めるのは野生の臨場感。ピチピチと跳ねるシャケを咥えているクマだ。立ち上がって襲い掛かろうとするクマと悩んだが、それを作るにはクマの観察が足りてない。正直オレの力不足だ。いつかきっと成し遂げて見せよう。

大きさは大体掴めた。ノコギリで程良い大きさに大木を切る。
震えて来た。武者震いというヤツか・・・。落ち着け、精神を研ぎ澄ませろ。イメージは出来ている。あとは突き進むのみ!

カーーーーーーーン!

魂を込めたハンマーが振り下ろされた。





************************************************************





「完成だ・・・」

今持っている力を全て投入し完成した巨大クマ。この大きさだと1匹じゃなくて、もはや1頭のレベルだな。
出来の方は正直言うと80点くらい。やはり大きいとその分調整が難しいのだ。しかし逆に言うとクマ職人への道はまだまだ深いという事だ。

「お?完成か?」

「80点ってとこだけどまあまあの出来だとは思う」
「俺には文句ナシの出来に見えるぞ。溢れ出すパワーを感じる」
「毛並みの再現がちょっとヌルいんだよね。大きくなった分荒くなってしまった」
「なるほどな。でもニスは塗るんだろ?」
「うん、塗る。巨大クマと、その前に作ったクマ3号に」
「ホントは色も付ければ、なお良いんだろうけどな」
「絵の具的に無理だねぇ。それに色を塗るなら、今度は塗りの技術も極めないと」
「職人の道は果てしなく険しいな」

「アニキはニス塗り終わったん?」
「おう、それはもうすでに完成だぞ。むしろ時間余って木刀作ってた所だ」
「見せて見せて」
「いいけどまだ触るのはナシな。乾いてはいると思うんだが1日放置でより完璧にしたい」
「たしかにその通りだ。最後に気を抜いて失敗するのは職人失格だ」

「こんな感じだ。まず先に裏側にニスを塗って、乾いた所で全面を塗り、あとは立てた状態で1日放置って作戦よ」
「なるほど!先に裏から塗るとはナイス判断!」
「垂れるほど塗りすぎないのがコツだ。水玉みたいのが出来るとマズイだろ?」
「ニス塗りも奥が深いな!」
「麻雀牌の方はマジで悩んだ。素材その物がいいからニス無しでも完成に近くてよ。だが使ってるうちに絵の具が剥がれて汚れる姿を想像し考え直した。牌を叩きつけた時の音は劣化するだろうけど、ニスのコーティングはやはり必要だろう」
「な、なるほど。参考になったぜ!」


アニキの麻雀牌における職人魂も凄まじいモノがあるな・・・。
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