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786 ディグダム、制圧完了
しおりを挟む「うらああああアアアアア!!」
ザシュアッ!
セイヤ渾身の一撃で、斧使いの大男が力尽きた。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ」
「ゴホッ!ゲホッ!ハあっ、ふーーーーっ、今ので終わりか?」
超激戦による疲労で、ケンちゃんもセイヤもかなり消耗しているようだ。
それでも力を振り絞り、周囲を警戒する。
「立ってる敵はいねーけど、死んだふりしてる奴がいるかもだから注意しろ」
「地面が死体まみれで判別つかねーーーーー!」
キョロキョロしていたセイヤがこっちを見た。
「えーと・・・、ピカピカさん達!そっちも終わったんスか?」
ピカピカさんって何だよ!?
ヒーロー達の長い名前が覚えられなかったんだろうけど。
「とっくに終わっている」
「この死体の山はどーすんだ?」
「もしかして装備品を全て剥ぎ取るのか?」
「俺らはただの助っ人だ。そんな面倒な仕事はやらんぞ」
面倒な仕事ってだけならまだしも、死体から装備品を剥ぎ取るのって精神がゴリゴリ削られるんだよ・・・。こんなん俺だってやりたくねー。
「剥ぎ取りは街の人間にやらせる。報酬として食料を渡すと言えばむしろ喜んでやる筈だ。先ずは奴らの住処から食料を手に入れる。根こそぎだ」
「「ハイッ!」」
ゼーレネイマスがこっちを見た。
「貴様等は此処の見張りを頼む」
「「血の海に置いていく気か!!」」
戦闘以外で俺達を働かせる気はないみたいだから最低限の配慮は見えるのだが、この血の海地獄に残されるのもキツイぞ!
まあでもある意味宝の山なわけだから、誰かが見張ってないと、街の人に剣や鎧を持っていかれちまうんだよな・・・。
とか考えているうちに三人がいなくなってしまったので、一番死体の少ない門の手前に集合した。
でも数十の死体が邪魔だったので、清光さんが土魔法で押し出し、安全ゾーンを広げている。
「なかなかの大仕事だったな!」
「でも街を包囲していなかったから何人も逃げ出してるだろな。挙兵するにしても、訓練もろくにしないままレザルド軍本隊と激突することになるかもだ」
「全然ダメじゃねえか!」
「どうするの?私達だけならともかく、兵が無駄死にしちゃうよ?」
「いや、どうするも何もオレらはただの助っ人だぞ。魔王の考えた通りに動くしかねーだろ!」
「あの男は強いだけじゃなく切れ者だ。しかも大魔王だけあってカリスマ性も兼ね備えている。アホみたいな無茶な行動はするだろうけど、間抜けなことはしない」
「付き合いは短いが、お前の言ったままの印象だな。気にしたら負けだ」
どうやら周囲のお片付けが終わったようで、清光さんが戻って来た。
「お疲れ様です」
「アニキお疲れ!動いたら腹減ったな~」
「この状況で腹が減るとは凄いな!いや、そもそもメタルヒーローは口が塞がっているから何も食えないだろ」
「たとえ食えるとしてもだ。1000を超える死体の真ん中にテーブルを出してお食事とか、サイコパス過ぎますぞ!」
「しかもピカピカのメタルヒーロー達の食卓だ」
ぷっ!
想像したらシュール過ぎて噴き出してしまった。
「こんな場所で食事とか、血生臭すぎて無理だよ!」
・・・あれ?
「気付いたんだけど、全然血生臭くなくね?」
「言われてみると、普通に清々しい空気だな」
「うぇえええ!?」
「なるほど、バトルスーツが匂いをシャットアウトしているのか。息苦しさも無いから密封されている感じでもないのだが」
「だから腹減ったのかもな!」
「ピカピカずるい!私なんて鼻が曲がりそうなのに!」
「ほれ」
レミィに不織布マスクを二枚手渡した。
デラックスガチャの緑カプセルから手に入れたヤツだ。
「あ!これ大掃除の時にもらったヤツだ!レナ、はい!」
究極のブートキャンプで魂の抜けていたレナが、マスクを手に取り首を傾げた。
「こうやって隙間なく装着すれば、少しは匂いもマシになるよ!」
見様見真似で、レナも不織布マスクを装着した。
「なるほど・・・、でも少し呼吸が苦しいです」
「それは我慢して!少し苦しいだけで死ぬほどじゃないから」
しかし現場の匂いがしないってのはデメリットでもあるのか。
火災が発生していても気付けないし、殺人が起きていても気付けな・・・ん?
「あれ?おかしいぞ!?処刑場ではちゃんと血の匂いを感じたハズだ」
「あ!そういえばあの時はちゃんと匂いがした!」
「もしかして、酷い匂いだと感じた自分が無意識で、匂いの原因である血の匂いだけを遮ったのか?」
「かもしれねえ。バトルスーツの性能って半端ねえな・・・」
「ピカピカずるい!その姿で暮らすのは嫌だけど」
「刀が装備出来ないから、あまりオススメはできんな」
「メシも食えねえぞ!」
生活に支障は出るが、バトルスーツの性能自体はやべえな。
時間潰しに、レミィにメイスを持たせて、チビ結界の強度を青→緑→赤→銀とランクアップさせて破壊させて遊んでいると、ようやく三人が帰って来た。
門の前が片付いていたので、嫌な顔をしながら死体を乗り越え、俺達のいる所まで歩いて来た。
「ケン、セイヤ。その辺の建物を一軒一軒回り、食料を見せつけながら、己の意志で剥ぎ取りの仕事に参加する者を集めろ。強制では味方にならぬ」
「「了解です!」」
「ちょっと待て。いい物をやろう」
次の仕事を始めようとしていた三人が振り向いた。
アイテムボックスから拡声器を取り出しケンちゃんに渡す。
「これは声を大きくする魔道具だ。使い方を教えてやる」
アイテムボックスから自分の拡声器を取り出し、説明しながらスイッチをON。
えーと?北東に向かっていて左から回り込んだから・・・西門かな?
『ディグダムの住民達聞こえるか?街の西門の辺りで、弱いくせに粋がっていたレザルド軍の奴らを一網打尽にした!だが死体から装備品を剥ぎ取りたいので、食料と引き換えに、剥ぎ取りを手伝ってくれる人達を募集する!』
1分待ってから、もう一度拡声器で呼び掛ける。
『もう一度言うぞー!剥ぎ取りの仕事を手伝ってくれる人達を募集する!報酬は三日分の食料だ!西門に集まれ!』
「次はケンちゃんがやってみろ」
「は、はい!」
『弱き者を虐げるレザルド軍のクズ共は皆殺しにしてやったぞ!みんな聞け!俺達は弱き者の味方だ!私腹を肥やしていたレザルド軍の奴らから、溜め込んでいた食料を取り戻したぞ!街の西側の門だ。アイツらの無様な姿を見に来い!』
「素晴らしい呼び掛けじゃないか!ケンちゃん素質あるな!」
「へへっ!今みたいな感じでいいんスね!?」
「100点満点だ!」
そうこうしている間に、腹ペコの住民達が家から出て集まり始めた。
ようやく次に進めるな!
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