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779 レミィ師匠

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 近江からアリアダンジョンに転移し、ルシオ達を回収してから流星城に帰還。

 一日中シャアリバーン生活だったので、レナの村の焼肉大会どころか昼飯も食っておらず、メッチャ腹が減っていたので全身全霊で夕食を喰らった。

 雨も降っていなかったので、ヒューリックは最近教習所となっているゴーレム場に向かった。流星城に転移してわざわざ歩いて行くのもアホらしいから、清光さんとはそこで待ち合わせしているらしい。

 俺はもうバイクの練習に付き合う必要も無いので、ゆっくり風呂に浸かってから夜伽する為にレイリア城へと向かった。


 ・・・ケンちゃんは上手くやってるかな?





 ************************************************************





 昨夜も嫁に勝利し、十分な睡眠をとる事が出来たが、すぐ流星城に戻らずトラネコ城に転移した。


「おはよう」

 早朝からドアをノックして現れた俺を見て、フィオリーナは目を大きくさせた。

「小烏丸!え?朝からどうしたの!?ここトラネコ城だよ??」
「驚かせて悪かった。しかし残念ながら今日はフィオリーナに用があって来たわけじゃないんだ」
「なんですってーーーーー!?」

 とりあえずフィオリーナをハグして落ち着かせてから用件を言う。

「レミィを貸してくれ」
「はあ?まさかレミィまでお嫁さんにする気じゃないでしょうね!?」
「違う違う!嫁じゃないからレミィなんだよ」
「どういうこと?」
「今ちょっと近江の国で暴れててさ~」
「はああああ!?」


 朝から大混乱のフィオリーナに、今何が起きているか説明した。


「というわけで、レナって女の子を鍛えなきゃならんわけですよ」
「う~ん・・・わかったけど、レミィはトラネコの貴重な戦力なんですけど!数少ない貴重な侍大将なんだよ?」
「マロンもいるだろ」
「もういないよ!『トラネコに侍大将そんなにいらないよね?』って、シェルフィーユに取られちゃったんだよ!」
「あれま、そうだったのか~」

 今回の論功行賞は結構他人事だったので、軍師だけど人事異動の細かいとこまで覚えていないのだ。さすがに嫁なら覚えてるんだけど。

「とにかく彼女と直接話した方がいいか・・・」
「部屋の場所知らないんで案内してくれ」
「はいはい」


 フィオリーナと一緒にレミィの部屋に移動し、もう一度最初から説明した。


「なるほど・・・。でも何で私なの?」
「聖帝との戦で名を挙げた武将や城主達は、他国にまで顔を知られてる可能性があるだろ?でもレミィやマロンなんかはお嬢と一緒に美濃で活躍して出世したから、西で暴れてた人達よりは顔も名前も知られていない」
「軍師さん、ちょっと失礼ですよ!でも確かにその通りかもしれないね~」
「だが少数精鋭で最後まで戦い抜いた実力は本物だ。そして何よりも重要なのが、妊娠していないってことなのだ!」
「・・・そういえば、お嫁さんを一人残らず孕ませている最中ですもんね」

 レミィにジト目で見られた。
 なぜか当事者であるフィオリーナにも。

「とにかく!レミィを危ない目にあわせる気は無いから安心してくれ。レナって女の子に刀を教えてやって欲しいだけなんだ」
「小烏丸が教えればいいだけじゃないの?」
「それが残念ながら無理なんだ。赤い流星が近江で暴れるわけにはいかないから、近江にいる時は宇宙刑事シャアリバーンに変身してるんだけどさ、しかしなぜかシャアリバーンになると、刀を持つ事が出来ないという謎現象が発生するのだ」
「何よそれ!?」
「あはははは!小烏丸ってホント意味分からないよね!!」

 安心しろ。俺も自分という人間の半分くらいしか理解していない。

「しょうがない。私が助けてあげよう!」
「ちょっと!仕事はどうするのよ?」
「任せた!軍師様のお願いを聞かないわけにいかないもの!」
「くっ・・・。もう絶対そうなると思ったのよね~!分かったわ。こっちは何とかするから、そのレナって娘を最強の武士に育ててきなさい!」
「悪いな。んじゃレミィはもらっていくぜ!」
「頑張ってね!」
「うん!」


 ということで、レミィを連れて流星城に戻った。
 速やかに朝食を頂き、ピピン達をアリアダンジョンに送り届ける。

 そこで合流した清光さん虎徹さんと共にメタルヒーローに変身。
 当然ながらレミィは大爆笑していた。

 そしてメタルヒーロー四人+レミィは近江へと飛んだ。



 ・・・・・



「なるほど、こういう感じになったか」
「初々しいな」
「大成功っぽくね?」
「青春だな~」
「えーと、あの子?」


 レナの家の前まで移動すると、ちょうど二人が家から出てきた所らしく、頬を赤く染め、ケンちゃんの後ろに隠れるようにモジモジしているレナの姿が見えた。

 問題のケンちゃんはというと、こっちも顔を赤くしているのは一緒だが、少し疲れた顔をしている。たぶん一睡もしていないな?


 ・・・だがこの雰囲気、男になったようだな!


 ケンちゃんの側まで近寄り、肩をパシッと叩いた。
 彼は一言も喋らなかったが、その力強い瞳は『やりましたよ!』と語っていた。


「レナ、お前に紹介したい人がいる」

「・・・え?私に??」


 メタルヒーローの後ろからレミィが現れ、レナの前に立った。


「彼女の名はレミィ。お前に戦い方を教えてくれる師匠だ」

「レミィよ!微妙に名前がかぶってるけどよろしくね!あなたをビシビシ鍛えて立派な武将に育ててあげる!手を出しなさい」


 言われた通りにレナが手を前に出すと、レミィから刀を手渡された。

 それが武器だと分かった彼女の目が輝き始める。


「わああああ~~~~~!あ、ありがとうございます!えーと、一生懸命頑張ります!レミィ師匠!」


 ―――のちに『近江の鬼姫おにひめ』と恐れられるようになる剣鬼が誕生した。

 
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