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770 ゼーレネイマス、ダンジョンから帰還

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 シドの店でバイクのタイヤを注文し、俺と親父は宇宙刑事の特訓の為、清光さんと虎徹さんは労役をせねばならんので、アリアダンジョンへ飛ぶつもりだったんだけど、何となく気分的にバイクで流星城に向かった。


「・・・お?」


 城門の前にやたらと目立つ三人組が立っていた。

 京の都ダンジョンを攻略中の、ゼーレネイマス&ケンちゃん&傾奇者だ。
 もう完全に忘れていたくらい久しぶりに三人の顔を見たな。


 ドゥルン

 彼らのすぐ側でバイクを停車した。


「おかえり!久々過ぎて、三人が京の都にいたことすら忘れてたぞ!」
「アニキ!やっと帰って来ました!」

 ケンちゃんが『アニキ』と言ったので清光さんが目を細めたが、すぐに俺に対して言ったことに気付いたようだ。だが視線がゼーレネイマスに向いている。

「ほう・・・」
「つえーな。誰か知らんけど」

 そんなゼーレネイマスも口端が上がっている。
 三河の二人を見て、興味を持ったようだ。

「ハハッ!小烏丸よ、面白いのを連れて来たな。それに貴様の父親だったか?恐ろしいほど力を付けたようだ」

 バイクから降りてアイテムボックスに収納した。

「紹介しよう。白い服が三河大名の清光さんで、黒い服は遠江守護の虎徹さんだ。親父はまあレベルが低かっただけなんで、これでようやく武将と斬り合えるようになったかな?」

「面白い!」
「三河大名に遠江守護ですか!?」
「嘘だろ!?何でそんな人達がここに??」

 清光さんと虎徹さんの方を向く。

「二人が今注目している男の名はゼーレネイマスです。ああ、氷の魔王って言えば伝わるかな?」
「氷の魔王だと!?」
「いやそれ大魔王じゃん!マジかよ!?」
「そしてパンチパーマが越後で拾ってきたケンちゃんで、そっちの傾奇者はセイヤ。二人ともゼーレネイマスの元で修行中です」
「魔王に弟子入りするとは面白いことやってんな!」
「そっちの二人も結構強くね?どんな修行してたんだ!?」
「ずっと京の都ダンジョンを攻めてました。しかし本当に強くなってるな!ゼーレネイマスに相当派手にしごかれたようだ」

 ダンジョン突入前とは見違えるほど違う。
 何度も死にかけるような目に合ったんじゃないだろうか?

 ザッ

 ゼーレネイマスが、三河の二人のすぐ目の前まで接近した。
 清光さん虎徹さんの二人は瞬きすらせず、ガンの飛ばし合いが始まる。

「ヒイッ!」
「はわわわわ」

 一触即発のただならぬ緊張感に耐えられなくなったのは、城門を守っていた二人の兵士だった。

「オイやめろ!ウチの兵士達が耐えられん。とりあえず立ち話もなんだから中に入ろう」


 バチバチにガンを飛ばし合ってる暴走族と中二病と大魔王と、その弟子のツッパリと傾奇者と大バカ殿様を連れて城内に移動した。

 会議室が使われていなかったので、それぞれ円卓の適当な椅子に腰かける。

 しかし何なんだよこのイロモノ大集合は!
 俺もイロモノメンバーの一員なんだけどさ!



「80階層まで行ったのかよ!」
「正確には83階層っスね」
「81階層から広さが倍になったんだよ!絶対あのダンジョン狂ってるって!」
「うむ。魔物が強くて面白くはあったのだが、歩くのが面倒で引き返した。それに敵が魔物ばかりだという事に飽きたのもある」

 俺は31階層までしか進んでないが、ただ只管にダンジョン攻略に徹していればそこまで行けるんだな~。まあゼーレネイマスのような強者がいたからそこまで到達出来たのだろうけど。

「でだ。こ奴らを三日程休ませてダンジョンの疲れを癒し、対人戦を経験させる為に近江の国へと入った」

「「ぶッ!!」」

「勝手に何てことしてくれちゃってるのよ!?」

 まさか近江を攻めていたとはビックリですよ!!

「我らはミスフィート軍の配下ではない。ケンはその予定だったかもしれぬが、まだ正式に尾張大名に仕官したわけではなかろう?」
「軍師直属の武将として取り立てるつもりではあったけど、役職を与える前だったのは確かだな」
「それに今回は偵察に向かっただけに過ぎん。だが近江で面白い話を聞いた。それを貴様に教えてやろうと思ってな」
「面白い話?」


 ゼーレネイマスが俺を見てニヤリと笑った。


「あ奴ら、美濃に攻め込むつもりらしいぞ?」


「「何だと!?」」


 まだミスフィート軍に喧嘩売るようなヤツがいたのか!

 自国の統治に忙しかったから、近江なんか全く気にしてなかった。
 そんなことを企んでやがったとは・・・。

 ミスフィート軍本隊は西にいるから、戦後間もない美濃狙いというわけか。
 そうはいくか!だったら此方から攻め込んでやる!


「そう怖い顔をするな。攻め込むつもりだとは言っていたが、今すぐという訳では無いらしい。京や伊勢からの攻撃を防ぐ為に頑強な砦と防壁を建造中と聞いた」
「なるほど。緊急という話ではないのか」
「しかし戦争が始まったら厄介だぞ?近江だけではなく、越前との連合で攻め入って来るだろうからな」
「連合だと!?」

 そうか!浅井朝倉同盟か!
 そういう戦国時代背景って、微妙にこの世界とリンクしてるんだよな~。

「だが戦争の準備をする必要は無い。情報を流してやった理由は貴様に一つ頼み事があったからだ」
「戦争の準備はいらない?頼み事?」
「ダンジョン攻略でかなり草臥れてしまったのでケンとセイヤの武器を頼む。今よりも強い武器をだ。そして我らだけで近江に入り、兵を集め、中から喰い破る!」
「マジか!?三人で近江を獲るつもりなのか!!」
「何を言う。貴様もやった事だろう?」

 ゼーレネイマスの野郎、俺達が陸奥でやった事を近江で再現するつもりなんだ。
 そういやゴマちゃんが楽しそうに自慢してたもんな~。

「近江と越前を獲ったらケンとセイヤにやろうと思っているのだが、いらんと言ったら貴様んとこにくれてやっても良いぞ?」
「滅ぼすだけじゃなく、お前が責任持って統治しろや!」
「そんな面倒な事はせん。不穏な動きを知った以上、尾張にとっても近江は目障りだろう?そうだ!貴様も遊びに来るか?変装してもらうがな」
「戦争は遊びじゃねえぞ!っていうか変装?」
「その姿では尾張軍師と気付かれよう」

 あ、そうか。近江で尾張軍師が暴れていたら、ミスフィート軍との戦争が始まっちまうのか・・・。でも美濃を狙ってるってのが聞き捨てならん。近江に侵入して真相を確かめたい。

「・・・親父、服を貸してくれ」
「服?お前、近江に行くつもりなのか!?」
「アイツら美濃に攻め込もうとしてるんだぞ?放ってはおけん」


「「ちょっと待てーーーーーーーーーーーーーーーい!」」


 清光さんと虎徹さんが声を上げた。


「お前らだけで楽しもうだなんて許せん。俺も行くぞ!」
「少人数で中から喰い破るとか楽しいに決まってるじゃん!オレも行くぞ!!」
「いや、二人とも労役中じゃないですか!それに三河大名だってバレたら戦争になりますよ?」
「変装すればいいんだろ?労役も少しはやるから問題無い」
「サイダーで行けば絶対バレねえ!労役より平和の方が大事でしょうが!」

 何か遊びに行くみたいな流れになってるんですけど!!

「来るのは構わぬが、此方が主役だという事を忘れるなよ?」
「分かっている。外せない仕事があるから半分参加だ」
「クッソーーーーー!仕事が無きゃな~~~~~!」
「労役は仕事って言わない」
「何でお前ら楽しそうにしてんだ?これって殺し合いになるんじゃねえのか?」
「親父も参加するんだぞ?」
「なにィ!?」


 しかしまあ参加メンバーが強烈過ぎないか?人数は少ないけど。
 いやはや、突然とんでもないことになったな~。
 
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