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681 親父がとんでもない服をⅡ

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 親父が銀カプセルを引き当てたことにより、3レンチャンでセーラー服を出すことが出来るのか!?という期待が高まる中、とうとうその時が訪れる。


 ポフッ


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」


 親父の手の平に乗っていたのは、やたらとボリューム感のある派手な布だった。
 もうその時点で、セーラー服3レンチャンの夢は掻き消えた。

 真っ赤な布と黒い布が折り重なっているように見えるのだが、圧倒的ド迫力で存在感をアピールしているこの豪華そうな布が、普通の服だとはとても思えない。


「嫌な予感しかしねえ・・・」

「恐ろしいほどインパクトのある布だな」
「セーラー服じゃないような気がする!」
「色は違うんだけど、なぜか殿様の服を思い出したわ」


 意を決した親父が服を広げた。


「嘘・・・だろ・・・」


 それは真っ赤な着物だった。

 そして左肩の辺りから右の脇下に向かって黒と金の豪華絢爛な生地が覆いかぶさっていて、相乗効果で凄まじい威圧感を放つ衣装だった。


「うん。袈裟ですな」


 もちろん意味が分からないグミに質問される。


「けさって何?」
「なんて説明したらいいんだろ?とにかく偉い人が着る服だ」
「しかし凄い迫力ね~。殿様の服に匹敵するんじゃない?」
「おい小烏丸、やはりこれは二回目にカウントされるのか?」
「もちろんカウントするぞ!」

「クソがあああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 まさか2連続で豪華な着物をGETしてしまうとはな・・・。

 あれ?そういや坊さんって階級とかあったよな。
 もしかして真っ赤な袈裟ってかなり高い階級なんじゃないか!?


「そうだ!これは赤い着物なんかじゃねえぞ!大僧正にしか着ることが許されない緋色の法衣だ!!」
「知らねえよ!!どっちにしろ坊さんじゃねえか!!」
「やったな親父!いや違う、大僧正様だ!」
「よく分からないけど、メチャクチャ偉そうな呼び名ね~」
「だいそうじょうさま万歳!!」


 二人がどんな漢字で書くのか聞いてきたので、紙に『大僧正』と書いた。
 もちろんその文字を見た二人は、絶対偉い人だ!と感心していたぞ。


 親父が『orz』のポーズになって項垂れてしまったので、これでは時間ばかり過ぎ去ってしまうと思い、デラックスガチャを回すと数珠が出た。


「・・・・・・・・・・・・・・」


 親父の反応が無かったので、今度はグミがガチャると豪華な座布団が出た。
 続けてチェリンがガチャると、木魚とバチが出た。


「ああ、もうわかったよ!着替えればいいんだろ?着替えれば!!」


 ここまでお膳立てされてしまったからには、親父も動かざるを得なくなり、袈裟を抱えて隣の部屋に歩いて行った。


「大バカ殿様の次は大僧正様か。親父はどこへ向かっているのか・・・」
「すごい服ばかり出してるよね!」
「あまりにも豪華すぎて、戦闘に向いてないのが可哀相ね~」


 そんな会話をしていると、存在感の塊のような男がガチャ部屋に入って来た。


「うおッッッ!なんつー貫禄だ・・・。大僧正様ハンパねーーーーー!!」
「うっひゃーーーーー!凄い豪華な服だね!」
「な、なんか殿様の服よりも凄くない!?」

 親父は真っ直ぐ鏡の前に向かった。

「まさか俺がこの衣装を纏う日が来るとはな・・・」
「俺だって親父が坊さんになるとは思わなかったぞ!しかしそのボサボサ頭だけが残念だな。やっぱ坊さんはつるっパゲじゃないと」
「いくら何でも笑いをとるだけの為に髪の毛を剃るのは・・・ん?いや待てよ?もしかして・・・」


 親父がデラックスガチャを回すと、ハゲヅラが出た。


「やっぱり出やがった!!」
「まだ坊さんの流れは終わってなかったのか!」


 ハゲヅラをかぶった親父が豪華な座布団に座り、左手に数珠を持ったまま右手で木魚を叩き始めた。


 ポックポックポックポック


仏説摩訶般若波羅蜜多心経ぶっせつまかはんにゃはらみたしんぎょう


 般若心経を選択したか。流石は俺の親父だけのことはある。


 ポックポックポックポック


「むッ!小烏丸、アイテムが一つ足りてないぞ!」
「そうか、アレだな!?」


 ガチャを回すと、案の定『おりん』が出た。
 急いで木魚の隣に置く。


 ポックポックポックポック チーーーーーン!



 ―――――最後までやり遂げて、満足そうな顔をしているバカ親子がそこにいた。



「ぶわーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
(アーーーーーーーーーーッヒャッヒャッヒャッ!ごへッ!ガハッ!)
(どわーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!)


「「ハッ!?」」


 振り返ると虎徹さんがいた。
 すげー大爆笑されたような気がしたけど、虎徹さんが迎えに来ただけだったか。

 まあ、俺を探しに来たらなぜか豪華絢爛な法衣を着た大僧正様がお経を唱えてたんだから、こんなん笑うわな!


「うはははははははははははは!!親父さん、何で坊さんになってんだよ!マジでうける!しかもそっちには黒いナースと女子中学生がいるし!!」


 言われてみると確かにカオスだな。
 俺だけ変わってないけど、そもそも赤い流星のコスプレに皆が慣れただけだ。


「あ、もうこんな時間だったのか!まあ見ての通り、これが本日の成果です」
「面白過ぎるだろ!小烏丸だけ変わってないけど」
「残念ながら、俺は園児服と小物ばかりでした」
「はあ・・・、これでもう残り一回しかチャンスが無くなったのか・・・」

 大僧正様が溜息をついている。

「何のチャンスだ?」
「えーとですねえ・・・」


 親父が着る服を『3回のガチャ』で決定する大勝負をしている最中だと説明した。

 ついでに、『大バカ殿様の衣装』と『緋色の法衣』を出した後だから、あと1回しかチャンスが無いことも。


「メチャクチャおもしれーことやってんじゃん!!でも一着しか貰えないのか。せっかく派手な衣装をゲットしたのに、もう着られないってのは勿体なくね?」
「確かに勿体ないですね。冷静に考えたら、『大バカ殿様の衣装』も『緋色の法衣』も、恩賞で兵士に与えるわけにいかんよな・・・。よし決めた!三着の中から一着を選ぶんじゃなくて、手に入れた三着とも親父の普段着にしていいぞ!!」

 これで親父も浮かばれるかと思いきや、本人は憤慨しただけだった。

「普段着があまりにもぶっ飛び過ぎだろ!!まあ次にまともな服を出せるとも限らんから、こんなんでも予備に持っておいた方がいいのかもしれんが・・・」
「んじゃ時間があったら強化しとくんで、それぞれ強化したい服を渡してくれ。さすがに全部は無理だから一人一着だけな!」

「「やったーーーーーーーーーーーーーーー!」」

「大バカ殿様になるか、坊さんになるかを、選べ・・・だと!?」


 袈裟は嵩張りすぎるので、結局親父は『大バカ殿様の衣装』を選択。
 グミはもちろん『セーラー服』で、チェリンは『黒いナース服』を選択した。

 夜伽があるから三人分の強化は無理だろうけど、一人分くらいならイケるかな?
 
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