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532 甲斐vs三河 総力戦

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 戦場は前回と同じく信濃と三河の国境。
 しかし総当たり戦とは違い、今回は両軍共にしっかりと陣形が組まれていた。

 甲斐軍は、中心が前方に突き出す形で攻撃に特化したスタイルの魚鱗の陣。
 対して三河は、V字型の鶴翼の陣で迎え撃つようだ。

 しかしこの組み合わせって、武田信玄と徳川家康が激突した三方ヶ原の戦いと一緒なんだよな・・・。

 清光さんほどの男が、あの有名な合戦を知らないわけがない。
 この陣形で激突した結果、三河は敗れたのだ。

 敢えてそうしてるのか知らんけど、きっと日本の戦国時代をトレースしたような史実通りの展開にはならないだろう。これは見物だぞ!!


「お主が赤い流星か!噂通り、仮面を付けておるのだな!」


 声のした方を見ると、オールバックの髪型でヒゲを生やしたガタイの良い男がそこにいた。青い軍服姿なのを見て、もしやと思って質問してみる。


「もしかして家老ランバルか?」
「ぬ?儂を知っておるのか?」
「やはり正解だったか!その青い軍服を見てあの機体を連想したんだ。あの時はゴーレムを貸してもらって本当に感謝する!そして壊してしまってすまなかった」
「ワハハハハハハハハ!気にするでない!聞いたぞ?負けはしたが、虎徹機を戦闘不能にしたともな!」
「戦闘不能と言っても、つま先をちょん切っただけだぞ?それよりもあの青いゴーレムなんだが、癖が強すぎて乗りにくかったぞ!!よくあの機体で戦えるもんだ」
「フム。アレを乗りにくいということは、お主の戦い方は射撃主体だな?」
「その通りだ。近接戦闘の攻撃パターンは多彩だったけど、武器を持ち替える速度が遅かったりで結構ヒヤヒヤしたんだよ」
「儂は射撃の腕がイマイチでな!近接戦闘ばかりやっておったから、ゴーレムに癖がついたのかもしれぬな!ワッハッハッハッハ!!」

 そういうことか!ゴーレムって深層に僅かな意思を持っているみたいだから、操縦者の行動パターンを学習するのかもしれん。

 使わない行動パターンは錆びつき、頻繁に使う技なんかは鋭くなっていく。
 だとすると、他人の専用機に乗ると大体あんなモノなのかもしれないな。

「なるほど・・・。あの時俺の攻撃が当たったのは、ランバルが自機に染み込ませた剣撃の鋭さが影響したわけか。学習までするとはゴーレムって面白いな!」
「そうであろう!ところで今日のいくさにも参加するのだよな?汎用機で戦うつもりならば、また儂の予備機を貸してやってもよいぞ?」
「いや、今日は俺の専用ゴーレムで戦うぞ!」
「専用ゴーレム!?作ったのか??」
「作ったのは俺じゃないけどな!!見せてやろうか?」
「いや、気になるがもう時間が無い。色だけ教えろ」
「赤い流星の専用ゴーレムだぞ?赤いゴーレムに決まっている!」
「そうでなくてはな!ワッハッハッハッハッハ!では後程戦場で会おうぞ!!」
「おう!そっちも頑張れよ!!」


 ランバルが自陣へと戻って行った。


 しかしランバルって豪快で面白い男だな!

 というか甲斐の男達って、誰もがこんな感じでとても話しやすいのだ。
 殺し合いの無い国だからか、強くて豪快でありながらも優しさがあるんだよね。

 越後も殺し合いはほぼ無いけど、ツッパリとヤクザまみれだったからなあ~。
 国の方針によって、住民の性格なんかもかなり影響されるのかもしれない。

 やはり尾張が目指すのは甲斐みたいに大らかな国だな!
 一刻も早く殺伐とした状況を鎮めて、優しい国を造らねば。





 ************************************************************





『決戦の前に長々とした話はしない。お互い派手に暴れようぜ!総力戦だ!!』


『今回は我らが勝たせてもらう!生まれ変わったゴーレムの力を見せようぞ!!』


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』



 ―――――大名同士の力溢れる簡潔な一言で総力戦が始まった。



 三河は鶴翼の陣。
 そのまま本陣に突っ込めば、左右から包まれ大混乱は必至である。

 なので甲斐が狙うのは当然、翼を広げた鶴の『翼』部分。
 そこに向かって突撃を開始する。


 ガシン!ガシン!ガシン!ガシン!ガシン!ガシン!ガシン!ガシン!


 しかしそれを待ち受ける鶴の翼がシュルシュルと後退して行き、気付いた時には車懸りの陣へと変化していた。

 三河軍の一斉射撃が甲斐軍を襲う。


 ボシュッ!ボシュッ!ボシュッ!ボシュッ!ボシュッ!ボシュッ!


 しかし敵の陣形の変化に気付いた甲斐軍は方円の陣へと移行。


 ボシュッ!ボシュッ!ボシュッ!ボシュッ!ボシュッ!ボシュッ!


 甲斐と三河の合戦は銃撃戦で幕を開けた。



 ・・・・・



「うおおおおおおおおおお!なんだこの変幻自在で高度な合戦は!?」


 連携の訓練なんて全くしていなかったから、俺達は混戦になってから突撃しようということで、少し離れた丘の上からいくさを見ているんだけどさ。

 正直、もっとごちゃっとした派手なぶつかり合いをするものだと思っとった!!

 力が完全に拮抗している場合、こういう戦術の応酬が勝敗を分けるのか・・・。
 なんか俺の戦争って力技ばっかだから、少し恥ずかしくなってきましたよ?


「素晴らしいぞ!この様な美しき戦争を見たのは初めてだ!」


 ゼーレネイマスにもこの凄さがわかるか!流石だ。


「おそらく個人の戦闘力が反映されにくいゴーレム同士のいくさなのが、この美しさを完成させたんだと思う」
「なるほどな。互角だからこそ戦術が重要になるというわけだ」
「個人の力が突出している場合、どんな戦術を使おうが力で突破されてしまうからな。正直俺もこの緻密で臨機応変ないくさに感動してるよ!」


 それからしばらく銃撃戦が続いたが、白いゴーレム率いる三河の別動隊の出現により、一気に乱戦へと突入することになる。
 
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