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426 絶対に死なせない!
しおりを挟む「ゼネトスは倒したが敵兵はまだまだ健在だ!陸奥の未来のために、外道共は殲滅しなければならない!攻撃の手を緩めるな!」
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
ナルティアによる追加の号令により、ゼネトス軍との戦いは掃討戦へと移行した。
周辺を見渡すと、別動隊として背後から攻撃していたニャルル・シャイナ・ゴマちゃんの三人が、いつの間にかここまで来ていた。
よし、俺も合流して掃討を開始しよう。
「隊長!!フ、フレイアが・・・」
スカーレットか?
フレイアがどうしたんだ!?
「何があった!?」
「フレイアが、ぐすっ、ゼロスと刺し違えた・・・」
は!?う、嘘だろ・・・?
「・・・フレイアは、し、死んだのか?」
スカーレットは首を横に振った。
「まだ生きてるけど・・・、もう助からない」
―――希望が見えた。
「場所はどこだ!?俺をフレイアの所へ案内しろ!!」
シャイナとゴマちゃんに視線を送ると、二人が頷いた。
・・・・・
スカーレットに案内された場所は、そんなに離れた位置じゃなかった。
そして、血溜まりの中にフレイアが横向きに倒れているのが見えた。
「フ、フレイア・・・」
ナルティアがフレイアを抱き起こす。
―――長剣が、フレイアの腹から背中に突き刺さっていた。
「あ・・・、た、いちょう。ごめん・・・、やられちゃ、った」
「フレイア!!」
死にゆくフレイアが俺に気付いた。
「こが、らすまる・・・、最後に、手を・・・握って、いて・・・」
フレイアに駆け寄り、そっと身体を抱きしめた。
「フレイア、弱気になるな!絶対に死なせるかよ!!」
「もう、無理・・・、よ。私は、助から・・・ない」
「シャイナ!ゴマちゃん!使うぞ!!」
「許可なんていらない!早く!!」
「急いで!!」
出血を抑えるために、刺さった剣をそのままにしといてくれたのか。
スカーレット、良い判断だったぞ!!
シャイナ達から預かったままだった聖水をマジックバッグから取り出す。
そして身体に刺さっている剣を引き抜き、傷口に聖水をぶっかけた。
ギリギリだから一杯分の聖水じゃ足りない。
残りを背中側の傷口にもぶっかけた。
「フレイア、この聖水を飲めば助かる!頑張って飲むんだ!!」
もうフレイアは虚ろな瞳だったが、俺を信じてくれたようで、聖水を一口飲み込んだ。
「よしッッ!よく頑張った!!ゆっくり全部飲み干すんだ」
数分かけて、フレイアはコップ一杯の聖水を飲むことが出来た。
ふーーー、もう大丈夫だ!
・・・・・
「え?」
身体の痛みが消え去ったことに気付いたのだろう。フレイアが身体を起こした。
「え?なんで・・・、えええ!?」
そしてすくっと立ち上がった。
血の染み込んだ服をめくって刺された所を調べるが、傷口が無くなっていることに気付く。
「えーと・・・、たしか長剣が刺さってたよね?」
「背中まで貫通してたな」
「ちょっと待て!あたしにも全く意味がわからないのだが!!」
大人しく事の成り行きを見ていたナルティアだが、目にした超常現象に黙っていられなかったようだ。
「簡単に説明すると奥の手を使った。フレイアが飲んだのは『聖水』といってだな、どんな大怪我だろうが致命傷だろうが、生きてさえいれば完治させる奇跡の水だ」
「はあ!?な、なにそれ・・・」
「さ、流石小烏丸だな。次から次へと謎が増えて行く・・・」
「すっげええええええええええ!!本当に完治しやがった!!」
「フレイアさんの服血まみれだけど、大出血したのになんで元気なの??」
それは俺ですら不思議に思ってる。大量に血を失ったら傷が塞がってもフラフラすると思うんだけど、なぜかそういうのも含めて完全回復するのだ。
「シャイナ、ゴマちゃん、悪い!聖水がスッカラカンになっちまった。この先の旅路ではもう聖水を頼れない」
「気にすんなって!死ぬような無茶しなけりゃいいだけだろ!」
「うん!フレイアさんを助けることが出来たんだから、ボクも大満足だよ!」
「本当にすまんな。尾張に帰ったら必ず聖水を手に入れるから、それまで待っててくれ」
これからはもう、仲間に無茶はさせられんな。
次の国でまた反乱軍とかに出会っても、見て見ぬふりをして通り過ぎよう。
ちなみにゼロスってのはゼネトス軍の家老で、かなり手強い男だったようだ。
そんな奴と刺し違えたのだから、フレイアも良く頑張ったよ。
―――ゼネトス軍との激突は、ナルティア軍の大勝利に終わった。
逃げ出して行方をくらませた敵兵もいたようだが、平泉まで進軍して来たゼネトス軍の大半を殲滅することが出来たので、これ以上無いほどの快勝と言えるだろう。
後はもう、ジリジリと南下しながら残党を始末して行けばいい。
陸奥での俺の仕事は終わったのだ。
いや、もう少しだけ残ってるな。
場所はまだ決めていないが、陸奥に巨大カジノ施設を作らなければならない。
・・・そうだな、ついでにデカい城も建ててやろうか。
まあ実際に建物を作るのはパメラやリンダ達なんで、俺は設計と魔道具の量産の方だな。
正直な所、今すぐにでも尾張へと向かいたい気持ちはあるんだけど、俺以外に魔道具を作れる人がいないのよね。
せめてカジノと城くらいは完璧に仕上げてから出発しようと思う。
滞在期間が延びてしまうけど、最後にもうひと頑張りしますか~!
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