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320 ミスフィート軍の旗と腕章が完成

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 帽子の強化もほとんど終わり、残りは和泉に任せて俺は別の仕事を始めた。
 移住して来たばかりなので、やることはまだまだ山積みなのよ。

 ヒューリックとの戦から二ヶ月ほど経ったんだけど、まだ密偵から聖帝が動いたとの報告が来ない。
 まあ最短で二ヶ月という予想だっただけで、聖帝が尾張と伊勢の戦争を軽く見ていたならば、攻めて来るのはまだ何ヶ月も先になる可能性もあるのだ。
 けど使者をぶった斬った情報が届けば、怒り狂うハズなんだけどな~。

 伊勢国を支配下に置いた尾張をまだ舐めているならば、直接聖帝が来ない可能性も十分ある。ただそうなると、兵士の数は減らせるだろうけど聖帝軍の精鋭が残ってしまうので、何度も攻めて来るような長期戦になりかねない。

 俺としては最初のぶつかり合いで叩き潰したいから、来るなら全軍でも構わないとすら思っている。罠を張り巡らせての用意万端な戦ってなかなか出来ないだろうから、最初の防衛戦こそが大チャンスなんだよね。

 たとえ攻めて来るのが数ヶ月後だとしても、その時は全軍でよろしく頼む!



「小烏丸!旗と腕章が届いたぞ!」

 城の外で兵士達に隊列の指導をしていると、後ろからミスフィートさんの声が聞こえたので振り返った。

「おおっ!今行きます!ルーシー、後は任せた」
「わかったっスよ!」

 腕章はミスフィートさんの部屋に置いてあるというので、彼女について行く。


 部屋に入ると、カーラ・カトレア・チェリン・お嬢・リタ・リナの6名がすでに中で談笑していた。
 カーラの腕に腕章が装着されているのが見える。

「おお!めちゃめちゃ格好良いじゃないですか!」
「だろう?」

 昔ドワーフに安全ピンを作るよう頼んだことがあるのだけど、服が強化されているので針が通らないといったことがありまして、その時の反省を生かして今回は長さの調節が出来る金具を量産させて腕章に採用した。それでも外れてしまう可能性があるので、ついでに粘着テープも作ってもらった。
 普段は金具で締めつけるだけでいいけども、戦争みたいに派手に動く場合は粘着テープも使ってもらう予定だ。

 ちなみに腕章と軍旗を製作したのはエルフ達だ。
 俺はエルフに軍旗をデザインした絵を渡しただけなので、大雑把な説明だけでこれほどのモノを仕上げてくれたエルフ達には感謝しかない。


 ミスフィート軍は基本的に私服のまま戦闘をする。

 しかし敵兵が鎧を脱いでしまうと、見た目じゃ敵か味方かわからなくなってしまうのでは?とヒューリックに指摘されたのだ。なので色々考えた結果、味方を識別するのに腕章を着けようってことになった。

 敵兵が鎧を脱いで死体から腕章を剥ぎ取り装着すれば、敵かどうか全くわからなくなるけども、その場合はさすがにどうしようもない。
 でも、軍の名簿に全兵士の名前とサインが記入されているので、それを知らない侵入者はそこであぶり出すことが出来るようにはしてあるぞ。

 新兵として登用した兵士がスパイだった場合は見抜くのが難しいけど、一般兵は基本的に城内に入ることが出来ないので、不穏分子が城内で何かを企むってのは難易度が高いハズだ。

 おっと、思考が横道に逸れたな。


「あれ?よく見たらこれって、小烏丸の胸の所にある模様と似てるわね?」
「ん?ああ、ホントだ!その衣装を参考にしたのかしら?」

 まあバレますよね~。

「みんなには悪いんだけど、この模様と近い感じにしてもらったんだ。俺ってやたらと目立つ服着てるくせに、もうこの服を脱ぐことも出来ないだろ?んで模様の意味を問われても、変な説明しかできないってことが昔あってさ、だったらこれがミスフィート軍のマークだってなれば、問題が全て解決されるわけですよ。みんなを巻き込んで申し訳ないんだけど」

「わはははは!まあ格好良い模様だし、良いのではないか?」
「ミスフィート軍の旗も、小烏丸くん仕様になってしまったのね!」
「ワタクシは全然問題なくってよ。むしろ気に入りましたわ!」
「格好良い」
「これを着けてれば負ける気がしない」

 赤い流星一派みたいにしてしまって、本当にすまん!
 清光さん虎徹さんに見られたら、クッソ笑われるんだろなあ・・・。

 ちなみに模様は、真っ黒な下地に金色の刺繍がされている。塗料だけは俺が作ってエルフ達に渡したんだけど、この金色を作るのになかなか苦労させられた。
 まあ赤い流星ファンならば、みんな想像出来るだろう。

 それと赤い流星が所属している軍のマークと織田家の家紋との三つで、どれにするか迷ったんだけど、織田家の家紋は俺の苗字が織田なので、なんか乗っ取ったみたいで嫌だから却下。あの軍のマークの方は結構良い感じなんだけれども、この服の問題もあったので結局胸のマークの方に決めた。

 乗っ取ったみたいだってのは、コレも当てはまってしまうんだけどね。

 だけど、『脱げない服にミスフィート軍の印が刻まれている』ということはですよ?逆に言えば、ミスフィート軍を絶対に裏切らない決意表明にもなるのだ。
 なんせ全身でミスフィート軍だと言ってるようなもんだからな。

「軍旗も格好良いよねー!」

 チェリンが旗を持って仁王立ちした。

「黒地なのでちょっと悪者に見られる可能性はありますが、とても威厳があって素晴らしく思えます」
「こんな軍旗を持った敵が攻めて来たら、怖くて逃げだすかも」
「私はこれを見ているだけで闘志が湧いて来るぞ!今まで軍旗の必要性など感じていなかったが、こう実物を見てしまうと、絶対に必要な物だということがわかった!」
「味方の兵達に、闘志と安心感を与えてくれると思うわ!」


 正直俺も軍旗の必要性ってのが、たった今わかったかも・・・。
 軍旗ってのは、皆に一体感と安心感、そして威厳を感じさせるモノだったんだな。
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