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226 バニラアイス

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 次の日、今となっちゃ比較的普通ともいえる、焼いた肉と野菜炒めが夕食に出て来たのだが、問題はその後のおやつだ!

 すでに情報を握っている俺とミスフィートさんは、固唾を飲んでその時を待っていた。


「来たぞ!!」


 ガラスの器には、半円のバニラアイスが二つ乗せられていた。
 一つじゃ多少物足りないかもってことで、奮発したみたいだな。

 専用の冷凍庫を作った時に、ディッシャーもあった方が良いって気付いたので、三つほど作って和泉に渡したのだ。コイツはアイスだけじゃなく、マッシュポテトとかにも使えるんだぞ。


「みなさ~ん!今日のおやつはアイスクリームです!アイスクリームにも色々な種類があるんだけれど、今回のはバニラという植物を使ったバニラアイスです!どうぞ召し上がれ!」


 和泉の説明の後、皆がアイスクリームをスプーンですくって口に入れる。


「「・・・・・・・・・・・・」」


 あっ、この感じ!プリンの時の反応だ!


「「おいしーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」」

「冷たくて驚いたけど、めちゃめちゃ美味しいよ!!」
「なんて良い香りなのかしら!」
「こ、これは・・・、これはプリンを超えたかもしれないっ!!」


 わかるぞ!その気持ち。
 プリンかアイスかの二択を迫られたら、俺もアイスを選ぶ可能性が高い。


「美味すぎる!!小烏丸!すごいな、このバニラアイスというのは!」

「見事だ、和泉よ・・・。間違いなく俺の知っているバニラアイスその物だ!」


 最早この国の伝説に残る程の、食の達人の称号を与えられるレベルだろう。
 あとはこれを一般に普及出来るかどうかなんだけど・・・、やはり厳しいか。

 卵はダンジョンでなんとかなるとしても、売り出せるほどの量は確保出来ないし、牛乳は三河に頼るしかないし、砂糖も未だに作り出せていない。そう考えると食の道はまだ先が長いと言えよう。しかし砂糖か・・・、これくらいは何とかしてえな。

 あとバニラアイスと言えばモナカだ。けど、モナカを作るにはコーンスターチと白玉粉が必要だったハズ。
 コーンスターチはともかく、もち米なんてあるんかなあ?

 お米の国なので、探せばどこかに存在しそうではあるけど、量を確保するのが至難か。何をするにも材料集めが毎回大変で困るぜ、ったくもう。


「御馳走さん!美味かったーー!」

「アイスクリームというのは他にも種類があるのだろう?」
「そうですねえ・・・、果汁を凍らせた感じのヤツとか、バニラアイスみたいな牛乳を使ったモノでも何種類かあります。ただ手に入らない食材も多々ありますので、今の所、和泉のやりたいことって半分も出来てないと思いますよ」
「そうだったのか!尾張で手に入らない食材は、さすがにお手上げだな」


 そういやかき氷なんて楽勝で作れたろうに、俺はなぜスルーしていたのか?
 ・・・まあ、気が付くことが出来たのだから、夏までにかき氷機作っとこ。

 どうせなら出店をいっぱい出して、お祭りを開催するのも面白そうだな~。
 この世界にはそういう娯楽が無さ過ぎるから、国民の為に何かやりたいね。



 ・・・・・



 夕食の後、いつものように大浴場でまったりと湯船に浸かっていると、和泉が近寄って話し掛けて来た。


「ねえねえ、テンサイを見つけたわよ!」

「は?天才??」

 いきなり天才と言われても・・・、めっちゃ頭が良いのかな?いや、料理の天才とか剣術の天才って線もあるよな。

「数学を極めた子供でもいるんか?」
「・・・いや、そっちの天才じゃなくて!大根とかカブみたいな食べ物の方よ」

 大根の天才?・・・ああ、テンサイか!!

「砂糖の原料の、あのテンサイか!!」
「そのテンサイよ!どれほどあるかはわからないけど、見つけたからには育てるしかないと思ってね~」
「大発見じゃないか!ガラスハウスで、・・・あれ?そういやテンサイって寒さに強い植物だったかな?」
「北海道で大量に作られてるくらいだから寒さには強いハズよ。ガラスハウスで育ててみるつもりだけど、普通にその辺の農家に作らせてみても良いんじゃないかな?暑さに強いかどうかはわからないけど」
「尾張で収穫されたのなら大丈夫だろ。砂糖も現地栽培出来るとなると、これは大きいぞ!こうなったらもう、ガンガン農家を増やして行くしかない!」


 じゃがいも・大豆・テンサイはとにかく大量に欲しい。
 米農家はそのままに、これからは野菜農家を増やさねばなるまいよ。

 『指定した作物を育てれば国が買い取る』って御触れを出せば、すぐにでも農家は増えて行くだろう。
 ルーサイアだけじゃなく、尾張全体に募集をかけよう。あーー、そうなると砂糖工場も作らんとダメだな。何から何までエンドレスじゃよ・・・。


「あっ、そうそう!いきなり話が変わるけど、和泉もダンジョン行かんか?」

「ダンジョン!?私が???レベル1なんですけど!」
「だからこそだよ。レベルが上がると身体能力が飛躍的に跳ね上がるんだ。今まで苦労して運んでた荷物とか、楽に運べるようになるんだぞ?」
「うぅ~~~、それはとっても魅力的ね・・・」
「なあに、和泉に怪我させるようなことはしないさ。俺が魔物を羽交い絞めにして、和泉はただ刀を突き刺せばいいだけだ」

 想像した和泉が、すごく嫌な顔をした。

「・・・それはそれで罪悪感がいっぱいなんですけど!簡単に言うけどさ、生き物を殺すのって滅茶苦茶敷居が高いわよ!」
「気持ちはわかるよ。でもずっとレベル1はマズイだろ?何かあったら簡単に死ぬんだぞ?」
「ぐぬぬぬぬ・・・、そうねえ、やるしかないか~」


 殺すのに抵抗があるのはわかる。でも俺は和泉に死んで欲しくねえんだ。

 遠くないうちに聖帝軍との戦争が起きるだろう。
 この世界で生存率を上げるには、結局の所レベル上げしかねえんだわ。
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