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157 小烏丸の隠れた才能

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 ミスフィートさんの話が終わった所で、話を切り出す。

「一つ俺から良いですか?」

「ん?構わんぞ」

「えーとですね~、全然話が変わるのですが、折角皆が集まったのにすぐ解散するのも味気ないと思うので、俺がダンジョンで手に入れた面白いモノをお披露目しようと思います」


 玉座の階段の下の窓際に移動し、マジックバッグからグランドピアノを出した。


「なんか大きい変な物が出て来たよ!?」
「また小烏丸が面白いことを始めたわね!」
「間違いないわ!アレは絶対良い物よ!」


 ピアノの屋根を開けて突き上げ棒で支えてから鍵盤蓋を開く。
 そして椅子に腰かけ、何の曲にしようか考える。

 一発目は勇敢なので行くか!まずはショパンだ。


「では弾きますよ、まずは『英雄ポロネーズ』という曲から」


  前奏部分はカットで、良い感じで始まる有名な部分から。


 ♪テーテテン!テテテテテテテン!


「「おおおおお~~~~!?」」

「え??なに!?」
「わかんないけど!わかんないけど凄いわ!」
「音がいっぱい聞こえて来るよ!?」
「英雄って言ってたわよね?確かに勇敢な感じがするわ」
「すごいのじゃ~~~~!!」


 英雄ポロネーズを弾き終えた。

 当然ながら拍手も何もない。たぶん曲が終わったということすらわからないのだろう。まあ、初めてピアノを聞いたお客さんにそんなモノ求めてもしゃーない。

 次は何にすっかな~、やっぱ大好きなドビュッシーかな。


「一曲目の『英雄ポロネーズ』はこれで終了です」

「「わあああ~~~~!!」」


「では続けて2曲目を弾きます。『月の光』」


 ♪テテーテン テテテテーン


「はぁ~、今度はとても美しい音ね」
「月の光だって!綺麗な感じだね」
「なんて素晴らしい魔道具なのかしら!」


 月の光を弾き終える。
 激しいのから入って次に静かなのを弾いたので、次は楽しいのにしよう。
 となると、またショパンかな?


「では続いて3曲目、『子犬のワルツ』」


 ♪テン テレレレテレレレレレテレレレテレレレ


「まあっ!これは何だか楽しい感じね!」
「子犬だってさ!私これすごく好きかも!」
「それにしても小烏丸くんって本当に何者なの?何でも出来るにも程があるわよ!」
「七不思議が十不思議くらいに増えたよね」


 それから、ベートーベンの『エリーゼのために』、リストの『ラ・カンパネラ』と弾き、疲れたので今日はこれくらいで終了。

 久しぶりのピアノだったのでミスもあったが、初心者には見抜けまい。
 そもそも、数年ぶりのラ・カンパネラをノーミスで弾くなんて無理っス。


「小烏丸のピアノ演奏会はこれにて終了致します。ご視聴ありがとうございました」


「「わあ~~~~~~~~!!|」」

 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!


 おおっ!最後に大歓声と拍手が来たぞ。みんな楽しんでくれたようだな。


「小烏丸っ!本当に見事だったぞ!このピアノという魔道具は素晴らしいな!」
「ありがとうございます!実はコレって魔道具じゃないのですよ。頑張れば一般人でも作ることが出来る楽器なのです。作る材料が無いので現時点では不可能ですけど」

「とても感動しましたわ!!是非ワタクシに使い方を教えて欲しいのですわ!」


 おおお!?どうやら俺の演奏が、お嬢の琴線に触れたみたいだな。


「教えるのは全然構わないんだけど、俺くらい弾けるようになるには数年かかるぞ?それでもやってみたいと言うならば、練習に付き合うよ」
「頑張りますわ!!ワタクシも、いきなりできるとは思ってませんのよ?」

 そうだよな。自分でも弾いてみたいと思う人が出現するのも当然か。せっかくだから、この場で向上心のある生徒の募集をしよう。

 皆の方に振り返る。

「ピアノはこの場所にずっと置いておくつもりですので、お嬢だけじゃなく、ピアノに興味がある人は誰でも弾いてみて良いですからね。内政の授業の後にでも、ピアノを習いたいという人を集めて、ピアノの授業をやりましょうか」

「絶対参加致しますわ!」
「私もやろうかな?」
「難しそうだから、ウチは聞いてるだけでいいっス!」


 話の流れで、ピアノの先生もやることになってしまった。

 グランドピアノをココに置くと決めた時から、希望があれば教えようとは思っていたのだけれど、毎日時間を決めて教えるとなると仕事感が出てしまったなあ。
 まあ、教えるのは得意のピアノだから、俺も楽しんでやれば良いか・・・。





 ************************************************************





 メルティー様のお披露目が終わり、集まった人達は解散した。


「では今日から御二人には大浴場の方を使ってもらうので、ミケネコ城自慢の大浴場に案内しますね」

「だいよくじょうって何なのじゃ?」
「メルティー様、大きなお風呂の事ですよ」
「おおおっ!大きなお風呂とは楽しみなのじゃ!」


 2人を大浴場の脱衣所まで案内してから、ずっと我慢していたトイレにダッシュ。

 用を足した後、急いで大浴場に戻ろうとしたら、ルルとララが仲良く歩いているのを発見。そうだよ!ララの年齢ならばメルティー様の友達にピッタリじゃないか!
 一緒に仲良く遊んでもらおうと思い、2人を大浴場まで連れて行く。


 大浴場に入ると今日はかなり混雑していた。
 メルティー様はどこだろう?と大浴場を見渡すと、洗い場にいるのを発見。
 ルルとララを連れて洗い場に向かった。


「メルティー様、大浴場はどうです?」

「すごく広くて楽しいのじゃ!!」
「え?・・・えーーーッ!?なんで小烏丸様まで入って来ているのですかっ!!」
「ん?風呂は普通に毎日入るぞ」
「いえ、そうではなくて、いやあの、此処は女湯ではないのですか!?」

 マリアナが狼狽えながら大事な所を手で隠している。

「あれ?ルル、今更だけどココって女湯なのか?」
「んーーー?どうなんでしょ?でも、小烏丸さん以外の男の人は見たことないです」
「ウーム、俺にも良くわからん。まあ気にすることもなかろう!ハッハッハ」
「うぇえええーーー!?そんなぁ・・・・・・」


 気付くと、ララがメルティー様の髪の毛をゴシゴシ洗っていた。
 さすがは子供同士!すぐに打ち解け合ったみたいだな。


「ララに同い年くらいの友達ができて良かったな!」
「はいっ!すごく楽しそうなのです!」

 この城にはララに近い年齢の子がいなかったので、少し不憫だったんだ。
 メルティー様にとっても近しい年頃の友達は嬉しいだろう。
 いや~本当に良かった!
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