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6-夢で見た話に肉付けしてそれっぽくする挑戦
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「荒城。……欠席か? おかしいな。誰か聞いてないか」
誰も知らなかった。荒城はこの日、無断欠席をしたのだった。
(まさか……)
那須には思い当たることがある。授業が終わるとすぐに、那須は、あの陥没のところへ来た。
相変わらず立て看板と、簡単な通行止め。辺りに誰もいないのを確かめ、那須は立ち入り禁止区域に侵入した。足音を立てないように走った。息があがる。動悸がするのは、走ったせいだけではない。
陥没は道路上、唐突にあった。他にひび割れや傾きなどはないところに、突如ぽっかりと、黒い影が落ちているみたいだった。近づくと、路面の下、抉りとられたような地表が見えてくる。
端からおそるおそる、那須は穴を覗きこんだ。直径は十メートル程度だろうか。穴の底に、割れて崩れてはいるがほぼ円形を保ったままの路面がすっぽり落ちている。そこに、見慣れた学ラン姿が、仰向けになっている。
「荒城……!」
荒城は弱々しく片手をあげた。影が顔に落ちて、はっきりとはわからない。だが日射しの中に投げ出された彼の身体の下に広がっている黒い染みが、影じゃなくて血だまりなのは、見てとれた。
「何をやってるんだ……馬鹿!」
那須は怒鳴り、119番通報するために携帯電話を手に取った。
「待て。何もするな」
思いの外、しっかりした声で荒城が言った。
「通報すれば、君がここに立ち入ったことも知られてしまうぞ。日本の権限の及ばないケースだ。未成年の君でも処罰は免れない」
「だけど……君……」
「俺なら問題ない。治癒は進んでいる」
声はよく届くが、荒城の身体は最初っきりぴくりとも動かない。
「治るのか……?」
「ああ。だがちょっと、出血がひどかったから、動けるまで少し時間がいりそうだ。あと三日ほど、登校はできそうにないな」
もしかしたらこいつは、昨日辺り一旦、死んでいたのかもしれない。那須は、少しぞっとした。
「先生に、うまいこと言っておいてくれないか」
那須は諦めて携帯をしまった。
「三日だな」
「ああ。頼む」
「わかったよ……お大事に」
荒城は片手をあげた。
誰も知らなかった。荒城はこの日、無断欠席をしたのだった。
(まさか……)
那須には思い当たることがある。授業が終わるとすぐに、那須は、あの陥没のところへ来た。
相変わらず立て看板と、簡単な通行止め。辺りに誰もいないのを確かめ、那須は立ち入り禁止区域に侵入した。足音を立てないように走った。息があがる。動悸がするのは、走ったせいだけではない。
陥没は道路上、唐突にあった。他にひび割れや傾きなどはないところに、突如ぽっかりと、黒い影が落ちているみたいだった。近づくと、路面の下、抉りとられたような地表が見えてくる。
端からおそるおそる、那須は穴を覗きこんだ。直径は十メートル程度だろうか。穴の底に、割れて崩れてはいるがほぼ円形を保ったままの路面がすっぽり落ちている。そこに、見慣れた学ラン姿が、仰向けになっている。
「荒城……!」
荒城は弱々しく片手をあげた。影が顔に落ちて、はっきりとはわからない。だが日射しの中に投げ出された彼の身体の下に広がっている黒い染みが、影じゃなくて血だまりなのは、見てとれた。
「何をやってるんだ……馬鹿!」
那須は怒鳴り、119番通報するために携帯電話を手に取った。
「待て。何もするな」
思いの外、しっかりした声で荒城が言った。
「通報すれば、君がここに立ち入ったことも知られてしまうぞ。日本の権限の及ばないケースだ。未成年の君でも処罰は免れない」
「だけど……君……」
「俺なら問題ない。治癒は進んでいる」
声はよく届くが、荒城の身体は最初っきりぴくりとも動かない。
「治るのか……?」
「ああ。だがちょっと、出血がひどかったから、動けるまで少し時間がいりそうだ。あと三日ほど、登校はできそうにないな」
もしかしたらこいつは、昨日辺り一旦、死んでいたのかもしれない。那須は、少しぞっとした。
「先生に、うまいこと言っておいてくれないか」
那須は諦めて携帯をしまった。
「三日だな」
「ああ。頼む」
「わかったよ……お大事に」
荒城は片手をあげた。
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