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第2話 次世代のAI

2-1 新たな出会い

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 カーテンの隙間から眩しい太陽の光を浴びて起床した。今日はどんな発見があるのか楽しみでしょうがない。僕はゆっくりと目を開けると、イチイがベッドの上におらず、既に起床していたと思われる。
 
 すると突然、大音量のアラーム音を発しているアルファが腕を上げ下げしながら僕の目の前に向かってきた。そしてアルファは棒読みの機械音でメッセージを再生した。
 
「もう朝だよ。おはよう、ナギくん。クロッカスよ。昨日は色々と助けてくれてありがとう。ナギくんにどうしても見せたいものがあるから、玄関まで来て貰えるかしら?」
 
 クロッカスが見せたいもの? たしかクロッカスは富裕層のAI研究科と名乗っていた。もしかしてクロッカスは僕達に最新のAIを見せてくれるのだろうか?
 
 僕は期待して玄関扉を開けると、大きな口を開けて驚いているイチイと自慢げに腕組みをしながら微笑しているクロッカス、そして大勢の白衣を着用している科学者と1人のメイドが家の前に集まっていた!
 
「イチイ、これは何なんだ! 何が起こっているんだ!」
 
 目を大きく開けて動揺しているイチイの代わりにクロッカスが話してくれた。白色の白衣、黄色のミディアムヘアー、金色に輝く瞳、Aカップで身長が150センチの体型が特徴的であるクロッカスを自信に満ちた明るい笑顔を見せてくれた。
 
「ナギくん、昨日は私の命を助けてくれてありがとう。お礼としてナギくんにどうしても紹介したいAIがいるんだ。見てくれるかな?」
 
「見せてくれ!」
 
 イチイも驚くほど素晴らしいAIなのか、と胸を膨らませながらクロッカスに返事をすると、クロッカスは指を鳴らした。
 
「私たちは人間の感情を細部まで研究し、ついに感情表現ができるAIを開発することに成功した! 新型AIのアネモネだ!」
 
「初めまして、新型AIのメイドであるアネモネです。よろしくお願いします。今日のナギ様は笑顔が眩しくて気分が良さそうですね。今日は楽しい1日になればいいですね!」
 
「凄い! ロボットが人間の声の抑揚も自動的に調整できるのか!」
 
「そうですよ、旧型よりも性能が100倍上がっていますので、人間の感情表現や声のトーン、行動パターンが自動的に調整されます。ナギ様、どうですか? 凄いでしょう!」
 
「素晴らしい! だけどクロッカス、疑って悪いけどアネモネは本当にロボットなんだよね? 実は人間でした、というオチはないよね?」
 
「クロッカス様の代わりに私がお答えします。では実際に私に腕時計型のPCを接続してみてください。私の機能を調整するメニューが表示されたらロボット、何も反応しなければ人間という回答になります」
 
 黒色と白色を基調としたメイド服、黒色のショートヘアー、瑠璃色に輝く瞳、Fカップで身長が160センチの体型が特徴的であるアネモネに対してPCを接続した。半信半疑に画面を確認すると『アネモネとの接続が完了』と大きな緑色の文字で表示され、別の画面には『設定』『再起動』『緊急停止』など様々なボタンが表示されていた。
 
 アネモネは人間と同じ思考や行動ができるAIだ! こんなAIができるなんて信じられない! 僕は腰を抜かして倒れそうになるとアネモネがすぐに駆けつけて、心配そうな表情で僕を支えてくれた。
 
「ナギ様、大丈夫ですか? 体調が良くないのですか?」
 
「気遣ってくれてありがとう。アネモネが本当にAIだと分かって驚いただけだよ」
 
「そうですか! ナギ様にも認められて嬉しいです!」
 
 アネモネは小さく飛び跳ねながら嬉しそうな表情をしていた。そして僕も朝から刺激的な発見ができて感動が湧いてきた。
 
 しかし楽しい雰囲気が1発の銃声によって壊された。ライフルの弾丸が科学者の青年の胸を貫通した。青年は叫び声を上げながら倒れ、他の科学者に介抱された。
 
 銃弾が発射された方向を確認すると、昨日出会った屈強な男達が仲間を集めて襲ってきた。彼らはライフルや鉄柱を構えながら威圧的な表情をしていた。
 
「貴族の女! 早く金を出せ! 出さなければ科学者達が死ぬぜ!」
 
 彼らはまた金目的でクロッカスに襲ってきた。僕は勇気を振り絞って命を狙われて怯えているクロッカスの前に立った。クロッカスや科学者、そしてイチイやアネモネは僕が守る!
 
「2度とするなと言ったよな! なぜまた彼女を狙うんだ?」
 
「なぜ富裕層の人間を襲うのか知りたいか? 俺達は雑魚の富裕層からお金を強奪している戦闘のプロ集団だぜ。お金を稼いで底辺な貧困層の生活から抜け出すために襲っているのさ」
 
「ふざけるな! これ以上罪のない人々に手を出すな!」
 
「じゃあ俺達を倒してみろよ! 今度はお前たちを逃さないぜ!」
 
 男達は一斉にライフルの引き金を引き、無数の銃弾を放ってきた。僕はすぐにビームの粒子でドーム状のバリアを張り、仲間の安全を確保した。銃弾はバリアに反射されて地面に落下した。
 
「お前、バリアを張るなんて汚いぞ! 正々堂々と戦え!」
 
「ならば僕1人で戦ってやる!」
 
 ビームの粒子を構成して大剣を生成し、彼らに向けて構えた。すると同時にアネモネが独り言のように「戦闘モード開始」と呟いた。アネモネはメイド服の内側からハンドガンを取り出した。最新のAIは戦うこともできるのか!
 
「アネモネ、戦えるか? ここは僕1人でなんとかするよ」
 
「いいえ、ナギ様を守るのは私の使命です。ナギ様は今の内に逃げてください」
 
「僕は逃げないよ。僕もイチイやクロッカスを守るために戦うと決めたんだ」
 
「分かりました、ナギ様の覚悟を理解しました。では私は後方支援に回ります」
 
「よろしく頼む」
 
 アネモネは両手でハンドガンを構え、銃弾を放っている男にヘッドショットを決めた。さすが最新のAI、確実に仕留める計算もできる高性能なメイドだ!
 
 だが僕もAIに負けていられない。大剣を振り回して銃弾を打ち砕きながら男達に向かって走り抜けた。その後、ライフルを構えている男達に近づいてから大剣で複数人の体を切り裂いた。
 
「やめてくれ!」
 
 体から大量出血をしている男達が倒れると、次に鉄柱を構えた男達が僕の目の前にやって来た。今度は接近戦で僕を倒すつもりだろう。
 
 男達は一斉に僕に向かって鉄柱を振り下ろすと、僕は高出力のビームの刃で複数の鉄柱を受け止めてから彼らの武器を溶かした。鉄柱が銀色に輝く液体に変化し、目を丸くして慌てている男達は無防備になった。
 
「これでどうだ! さっさと諦めて手を挙げろ!」
 
 戦う意志がなくなった男達はその場で手を挙げて、「俺達の負けだ、勘弁してくれ」と叫びだした。
 
「手を挙げたまま、僕たちからすぐに立ち去れ! また強盗をしたら必ず倒すから覚悟しろ!」
 
「もう強盗はしません!」
 
 男達は僕の指示を聞き、一目散に立ち去った。
 
 その後、僕とアネモネで周囲に危害を与える敵がいないことを確認し終えると、安心しきった明るい笑顔でハイタッチした。
 
「ナギ様、素晴らしいご活躍でした! 尊敬します!」
 
「アネモネの銃撃も格好良かったよ! ありがとう!」
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